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丸山佑介(丸山ゴンザレス)『悪の境界線 犯罪ボーダレス社会の歩き方』感想

※2022年9月執筆。

丸山ゴンザレス氏の別名義での著作。
氏が各所で行ってきた取材を基に書かれたルポルタージュ作品。取材対象となる人物と著者の会話形式で展開され、そこに簡単な註釈(一つの話題は数頁程度しか無い為)が加えられるという構成。Amazonのレビューで「ドラマ化して欲しい」とあり、確かにと思った。Netflixで各話30分くらいのドラマになりそう。
丸山氏に関しては、『クレイジージャーニー』からファンになり、YouTubeチャンネルである『裏社会ジャーニー』も拝見しているので、彼の風貌や話し方、仕草などは夢に何度か出て来るほど焼き付いている。そういう者からすると、本著に登場する氏の口調がハードボイルドな雰囲気を纏っていてちょっと笑ってしまう。「〜なのか?」「〜だろ」みたいな。淡々とした文章なので、普段の彼らしい口調だと合わないと言えば合わないのだが。

内容は、『裏社会ジャーニー』(特に初期)と似ていて、ヤクザ、薬物、性産業、密輸、ダークウェブ含むインターネット絡みの犯罪、等を細分化して紹介している。裏社会の入門書っぽい感じ。
樹海で自殺した方の遺体を使って遊ぶ人々の話は何度も読んだり聞いたりしたけれど、その度に「人間は、この世で最も醜い生き物…」と思う。
本著だと他にも、自殺サイトで出会った自殺志願者に、死ぬ気の無い人間がヤリモクで接近する話とか、芸人がカキタレに酷い性的行為を強制する話とか、人間の悪意は底が知れないなと思った。
こういう話は怖いし生きる気が無くなるので、裏社会ジャーニーでも観ないようにしているが、勢いで読んでしまった。

それにしてもやたら情報が古いなあと思ったら、2011年末に書かれた本だった。それでしたら最新情報ばかりです。ごめんなさい。
丸山氏は宮城県出身なので、東日本大地震にも触れているのだが、ヤクザたちが匿名で義援金を寄付していたのは知らなかった(阪神淡路大震災の際、名前を出して寄付しようとしたら、受け取って貰えなかったらしい)。復興利権を巡って彼らが暗躍していたのは知っていて、嫌な話だなあと思っていたが、一応「ここで義侠心を発揮しなければ極道に非ず。外道である。」という被災地を救いたいという気持ちもあったようで、しかしそこはヤクザなのでしっかり稼がせてもらった、というのが真相(?)らしい。
本著でも「大手ゼネコンの孫会社になるのもヤクザにバックについてもらうのもあまり変わらない」と書いてあり、確かにあの規模の震災だったらそうだよな、と納得した。
震災後、闇金に手を出した人が多かったという話に対しても、自分がその立場だったらと想像すると、安易に「闇金なんてやめたほうがいい」なんて口が裂けても言えない。複雑な気持ちである。

あと琴線に触れたのは、韓国人密入国者の話。当時、円高ウォン安の影響で、出稼ぎの為に密入国してくる韓国人が急増していたらしい。それも大学生くらいの子たちが多く、日本以上の格差社会・学歴社会である韓国では、貧困家庭に生まれると、国立大学の学費すら捻出出来ず休学する学生も多く、まとまった金を作るべく、日本に出稼ぎに来ていたらしい。
韓国の学歴偏重主義と、昨今の世界的な韓国アイドルの流行とが結びつかず、ずっと微かに気になっていたものの、調べるほどでは無かった(韓国アイドルの名前を全然知らないので)。アイドルも高学歴なのか、それとも家が金持ちだからアイドルに挑戦出来るのか。

試しに「韓国 学歴社会」まで入力したところ、すぐ後ろに「アイドル」とサジェストされた。最初のほうに出てきた「『学歴主義』も今や昔? 進学を選択しない韓国の芸能人たち」という記事に軽く目を通してみた。
本著が書かれた2010年代初頭までは、やはり芸能界も学歴は大事で、高学歴のアイドルも多かったそう。東方神起、BIGBANG、少女時代がその頃。流石に名前は知っている。
しかし、ここ最近は大学に進学せず、芸能活動に専念しているアイドル・俳優も増えつつある模様。芸能界のみならず、国内全体での教育自体の見直しも図られているが、やはりまだ「大手企業に就職させたい」という親の願望は無くなっていないのか、個人間での教育格差は拡大している。そんな中、経済の低迷や就職難から、若者たちは「学歴に縛られている自分たちって何?」という疑問が湧いてしまっているらしい。どこも地獄だ…と思い知らされた。

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