風船破壊者になっていませんか?
これは、心理学者マズローの著書が元となった英語の諺です。「特定の手段に固執するあまりに全ての問題をその手段で解こうとする」傾向を指しています。手段が目的化してしまい、解決対象となる問題を探している状態です。かつて、BLE (Bluetooth Low Energy) ビーコンがそうでした。最近は NFT (Non-Fungible Token) がそのような感じです。
手段が目的化している状況を見ると、凝った方法を考案して風船を割り続ける人 (Balloon Destroyer / 風船破壊者) の動画を思い出してしまいます。風船を割れさえすればいいのに、無駄に大掛かりで手の込んだ手段を用いており、また、割られる方の風船 (問題) も手段に合わせて特殊な配置をしておく必要があります。
ソフトウェアエンジニアは何でもソフトウェアで解決しようとする傾向があります。しかし、特に社会問題に対するソリューションは、人々の行動や社会制度とうまく噛み合わないと機能しません。例えば、コロナ感染者との接触を通知するアプリが世界各国で開発されましたが、仕組みが有効に機能するためには、人々の行動について非現実的な前提条件が幾つも必要だったため、コロナ終息の決定打にはなれませんでした。
仮にある問題をソフトウェアで解決できたとしても、それが事業化できるかどうかは、また別の問題です。「無料なら使う」「多少ならお金を払ってもよい」「事業化可能なほどの高額を払ってもよい」の間には、大きな差があります。
「事業として成立しそうもない製品・サービス」を思いついては取り組んで失敗し、何年たってもピボット(事業転換)ループから抜けられないなら、事業案の発想方法に根本的な問題があるのかもしれません。製品・サービスについて次の点を自問してみてください。
Must have (必需品) なのか? Nice to have (嗜好品) なのか?
競合優位性はあるか?
対価を払う必然性のあるビジネスモデルか?
非現実的な顧客数を想定することなく事業化可能な収益を見込めるか?
代替手段はないか? (その手段で風船を割る必要はあるのか?)
加えて、事業継続のためには、創業チーム・あなた自身に競合優位性があるかどうかも重要です。後続の市場参入者に簡単に追い抜かれる可能性が高いなら、「成長市場の分け前に与る」というつまらないビジネスモデルを敢えて選択しない限り、その市場はあなたが挑戦すべき市場ではありません。
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