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世界各国におけるDXの取り組みと データマネジメント DAMA ADMC2020 レポート

DAMAとADMCについて

DAMAは国際データマネジメント協会(Data Management Association International)というデータマネジメントの組織。
DMBOKというデータマネジメント知識体系書を作っている団体で、日本支部は翻訳をしており大変感謝。

ADMCはアジアデータマネージメントカンファレンス(Asian Data Management Conference)という、年1度あるデータマネジメントの会合。

2020年11月にカンファレンスがありました、資料はこちら。
https://www.dama-japan.org/ADMC2020_DownLoad.html

データマネジメント セミナーレポート

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ご挨拶

DAMA 日本支部 代表 林 幹高DAMA 日本支部 代表 林 幹高氏
Asian Data Management Conference 2020 in Japan

今回の開催にあたって設立して40年になるが「初のWeb開催」だった。
DANA日本支部の会員数110名って思ったより小規模。
DXのど真ん中に来るのはデータマネジメントということを話していた。

駆動型企業への変革

Carl-Johan Nakamura氏
Chief Data Governance Officer

IBM Corporationについて
企業が、 データ+AI を活用し、従来のビジネスモデルを「Cognitiveな(=自律的に理解・行動する)企業体」へ変革させていくためのポイントを以下の通り解説。

➢ エンタープライズデータ戦略/ガバナンス/標準/ポリシー
➢ DataOps - 収益化を意識したデータ&AI 活用の優先付け
➢ 業務フロー変革のためのクラウド+AIのハイブリッド基盤
➢ CDO 4.0 フレームワーク活用による、ユーザの文化的変革およびデータ駆動型AIへの適合

チーフデータオフィサーの意義について
IBMでチーフデータオフィスをやっている。チーフデータオフィサーはなぜ成り立つのか?
新しい価値を創造するため。手作業から自動化へとより価値の高いことを行うために、自動化する。
それはビックデータからインサイトを発見して、意思決定を自動化する事も含める。その戦略を描くのがCDO(チーフデータオフィサー)である。

IBMのここ5年の動きについて
2016年の時点ではデータ標準が無かった。2016年にCDO組織が立ち上がり、データ戦略とビジョンを作り上げた。自動化、リアルタイム、AI、クールな環境を描く。

2017年はプラットフォームの構築で終わった
2018年はAIを使ってビジネスに使い始めた
2019年はAIの利用者が社内で10万人になった。
2020年ハイブリッドマルチクラウドプラットフォームをつくった

データ戦略におけるキー施策5つ
1.データ戦略、投資の確保
2.企業のマネジメントとガバナンスを整える。データスチュワードの設立
3.信頼できるデータプラットフォームを作る
4.データを使うアナリストとパートナーを組む
5.人材育成をする事

データビジネスは組織内で収益を上げるという方法と、商品化という要素。データ自体を売る。この2つがある。

キー施策の「5」の部分。人材育成は忘れられがちだがちゃんとやる必要がある。ここが考えらてないと、まだまだ組織の成熟度が低い。
最終的には機械学習を使ったモデルを作ることができるが、データプラットフォームをちゃんと作らないと成しえない。

95%の組織では90%の時間をデータをきれいにすることに使っているなのでデータマネジメントとデータガバナンスは重要である。そこに気が付き、データ戦略を描いた。

AIエンタープライズジャーニーマップ
テクノロジー開発⇒データの取り込み、アクセス、BI⇒データ品質
これらは常に軌道修正する必要がある。

UXとユーザ満足度を大事にしてジャーニーマップを作る。
何度も何度もCDOの言葉を経営、マネージャー、開発者に伝え続けること、説明なし、読んどいてっていうのは難しい。

CDOからデータサイエンティストへインプットして、機械学習を使って予測してもらわないといけない。
このことをデータサイエンティストへ伝える。CDOからシステムへも同様に伝えよう。

