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小説家として稼ぎたいなら知っておきたいこと

2024年6月時点では、上村はプロ作家デビューしていないのですが、商業作家を目指すnoteの仲間の皆さんに知っておいてほしいことを書きます。
商業作家として稼ぐ媒体はたくさんあります。

書店で売る。

書店で一冊700円の本が売れると、
作家の取り分/印税はだいたい10%なので70円です。
村上春樹さんや宮部みゆきさんのような売れっ子だと20%だと思うので140円です。
新人作家の本は、だいたい単行本だと初版3000部が最低ラインとして印刷されます。文庫本だと5000部から1万部という感じです。もちろん出版社によっても差はあります。
初版というのは、最初に印刷した部数/冊数のことです。上下二巻となると、一部で、2冊ということです。
この部数だと、地方の都市にある書店では平積みになるくらいの配本がないかもしれません。配本というのは、取次/問屋と言われる日販やトーハンというような企業が、「どの書店に何部を配送するかを決めて、実際に送ってくれること」です。版元が、首都圏を中心に配本してほしいと、取次に依頼することもあります。
初版/最低ラインが完売すると、出版社/版元は確実に黒字です。
仮に、文庫で一冊700円だとしましょう。新人作家の場合は滅多にないと思いますが、これが5000部完売すると35万円が作家の取り分です。年に五冊出しても175万円。生活するには厳しいですね。
単行本で1400円だと、3000部売れて、42万円。年に五冊出して210万円。これも、また厳しいですね。実際は売れ数ではなく、刷り部数が作家の取り分です。
ただ、初版が完売したので追加で印刷、つまり重版されると、さらに印税が入ります。以前に書いた単行本が、文庫化されて売られるということになれば、作家は何もしなくても追加収入を得ることができます。
大手の新人賞を取った方なら、賞金や、その版元の出している雑誌への寄稿を依頼されることもあるので、なんとか生活できるかもしれません。
自分が巣立った文学賞の下読みを依頼されることもあります。時給で言うと500円以下とも聞きます。請負契約なので、時給換算だと法定最低賃金を下回ってしまうようではありますが、この収入も生活を助けてくれるかもしれません。

本を買うには、その本の存在を知る必要があります。
大手の出版社が募集している新人賞でデビューした方は、その大手の広告体制に乗ることができます。書店での平積みにも通じることです。
配本が少ない書店では、平積みされないので、書棚に背挿しされます。つまり背表紙だけが見える状態で置かれるんです。
この時に力を発揮するのは、新人作家の場合「タイトルが魅力的」ということだけです。
書店にはいろいろな媒体(サイト、FAX、封筒の郵送など)で情報が送られます。ただ、実物ではないので、新人作家の小説に関しては、魅力/売り込むポイントがよくわかりません。説明書きは少ないし、都心の書店では版元や委託された企業から営業の方が説明に行くこともあるでしょうけど、見本を持っていくことは少ないし、通り一遍の説明しかしないこともあります。
担当者は、文芸か文庫の担当をしている書店員さんと顔見知りになって平積みする冊数の注文をお願いするということもあります。
新人作家が自ら売り込みに行っても、「知らないなあ。誰?」ってなります。平積みとして置いてくれません。
しかも、たいていの書店は取次との契約をしていて、版元や著者から本を直接受け取ってはいけないという状態になっています。取次が手数料を取れなくなるからです。だから、売り込みに行くなら、小さな独立系の書店に行くと可能性はあるかもしれません。近所の書店で担当者と知り合いになれば、「5冊しか配本されていないけど、平積みにしてあげます」なんて言ってくれるかもしれません。
小さな出版社の営業は、自社の近くか都心くらいの範囲がせいぜいです。大手と違って、書店に説明はしっかりしてくれます。広告はあんまり期待できません。
他は有名な方に本を送って、書評を書いてもらう。その方にSNSで紹介してもらう。作家が自分のサイト、SNSで紹介というのがいいでしょう。
ただ、それならnoteで販売したほうが、作家の取り分/利益率は多くなるんです。けど、出版社に申し訳ない気持ちにもなりますね。ここは契約できちんとしておきましょう。例えば、自分のサイトでの販売権は譲らない。ただ、(初版を売り切ったころ、重版はかけないくらいの時期)出版してから六か月が経過して以降にならないと売らない、半値以下で売らないなどの条件を話し合っておきましょう。新人作家には、荷が重い仕事かもしれないので、三作目を出したくらいで交渉してもいいかもしれません。

文学賞の賞金で稼ぐ。

50万円の文学賞を毎月取れる才能を持っているなら別ですが、小さな賞を毎月受賞をしても食べていくのは大変ですね。たまにはいいかもしれませんが、基本的にはデビューのためと、箔をつけるために応募するのがいいと思います。

noteで稼ぐ。

別名義(内緒)、別ジャンル(内緒)で有料記事を売っている経験から書きますね。
noteで有料記事として売る場合、
①全十話あるとして、五話からや、十話だけを有料化しても経験上買ってくれる人はほとんどいません(でした)。
別名義の私の場合、一話に付き2万文字以上、ニ十話以上を書いた記事がありました。読んでくれる方もいたし、好きの数もそれなりにあったのですが、最終話の途中から有料化したら、viewが激減しました。購入者も0です。そういうものかと思いました。
読み手からすると、無料だと思ったら有料だった、騙された、もう読まないとなってしまうようです。

