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【読書】「ラジオ演出読本」にてキューの原点を知る

今日もまたメンバーシップ&サポートのお陰で購入できた本の感想文です。

1950年(昭和25年)に出版された「ラジオ演出読本」です。「らしんばん」の先祖みたいなものかな?本館1Fの書庫にもあるはずですから、ぜひ職員皆さんは一度手に取ってみて下さい。

ラジオ演出読本

GHQの一部分である民間情報教育局CIE(Civil Information and Education Section)に所属していたラジオ演出家、ベルナール・クーパー氏がNHK職員向けに行った講義のまとめです。発行はNHK出版の前身ですね。

発行所は日本放送出版協会

もっと「メディアとは?」「ジャーナリズムとは?」と振りかぶった本かと思ったら、実務の基礎を丁寧にレクチャーする内容でした。

“Q出し”も“巻き”もGHQに授けられた

私も伝聞では知っていたんですが、Q出しってこの時に授けられたものだったようです。

合図の解説

ゆっくり読ませたい時はゆっくりと「キュー」、いきなりボリュームを上げたい時は勢いよく「キュー」と、出し方についても詳しく解説されています。

Qと言えばCUEで、ただの合図としか思っていませんでしたが、GHQに授けられたものだったとは今回初めて知りました。

巻きにあたる合図

今の“巻き”に相当するものもありました。主には、生演奏のスピードコントロールに使っていたようです。

こんなところまで微細にレクチャーを受けるほど、GHQの指導をみっちり受けていたというか、GHQに隷属したと言うべきか… 何はともあれ驚きました。

インタビュアーの資質

私たち取材者もアナウンサーも共通の、インタビューを行う上で必須の資質についても記されていました。

インタビュアーの資質
こうした番組(*街頭インタビュー番組)では、インターヴューする人の頭の働き如何が、最も重大な要素となる。

a. インターヴューする人はウイットに富み、如何なる事態にも善処でき、素早い思考力と上手な質問で番組を面白く聞かせることが出来なければならない。
「ラジオ演出読本」より

どうですかね?

記者・PD・アナウンサーみんなコレを実践出来ていますか?事前に決めたONをただ採集するだけになっていませんか?それじゃ単なるオペレーターですよ。

人に「伝わる」番組の基本は変わらない

他にも「ニュースを聴衆に分かりやすく伝える為には、アナウンサー(伝え手)が、そのニュースに興味関心を持つ事が欠かせない」など、普遍的なことがそこかしこに散りばめられています。

GHQの占領政策を宣伝する狭い意味での放送の技術だけでなく、コンテンツ制作の基本からNHKはGHQに教わり、受け継いで来ました。

私はとっくに退職してしまいましたが、そもそも放送局は何の為に存在するかと言えば、戦争の惨禍を繰り返さぬよう、民主主義の根拠である「知る権利」を守る為にあるのです。

今のNHKは、大本営発表をそのまま流していた時代にロールバックしています。

職員ひとりひとりが知性と批判的精神とユーモア・ウイットを持って、複雑なことを楽しく・分かりやすく伝えられるようにならないと、NHKは本当に国民から見捨てられてしまうでしょう。

もし宜しければサポート頂けると幸いです。取材費の他、Twitterのプロモーション費などNHK健全化の為の取り組みに活用させて頂きます。