見出し画像

国内不動産と雇用の現状について

DARTs Capitalです。最近REITや不動産株について色んな意見が出ています。私は総合デベのどこかに勤めていますが、個人的には、昨年は必要以上のリスクオンをした企業もいれば、アクティブな姿勢を維持した企業に二分した一年だったと感じています。

おそらくこの対応の正解は、おそらく後者が正しかった気がしています。

今年度どの企業が強くて、どの企業が弱かったかと思い返せば、マンション事業が全体の事業の3割程度を占めている、または棚卸資産を売買する資金回転型ビジネスに厚みがある企業がしっかりとした業績で、家賃業を中心とした企業で、かつオペレーショナルアセット(ホテルとか商業のこと)に比重がある企業はちょっとしんどいなって印象です。

結構コロナが明けたら、REITや不動産株は良くなるんじゃないかというコメントも多いですが、果たしてそうなるか。

それもこれも私は「雇用」と「働き方」だと思っています。

では、国内の雇用情勢は今どうなっているのか。コロナが今どれだけ雇用に影響を与えたのか、今回は統計局と帝国データバンクの倒産情報を整理して、皆さんにお伝えしていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

1.就業者数(出典:統計局労働力調査)

スライド1

最初に全体を理解するために、就業者数を確認します。

2019年10月をピーク(6,787万人)に就業者数は低減しており、緊急事態宣言が発令された4月には6,628万人と、およそ半年で160万人の就業者に影響が出ましたが、その後は徐々に回復し、昨年11月には一時6,700万人台に戻りました。

ただ、このグラフには表れていませんが、就業者数のボリュームは2018年とほぼ同等であり、強烈な打撃を与えている状況ではありません。

2.正規雇用者数、非正規雇用者数(出典:統計局労働力調査)

スライド2

スライド3

就業者数を正規雇用者、非正規雇用者に分類したの上図ですが、これには明白な特徴が出てきます。

正規雇用者は微増、非正規雇用者は減少

後述しますが、飲食店、食品関連など非正規雇用者が多く働く業種が打撃を受けているため非正規雇用者が減少している反面、正規雇用者は悪影響が確認できません。倒産件数が増加していないので、解雇になるような状況でもないということです。

3.完全失業率(出典:統計局労働力調査)

スライド4

完全失業率はコロナショックが起こった2020年2月以降に上昇しており、2.4%→3.1%(2020年10月)となりました。非正規雇用者の減少はあるものの、影響は限定的です。

4.倒産件数・負債総額(出典:帝国データバンク)

スライド5

正直ほとんど影響ないです(笑)。一旦は、緊急融資の公的支援の成果は出ていますが、以前コメントしたとおり、緊急融資はあくまで「負債は負債」なので、水面下でディストレス(債務不履行懸念)企業がいることは念頭に入れておくべきです。

5.コロナ倒産関連各種データ(出典:帝国データバンク)

スライド6

スライド7

スライド8

マスコミは「コロナで大変だ〜!」とドラマチックに騒ぎ立てますが、実績としては、コロナを原因に倒産した企業は、1年(2020年2月〜2021年2月)でたったの1,000件です。

こんな言い方をすると、大変な目に遭っている方に失礼ですし、皆さんが日々努力をしているが故に、ここまで抑制できているということは承知しているのですが、マクロ統計上、倒産企業は毎月400〜500社倒産している状況の中、1年かけて1,000社コロナを原因に倒産しているという現状を踏まえると、私は現時点では影響は限定的と判断してもよいと思っています。

ただ、コロナの影響を受けているのが、「飲食店」「アパレル」「食品」「建設・工事」「ホテル・旅館」です。もう少し大別すると、「サービス業」、「卸売業」、「建設業」といった感じでしょうか。

サービス業と卸売業は外出自粛による影響、建設業は出店ニーズの減少による煽りだということが推察できます。

6.テレワーク導入率(東京都ホームページ)

東京都は、「週3日・社員6割以上」のテレワーク実施を強く推奨していますが、

先月の調査結果によると、

(1) 都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.1%。12月時点の調査(51.4%)に比べて約6ポイント上昇。従業員規模別に導入率を比較すると、企業規模が大きくなるにつれて、導入率も高くなる。
(2) テレワークを実施した社員は、平均約5割(50.4%)と、12月時点(51.6%)に比べて、ほぼ横ばい。
(3) 緊急事態宣言期間中のテレワークの実施回数は、週3日以上が約6割を占めている。

企業規模によって、ITインフラの整備に余力がなかったりなどで、進みづらい部分はあるかと思いますが、浸透してきている印象を受けます。こういった部分も新規感染者数の減少に繋がっているのではないかと思います。

これが定着すると、これまでのオフィス床面積の必要性はどうなるか。

例えば、従業員10名の会社が1週間(5営業日)稼働する動員数は、

10名×5営業日=50名

それが週3日テレワークを実施している従業員が6割いるとすると、オフィスの動員数は、

10名×60%×(5営業日-3営業日)=12名

10名のうち6名は週3日のテレワークで、残りの4名はテレワークを実施しない人とすると、

4名×5営業日=20名
12名+20名=32名
32名÷50名–1=36%

つまり、このテレワークルールが企業に定着すると、オフィスの床面積は最低36%減らしても通常業務が行えることになります。逆に自社ビルは36%減った分をテナントに賃貸できるし、テナントとしてオフィスを賃借している企業は毎月36%賃料コストを抑制することができます。

私が経営者なら、即実行しますが・・・ITリテラシーの低いおじさんもいるので、困ったものです(笑)

7.まとめ

コロナが雇用に多大な影響を与えているような報道をマスコミは伝えがちですが、もちろん大変なことになっている方もいらっしゃるものの、雇用に大打撃を与えている市況では現時点ではないようです。

ただし、飲食店・アパレル・食品の影響は大きく、商業セクターの不動産は当然に影響していることは確実ですし、なかなか元に戻ることは難しいと思っています。

一方オフィスワーカーにとっては、あまり雇用に直接的影響が出ておりませんが、テレワークの強い要請から、そろそろ企業も定着してきたところも増えてきたと思います。アフターコロナを機に、元に戻す企業もあるかもしれませんが、せっかく費用をかけてITインフラを整備したわけで、私は「もう元には戻らない」と思っています。

したがって、オフィスセクターも賃料と稼働率のダウンサイドが一定程度影響を受けることが見込まれると思っています。
もっとも、雇用には影響は限定的であるものの、給与・賞与には影響が出ているでしょうから、スペックの高いレジは敬遠されてくると思います。

決して、「REITには投資をするな!」「不動産株は危ないぞ!」と言っているのではなく、そもそも不動産セクターは景気敏感株ということをしっかりと理解した上で、今後の雇用動向・賃金動向・倒産動向を正確に掴んでおく事が大事だということが、今回皆さんにお伝えしたい事です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。内容を気に入っていただいたら、❤️を押してくれると嬉しいです!

DARTs Capital

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?