特別だったこと
子どものころ回転寿司に行くことに憧れていた。
近所に父の友人のたっちゃんが営んでいる寿司屋があった。父とたっちゃんは小学生の時からの友人だった。お寿司を食べる時はいつもたっちゃんのお店でかそこの出前だった。「たっちゃんとこの寿司が一番美味い」と食べるたびに父は言っていた。確かに美味いは美味い。
だから我が家では寿司といえばたっちゃんとこのお寿司だった。父はそれ以外のお寿司屋さんへ行くことは、たっちゃんへの裏切りのようなものだと考えていたのかもしれない。
小学2、3年生のときの誕生日の数日前に父から誕生日の日何が食べたいか聞かれた。最高のパスが来た!ゴールをきめられる!回転寿司に行ける!「回転寿司に行きたい」とシュートをはなった。父は「寿司食べたいのか!たっちゃんに電話しとくな!」と言ってすぐにたっちゃんに電話をして予約を入れてしまった。私は豪快な空振りをした。
それから半年ほどたったある日ついにその時が来たのだ。そう私にとって人生初の回転寿司だ。父は出張で留守だった、私と妹は母に涙ながらに頼み込んだのだ。父には内緒という条件付きで連れてきてもらった。
レールに乗ってお寿司が次々に流れくる、お寿司だけでなくフルーツやプリンも。遊園地のアトラクションの座席に着くときのようなドキドキとワクワクを抱いて案内された席に着いたのをよく覚えている。
本当に楽しかったしお腹いっぱい食べた。たっちゃんのお店とは全く別のものだった。
それ以降、年に2度ほどの父の出張日は回転寿司に行く事が決まり事となった。
子どもにとって回転寿司は味以上の何かがありそれを含めての食事の時間だと思う。
今も同じで何を食べるかだけが食事ではない。いつ、どこで、誰となど全てを含めた全体が食事の時間だと思う。
同じものでも1人で食べるのと家族で食べるとでは全く違う食事の時間だ。
私は1人でゆっくり食べる食事も家族で賑やかに食べる食事も大好きな食事の時間だ。
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