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AIで無くなると言われているけど、思ったほど無くならない職業


近年、様々な職業がAIに取って代わられると言われ、戦々恐々としていらっしゃる人も多いと思います。一応私は、AIや自動化と言ったITビジネスの先端にいる立場なので、現場感覚を含めて見解を述べたいと思います。

無くなる職業を考えるにおいて、軸となる視点は以下だと思います。

・効率性
・職務範囲
・結果に対する責任
・説明責任

AIに奪われる職業を考察している記事はよく見かけますが、「効率性」の視点でしか語られていない気がします。本稿を書こうと思った理由はまさにそれです。効率性は要因の一つでしかありません。ではこれから一つ一つ見ていきます。

効率性

この視点は簡単です。人にやらせても機械にやらせても出来上がりに差はない業務ならば機械にやらせたほうが効率的です。人件費より導入コストが安ければ、導入しない理由がありません。効率性しか期待されない仕事は、確かに遅かれ早かれなくなると思います。しかし、人間社会ってそんな単純じゃないですよね。

職務範囲

AIは明確に入力と出力が定義されて初めて運用できるものですから、定型作業にしか適していないです。したがって、非定型的で抽象的な仕事をしている感覚があるなら、AIに仕事を奪われる心配をする必要はないと思います。

結果に対する責任

人がお給料を貰えるのは、作業に対する報酬という面だけでなく、責任に対する報酬という面があります。医師が高い報酬を貰えるのは、場合によっては取り返しがつかない結果を生むことがあるからでしょう。したがって、AIによって医師と同等の診断ができるとしても、AIは道具の域を抜けることはできないです。AIベンダーが医療事故に対する全責任をとるようにすれば代替できるかもしれませんが、そんなリスクの高いAIを作りたがる人はいないでしょう。

説明責任

ほとんどの仕事では、判断の根拠を誰かに説明するプロセスがあります。そうした社会のニーズに合わせるように、AIの説明可能性が研究テーマになっていることは知っています。しかしながら、結局は相関の強い説明変数を示すというアプローチにならざるえないところがあると感じています。人は結論を導くにおいて、相関関係と因果関係をうまく使い分けています。そのうちAIが模倣できるのは相関関係だけであって、因果関係は置いてけぼりです。

結論

以上より、AIが代替できる仕事とは、人間より効率的にでき、求められるアウトプットが明確かつ不変、失敗しても自分に責任は生じず、なぜそうなったか説明する必要もない仕事となりますが、そんな仕事はないですよね。仕事の一環で発生する作業にはそういう側面もあるかと思いますが、仕事という単位で見たときには、そうそうありません。

業界について詳しくもない人が「AIで無くなる」なんて危機を煽るのは、よろしくないことだと思います。まあ、人間って、自分が知らない世界を単純化して考える性質があるので、仕方ないことかもしれませんが。

ということで、「AIで無くなると言われている職業のほとんどは実は無くならない」が私の結論です。

汎用人工知能ができたら・・という意見もありますが、できる兆しがまったくない現状でそれを言うのはナンセンスです。「タイムマシンができたら・・」「不老不死の薬ができたら・・」と言うのと同じ次元の話です。世の中をひっくり返す程のインパクトを持つ技術が山程あるなかで、人工知能だけに特別な期待と恐怖と抱くのは、スマートではないと思います。


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