その時、どうすればいいのかを考えました。
無料記事でファンを増やしておいて、この書き手は誠実で面白いとおもってもらうのは前提にあるんですが、
②十話文を書いたら、すべて一つの記事(有料マガジンでも可)に入れてから公開します。そして、一話か二話の部分までは無料にして、三話から有料ですと事前に知らせておくという形にすると、①よりは売れます。
②の場合、いちおう有料記事ということを意識して読み始めるので、ハードルが低くなるんです。とても面白ければ買ってくれるかもしれません。

③すごいあおり記事を書いて、肝心の本文は全く見せない。これも売れます。誠実な書き手ということは、無料の記事でわかっているので、隠れている本文のレベルが低い、手抜きということはないだろう、と安心して買ってくれるんです。
すごいあおり記事とはどんなものか。それはマーケティングの本、noteの有料記事で♡の多いものを探して、自分で研究してください。
例えば、すごくはないけれど、誠実なのは、
「今後10年は他には載せない小説」
「ここでしか絶対に読めない物語」
「著者がこの十年で一番気に入っている自作の小説」
「ミステリー専業作家の私がはじめて青春恋愛小説を書いてみた」
のようなものです。
上村が嫌なのは、期間限定で販売とか、本数限定とかですね。焦らせて正常な判断をできなくさせる詐欺師の常套手段と共通していて、いやーな気分になります。自分では、この売り方はしません。

noteで売れる記事は、500円以下の価格帯が多いそうですが、ジャンルや需要によっても違うので、とらわれすぎなくていいと思います。
私が別ジャンル(創作ではありません)で書いている記事は、1000円以上でも売れているので、需要があれば500円を超えていても大丈夫です。
noteで販売する場合は、noteで活動されているプロ作家の価格帯を分析して、そのあたりを参考にはする必要があります。例えば、吉本ばななさんは200円と400円のマガジンを販売しています。
商業作家としてデビューしているのであれば、
既に書籍化されている小説のスピンオフ(前日譚、後日譚、脇キャラのエピソード)などは、もっと高くても売れると思います。
noteでの著者の取り分は、紙の本よりも多いので、100円設定でも紙の本700円と同じくらいの利益にはなるでしょう。けど、もったいないですね。noteで小説に100円出す人は、たぶん意識の価格帯が100円も250円も同じだと思います。それとも190円くらいでしょうか。だから190円-250円設定でもいいと思います。
「私は安く良質のものを売りたいんだ」という方は、100円でも構いません。その方が、読み手にとっては助かります。けれど、noteで買って下さる方は少ないので、稼ぎたいのであれば、買ってくれる方にとっての上限の価格帯にした方がいいと思います。
250円で10人買ってくれる作品が、100円なら25人が買ってくれるわけではないと思うんです。別名義の私の記事はそうでした。100円にしても、10人しか買ってくれないんです。

知名度のない作家でも、無料で書いている他の作家よりも面白いか、読み手にとって唯一無二の没入感か、共感かを得られれば、買ってくださるかもしれません。本屋大賞や芥川賞や直木賞やノーベル文学賞を取った作品よりも、noteで公開されている小説の方が面白い、好きだ、救われたということはありますからね。
うまいかどうかは、あるレベルを越えたら売上には関係ありません。歌が下手でもお金を払ってライブに行ったりグッズを買ったりする地下アイドルがいるとか、プロ野球ではなくて高校野球が好きで甲子園に遠征するとか、モネではなくてアカデミックな学びを経験したことのないアンリルソーや山下清のような素朴派が好きだとかいう感覚は、それに近いですね。
ただ、そのためには日ごろからファンを作っておくことが必要です。

メディア化で稼ぐ。

小説が映画化される、舞台化される、アニメ化される、ラジオドラマ化されるということで、収益が作家に入ることもあります。
映画化されやすいようにと考えて、小説を書いておくということも一応、頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
例えば、実写化しづらいのは、お金のかかるセットです。他には雪景色のロケ、虹がかかった(CGになってしまいます)、海のシーン(シーズンだと人がたくさんいます)、実在の場所(撮影許可が取れないかもしれません)などもそうですね。誰もいない銀座の歩行者天国、ありえません。
ファンタジーはアニメにする方が簡単かもしれません。
若い人気俳優が出演する映画は人気が出ます。もちろん、お金のために書きたくないものを書くなんていうふうにはなってほしくありませんが。

他で稼ぐ。

自分のサイトで、クラウドファンディングという手もあります。
新しい小説を書くのに、力を貸してくださいということですね。

TVに出るという作家も時折います。

大学で講座を持つという作家も時折います。大学では仕事を公募していることもあるので、応募してみるといいかもしれませんね。文学史を教えるクラス、創作を教えるクラスなどがあります。売れる作家、売れない作家ということはあんまり問題ではありません。しっかり書けて、教えられる。これが大事なことです。総合大学でも芸術系の大学でも、作家の活躍する場はあるので、考えてみる価値はあります。

上村もまだデビューしたわけではないけれど、小説を書いて稼ぐことを意識しているみなさんには、こういうことも知っておいてほしいと思って、書きました。

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