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市民が主役となる博物館 -ナレッジセンターとしての博物館-


 博物館の機能は、資料の調査・収集・研究・展示・保存であり、その担い手は学芸員である。その意味で、学芸員が博物館の主役であることは異論がなく、当然である。しかし、これは20世紀的までの伝統的な博物館の概念ではないだろうか。現代において、博物館が担うべき機能や意義を再考したとき、展示や普及」だけではじゅうぶんではなく、どう「活用」するかという視点が重要ではないか。そう考えるとき、博物館(資料)の活用の主体は学芸員だけではなく、むしろ「地域住民」であるべきだ。「市民が主役となる博物館」という考え方が、今日的な博物館の新たな存在意義となるべきだと考える。
 文化・伝統はただ「保存」するだけではなく、「活用」の視点がなければ、未来に継承することはむずかしい。この意味で、「エコミュージアム」発想は、重要な発想転換であったと思う。市民が主役となると考えることで、博物館は、より広く、社会の中でその存在意義が高くなることを意味する。では、市民が博物館で何をするのか。。。。一言で言えば、生活や社会のなかの課題を解決する場として、博物館にある膨大な「知」を活用し、人々が集まり、参加行動する「場」とすることである。私が師として敬愛する梅本勝博先生(北陸先端技術大学院大学名誉教授)は、「知識創造自治体」という考えを提唱している(2004年)。市民が自らが直接参画して、生活課題を解決するための政策立案を行うという考えである。私はこの考えに共感して、「博物館と知識創造理論」を組み合わせることを思いついた。その意味で、私が考えた「知識創造博物館」という考えは、梅本先生の「知識創造自治体」の具体的なモデルの一つともいえる。
 博物館は、市民の主体的参画で、地域の知識(資源)を活用する中で、課題を解決する「地域のナレッジセンター」(「知域」といえるだろうか)となるべきだ。

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