IBMのエンタープライズデータアーキテクチャ
AIについて経営に話すときは的確に話さないといけない。
AIは説明をサポートしてくれるが、AIに教育・トレーニングをしているのは専門家である。

機械と人間のパートナーシップ
AI自身がマシンラーニングで成長する
しかし、最終的な人間の判断が重要、自動化されたメタデータの生成(AMG)のユースケース、アーキテクトしか理解できないものを正しく理解できるようにした

メタデータの生成にAIをどう活用するのか
テクニカルメタデータを内部で持っているビジネスメタデータと紐づけてエンタープライズメタデータに仕上げた
・自然言語の分類モデル
・機械学習モデル
・ハイブリッドモデル

IBMでは2018年にAIを使って、メタデータを作った。これまでは数週間かかっていたのが数秒から数分でできるようになった。AIでメタデータを作成することによってできたこと。
潜在ダークデータも取り出し、標準化した。

EPMの利用について
Excelからリアルタイムでスマホで見れるように、AIが自動で送ってくる
オープンデータを1つのデータプラットフォームに集約してコロナの予測をした。25年前にはなぜ量子コンピュータに投資するのか想像できなかったが今はわかる。

CDOはAIの未来を指し示すリーダーとなる。ビジネスモデルをAIを使ったものに変革していく。チーフデータオフィサーは未来に向けての役割を果たす。

Digital Transformation and the Rosedata Stone

Steve Hoberman 氏
Data Modeler

デジタルトランスフォーメーションの達成には、全ての関係者が、同じ「ビジネスの言葉」を理解することが必須となる。

エジプトの石碑、ロゼッタストーンは複数の言語の橋渡しとなりました。
同様にRosedata Stone(ビジネス用語と概念データモデル)が、共通の「ビジネスの言葉」となりうることができます。

データモデリングのエキスパートであるHoberman氏と一緒に、データモデルによりビジネス用語を視覚化する方法を理解しよう。

インフォメーションのモデラ―について
詳細の地図では、読み手が理解できないと目的ににたどり着けない地図を単純化して説明する、これは地図のモデリングという例。
今日はインフォメーションのモデラ―について話をします。DXを成功させるためには3つの軸が必要。

30の支店を持つパン屋のチェーンを例
パン屋のチェーンを例に3つのチャレンジについて説明する。
チャレンジする前はパン屋は個別に事業が成り立っていた。
そのような環境から集中管理をすることで、コスト削減をしたかった。
コンサルタントからの提案を受けて、データ統合のS/Wを導入した。

その時に問題となったのがクッキーとビスケット問題。パイとケーキ問題。
店舗によって用語とカテゴリが違って会話が成り立たなかった。

テクノロジー3つのチャレンジ
クラウド
・クラウドごとにデータを生成し保存するため、管理ができない。
・導入が簡単すぎるため、今までやっていた工程が無くなる。そのため標準化のプロセスが無くなる。

パッケージ
・パッケージはパッケージ内で用語を提議しているので、社内ですでに定められている用語とすり合わせして決定しないといけない。

NoSQL
・NoSQLはRDBではないが、モデリング不要と思ってはいけない。

規制への対応
Ambiguty(曖昧さ)への対応、1978年に提言されたデータの課題は今もってまだ解決されていない人々はコンテキストを理解して暗黙的に解決する。
正確さとは?モデル上のデータが誰が見ても一つの見方しかできないこと。

共通の1つの辞書を使って言葉を統一する事を目指したけど、あきらめた。
共通の辞書を作った後に、実際使われている単語との対応付けが大事。
とにかく絵で表すことが大事。
詳細の地図より、シンプルなものを求めている、ビジュアル化がめっちゃ大事。

5つのソリューション
定義が大事、誰が見ても同じ理解ができる正確性が大事。概念モデルは言葉のイメージが良くないので、ビジネス用語モデル=BTMと呼ぶことにした。

概念モデルはただのプロセスや任意のものと受け取られがち、でも違う、それ自身が必要なものビジネス用語モデルを作ってからプロジェクトを開始したい。
なぜなら、とても大事な単語を同じ認識のもとに進めることができる。
BTMを作るにあたっては、5W1Hでまとめる。

