見出し画像

懲役太郎・草下シンヤ『常識として知っておきたい裏社会』感想

※2022年9月執筆。

本著は、裏社会の特にカネ関連、ヤクザのシノギについてや、ここ2年程話題となっている闇バイトに関する知識を幅広く身につけられる。草下シンヤ氏と、元ヤクザの前科持ちVtuver・懲役太郎氏との会話形式で書かれているため、分かり易くて一瞬で読み終わってしまった。
懲役太郎氏は、実は裏社会ジャーニーのコラボ動画でしかちゃんと観た事が無いが、いつも腹から声を出して喋っている印象がある。それが気になって彼のチャンネルを視聴する気にはなれないんだけど(ごめん)、話すこと自体は、起承転結つけて進めるのがうまいと思う。

ヤクザの成り立ちや興隆について、被差別部落民や在日朝鮮人の話がチラッとだけど出て来て良かった。実は気になっていた事柄だったので。
必要悪という言葉は好きでは無いのだが、"働きたくても働けない人たちの受け皿としてのヤクザ(裏社会)"という在り方は、私などには否定出来ない。
ヤクザに限らず、世の中が平等を謳えば謳う程、世間の基準に倣えない人間の肩身は狭くなっているように感じる。昔だって酷い差別は存在したし、市民の持つ人権意識なんて、こんな今ですら比べものにならない程、つい20〜30年前までは途轍も無く低い。

しかし、その一方で、ヤクザのように彼らを受け入れてくれる場所もあった。今は酷い差別だけは残っていて、受け皿となる場所は消えてしまった。昔のほうが良かったなんてことは言う気は毛頭無いし、多くの人にとって、汚いものは消えて欲しいに決まっている。綺麗で安全な生活を誰もが求めている。自分もその恩恵に与って生きていることは、よく理解している。
そうやって、多くの人の願望のために行き場を失った少なくない者たちの末路は、良くて精神病院、生活保護、引きこもり、最悪の場合は文字通り自死が待っていると思われてならない。

群馬県大泉町がブラジルタウンとなっているらしい。ヤクザや半グレにブラジルマフィアが入り乱れて「ぐちゃぐちゃな状態」とのこと。
ブラジルはあまりに遠いので行く事は無いだろうが、国内のブラジルタウンと聞けば気になってくる。町内人口の約10%がブラジル人らしい。相当多い。
試しに「群馬県 ブラジルタウン」で検索したらすぐに大泉町がヒットした。観光地化しようと頑張っているページがたくさん出て来たのだが、本著のせいで地獄みたいな場所を想像していたため、ギャップが凄い。これが表社会。

第3章の闇バイト編は、自分や家族、友人を守るためにも知っておいたほうがいい情報ばかりだった。半グレに憧れるキッズでは無く、老人こそ読むべき本だと思う。主な読者層の親世代にこそ読んで欲しい。
最近見かけたツイートで、こういうものがあった。

お金配りキャンペーンに当選。2万円貰えることになった。しかし200万円振り込まれ、「間違えて振り込んでしまった。10万円あげるので残りの190万円を現金で指定の場所まで渡しに来て欲しい」と頼まれた。指示に従ったところ、特殊詐欺の受け子として逮捕されてしまった。

詐欺の被害に直接遭うとか、闇バイトと分かっていて参加するとかでは無く、知らず知らずのうちに犯罪に加担させられる可能性があるのは怖過ぎる。よくこんな方法を思いつくものだ。
ちなみに、振込を取り消す場合には、金融機関を経由して依頼する「組戻し」という正式な手続きがあるのだが、これを知っていれば或いは防げたのかなと思う。
しかし、経済的にかなり困窮していると、判断力や思考力は低下するので(私調べ)、そんな時に目の前で10万円をぶら下げられたら、涎垂らして尻尾を振りながら食いついてしまうのも分かる。

そもそも、未だにお金配りにせっせと応募している人が大勢居るような日本という国は、本当に貧しいのだなと思わされる。
受け子や出し子といった末端要員の報酬もたった数万円と聞く。逮捕される危険性が最も高いポジションにも拘らず、数万円を得るために犯罪に手を染めてしまう。アフリカなどの国の一部の人々が、生きるために犯罪行為をせねばならないのと全く同じだ。明日は我が身と肝に銘じて生きていきたい。

この記事が参加している募集

読書感想文

無職を救って下さい。