秘密

ときどき自分のことについて、このことは誰かに話したっけとかこれは誰かは知ってることだっけと考えることがある。

共有されたことはどんなものでも誰かの検閲を通ったような気がして安全な話だよなと誰かは覚えてくれている話だよなと自分の中ですごく扱いやすいものになる。

だけど誰にも話してないこと、これはシモ的な話もそうだし誰かに知られたくないあらゆる話から別に話すようなことでもないから話していないだけの取るに足らない話まで全てを含めて、自分だけが知ってる自分の秘密として頭に格納されている。
これは自分が今死んだら絶対に世には触れない情報だし、別に今死ななくても普通に生きていれば話す場なんてない話ということであって、それは隠しているわけでもないものでも結局は隠れている事実で、自分の重要機密みたいな存在に思える。それを自分ひとりで背負い込んで大事に扱わなきゃいけないんだと怖くなる。
自分が忘れてしまったらそれまでのものだし、儚い。人も儚いものだけど人の中にある全ての事実、これが人目に触れることもなく消えることに対しても悲しい気持ちを覚える。今までの歴史でどれほどの人が死にどれほどの秘密が死んでいったのか。思いを馳せてもその秘密たちのどのタイトルにも手を触れられず目も触れられない。
けれどその隠された、そして隠すつもりもなく隠された秘密たちが人を作りあげていることということも思う。誰にもさらされていない純粋な自分だけの秘密が自分を自分たらしめているような気がする。そう考えると、むしろ秘密は死んだ持ち主の中で永遠に生き続けるんだな。なんだか素敵なお供のようにも最後思えてきた。

まとまらないけど、僕の中で秘密になるはずだったこの思いが誰かの目に触れることに思いを馳せながらこの文章を締めます。ありがとうございました。