プラントエンジニアリング業におけるDX推進とデータマネジメント

日揮グローバル株式会社
EPC DX部 部長 小島 和之 氏

プラントエンジニアリングは、石油プラント等の巨大建設プロジェクトを、多岐にわたる工程・技術要素・多国籍の関連企業を統合しつつ遂行する事業です。

対象となる業務・データ・システムは複雑かつ大量であり、業務のDigital Transformationを推進するためには、散財するデータを束ね、管理することがカギとなりました。
その弊社における取り組みを説明します。

日本では大規模プロジェクトの失敗が多い
建設ビジネスはこの50年で生産効率が落ちている。
ExcelとかAccessでは管理しきれないデータ量だったので、システム化することが必須だった。

属人的にやっていたものをDATA HUBとしてデータにタグを付与して確実に情報を集められるようにした。目標値としては、まずは実作業10%から30%へ、30%確保したうえで効率化を図る。

経営陣はAI・DXなどバズワードに飛びつく
いきなり取り組むのではなくて、ステップを切って取り組んだ。実践部分がすでにあるもの、点線部分が作る必要があるもの。

こうした仕組みを整えた結果、現場の視覚化が出来るようになった。
横浜から現地をモニタリングしている。現地への派遣が不要になった。
・PowerBIで可視化して、マネジメント層が見えるように。
・目指しているところは、プロジェクトの予測を行う事。

設計データと調達データが違っている
ミスマッチは些細なことで、スペースがあるとかまとまってデータ化されているとか。
目検で手作業で直していたのだけど、根本的な若手は気付くが、直すパワーは無い、ベテランは慣れてしまうため気づけない、気づいたものを変えていかないといけない。

クレンジングの重要性と共通化
そして連携する事でデータの統一化を図る。入れる方は責任もって入れないといけない。

データに関する認識の甘さ。業務側の人が気づく事が大事、気づいて取り組んだ時にDX人材の支援が必要。

業務側の人が業務をやりながら開発をするという一気通貫のサイクルが必須。EPCの請負からDXへ業務の人が中心となってDXに取り組まないといけない。

目標を明確にする
ゴールは仕組みを作ることではなくて、何を達成したいのかが重要。
最後に、ビジネスの人間になりきり、ビジネスの人間として考えましょう
IT目線ではだめ、最も成功したプロジェクトではビジネスの一員に成れた気がした、実用主義者になるべき、完全主義者にはならない、
価値を示すために小さなスコープで成功させる、正確さ、適切な定義共通ビジネス用語の価値を伝えましょう。
エンターテイナー、ストーリーテイナーになろう


各国データマネジメント概況(イタリア・欧州編)

Nino Letteriello 氏
DAMA Itally

欧州のデータマネジメントに関わる状況や課題、およびDAMA支部の活動について。DAMAは地域で担当を分けていて、今日はヨーロッパについて。

メンタープログラムについて
知見やスキルを共有する事で、メンバーの育成を行う。
重要なのは双方向で学びあうという姿勢。
新人研修とナレッジプラットフォーム。DAMA会員には無料で開放しています。

データ品質マニフェスト
2つの目的のために作った。
・10の重要項目を確認してもらうため
・コミュニケーションのベースとしてつかうため
データの品質を保ちたいというのは合意を得れるが、実際どうするのかという事は定義されていない。

データ取扱倫理について
この分野はAI利用についてホットに取り正されている。
北欧、特にDAMAノルウェーがリードをしている。DMBOKをベースに拡大されていっている。
次回のDMBOKには書かれるだろう。

