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STRANGE STORIES

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奇妙だったり 不思議だったりする物語のコレクションです
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2024年1月の記事一覧

「逆転体質」

「なんか重そうだね」 詩貴の目線を追うと、やっぱり 大人が入りそうなほどに巨大なトランク二つを脇に置いて プラットフォームに続く階段を見上げている外国人の男性だ 少しパーマ イタリア風 たぶん南の方 わたしはさっきから気付いていたので、詩貴の目に触れないように身体の向きをコントロールしたのだが、詩貴は混雑の中で首を振って見つけてしまった 「なにが?」 と言いつつわたしはなおもそこから離れていこうとするが、 「ほら あの人」 と詩貴に腕を掴まれてしまった。 詩貴は困った人を観る

ショートショート「じゅじゅつかいせん」

じゅじゅつかいせん という言葉を探してみてくださいね。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 同じ中学からこの高校に入ったのは里村だけで こいつはもう部活を決めたらしい。 「柔道部に入ったんだっけ?」 「柔道部でなくって、柔術」 「柔術かい」 「せんせー こいつも柔術部に入りたいって」 大きな声の呼びかけに反応したのか、大柄でジャージを着た人がこっちにのしのしと歩いてきた。 「いや言ってない。俺はサッカー部に入ったんで」 先生と呼ばれた人は残

ショートショート「アンナ カレーニナ」

アンナカレーニナという言葉を探してみてください。 本編 「話聞いてくれる?」 トルストイの「アンナ カレーニナ」を読んでいると、れになが話を聞いてくれというように体を寄せてきた。暑いのだが。 「ええよ」 「あんな、彼にな、告白されたんよ」 「彼 誰?」 泉だと言う。へー 気難しくて真面目そうな あんな彼にな 「陸上部やんなあ」 「うん」 「日曜日でもうちの近くの公園走っとるよ」 私にさえ好きな人がおらんいうのに、恋しとる ストイックな彼がなあ 「そうなん?」 「うん。で、