DMBOKデジタルツイン
DMBOKのデジタルコピーが作られる。紙と比較して、相互の関連性がわかりやすくなっており理解に役出つ。
デジタルかされることで、翻訳もリアルタイムで行うことができる。
DAMAは国際組織であることが強みである。世界中の知識を取り入れる事ができる。
「DAMAが自分のために何かしてくれる」ではなく「DAMAのために自分がどのように貢献できるのか」
※ここでのデジタルツインとは紙ベースのDMBOKをデジタル化するということを指している

各国データマネジメント概況(メキシコ・中南米編)

Marilu Lopez 氏
DAMA Mexico


中南米のデータマネジメントに関わる状況や課題、およびDAMA支部の活動について
データマネジメントは高価で目立たないものです。建築の基礎は高価で目立たないです。
建築は地震が来た時に無事であるのか、倒壊するのかですが。

データも同じである。データがうまく管理できていない事で倒壊する事が起きる。
DXはオプションではなくて、必要な物。その根底にはデータがあり、データマネジメントが必要。
ラテンアメリカには5つの主要市場がある。ここは中小企業が中心で、これらの会社はメールアドレスすら持っていない。
コロナの影響でラテンアメリカ市場は冷え込む。
ただ、E-コマースは比較的ましだった。これらの人は変化した消費行動を続けてもいいと思っている。

データのマネタイズについて
マネタイズ=新しい事業、新しいデジタルなチャネルを作ると思っていますが、他にも紹介します。
内部プロセスの改善に関連してマネタイズをしている。

データにおける課題について
今回はデータ品質について言及します。データ品質の影響はコストの内15%~25%くらい影響うけている。
やりたいことは海上に見えている氷山。ただそれをやるためにはデータマネジメントが必要。海中にあることをやらないといけない。
DMBOKにはデータマネジメントに必要な事が全て書かれている。

データマネジメントを取り組む上で
データマネジメントはプロジェクトではないセクシーではない連続的に取り組むべきであり、それに必要なものは全てのデータマネジメント原則を理解した人材です。

おわりに

自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。

モチベーションのために役にたったという人はぜひ、フォロー&スキをお願いします。

ツイッターでもデータマネジメントに係る情報をつぶやいてますので、よろしくお願いします。

データマネジメントを学ぶ人が抑えておきたい本

DXを成功に導くデータマネジメント

DXを成し遂げるために必要なデータをどうマネジメントしていけばよいかが書かれている。
データ環境より、セキュリティの観点であったり、プライバシーの観点であったりといった非技術者向けの内容が多く書かれている。
データマネージメントに興味を持った人はまずは読んでみるとデータマネジメントでなすべき概要が理解できる。

実践的データ基盤への処方箋

データ利活用を行うために必要なデータ基盤の考え方と、利活用するためにはデータをどのようにマネジメントしていけば良いかを具体的な例を用いて説明されている。
技術が中心になるので現在データ技術に係る人がデータマネージメントに興味を持った時には、まず手に取ることをおすすめする。

個人データ戦略活用 ステップでわかる改正個人情報保護法実務ガイドブック

個人情報保護法を順守するための基本的な考え方が実務ベースで書かれている。2022年4月に施工される改正個人情報保護法で新たに追加される概念も同様に記載されている。
政府の出しているガイドラインよりも俯瞰的に読めるためデータプライバシーにかかわる人、データを使ったビジネスを推進する人は読んでおくとスムーズに業務が進められる。

データマネジメント知識体系ガイド(DMBOK)

自分も要約・解説記事を書いているDMBOK。データマネジメントに興味を持った人がまず手に取ると挫折することは間違いないほどのボリュームがある。
読めば読むほど味が出てくるので、データマネジメントを進めようとしている人は各家庭に1冊は是非買っておきたい。

データマネジメントが30分でわかる本

著者もDMBOKを読むためには非常にボリュームが多く読み解くには苦労するので、かみ砕いた解説書をまとめたと書いてある通り、DMBOKを独自解釈してわかりやすく書かれている。
DMBOKを技術者目線で読み解いた内容になっているので、実践的データ基盤への処方箋と同様データ技術に係る人におすすめする。


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