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【指摘】新聞が報じない BS配信予算問題の呆れた顛末

NHK史上でも最大の不正のひとつと言われている、NHKプラスのBS配信にかかる予算9億円の不正計上の問題について、先日記者会見が開かれました。

前田の退職金10%減額は大きな“成果”である一方、内部で音頭をとった役員に対する処罰は一体どうなっているのか?特に責任が重い3名は秘書室付けとなって取り調べを受けていたと見られますが、改めて重要な情報が提示されていました。

秘書室付けとなった3名の首謀者(体制表とされる資料より筆者キャプチャ)

NHK上層部責任者の報酬返納学はあまりに少ない

NHKの公表資料によると、伊藤・正籬・児玉に加えて、林・熊埜御堂・山内の3名も報酬の自主返納を申し出たとされています。

https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2023/20230711.pdf

しかし、その金額は責任が一番重いとみられる伊藤が月給の20%を2ヶ月ですので、¥1,600,000x0.2x2=推定64万。次いで、山内が15%(47万)と、その他は10%(29.8〜36.6万)です。どう考えても軽すぎませんかね?

参考:NHKのサイト上にひっそりと公開されている報酬支給基準

この他、天下りが一部白紙になった、といった報道はありましたが、役員にまで昇格した時点でNHKの退職金を得た上で、さらに役員報酬を得て天下りする時点で狂っていますから、責任を果たしたとは言えないでしょう。

新聞はこの問題をどう追求したか?

では、この問題を新聞各紙はどう追求したのか。NHKのサイト上には7月16日現在で公開されていないようですが、記者会見要旨と題された議事録的な資料を入手することができました。

臨時記者会見要旨・公益のため敢えて公開

この中に、私としては気になる一節がありました。記者が次のように、NHK側の責任者の退職金について指摘した部分を抜粋します。

(記者)※社名わからず
退任した3名の役員の退職金は、減額なく支払われるということか。

〇稲葉会長
そうです。報酬の自主返納については本人から申し出がありましたが、役員在任中の業績などを勘案して、退職金については100%お支払いすることでいいのではないかと考えました。それについては経営委員会でも了解を得ています。

臨時記者会見要旨より抜粋

ここにある3名の役員とは、秘書室で取り調べを受けていた伊藤・正籬・児玉のことを指しています。

しかし、退職金の支給基準には「減額または不支給とすることもある」と明記されています。9億円の不正は言うに及ばず、他にも前田時代に人事制度改革などNHKを破壊するようなことをあれだけ主導してきて、たかだか数十万程度の報酬自主返納だけで、退職金が満額支払われるのは異常でしょう。

https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kyuyo/pdf/kijyun-top2.pdf

その割に、「職員が在職中に得た情報を退職後に公開したら退職金を減額する」といった法的にもかなり怪しい規定を最近設けているのは、私としてはどうかと思いますね。

ちなみに、新聞各紙の追及はこれ以上は議事録には残されていません。

また、報酬自主返納については各紙とも触れていても、「これでは軽すぎるのではないか?」という会見時の質疑にあったニュアンスが紙面に反映されているものは、私には見つけられませんでした。

前田の捨て台詞

もうひとつ、前田の退職金減額に関連して、記者の追及で気になる箇所がありました。

(記者)※社名わからず
そこには(前田の)3年間の改革の功罪も含まれているのか?

○稲葉会長
3年間の在任中、前田前会長はさまざまな改革をして、その功績は大きいものがあると評価しております。それと、今回の事案の責任の問題とのいわば
総合判断だということです。

臨時記者会見より抜粋・筆者一部加筆

記者の方は「功罪」と、きちんと「罪」という単語を使って責任を追及をしているのですが、稲葉会長は「罪」とまでは言いませんでした。

功績が大きいから、海老沢や橋本のように100%減額ではなく、10%減額で済ませたと読み取れます。

しかし、前田といえば、稲葉会長が「止血策が必要だ」とまで危機感を表明した人事制度改革だけでなく、不明瞭なプロセスで導入された勤怠管理システム(しかも、導入前に担当者達が表彰されている)も大きな問題を引き起こしています。大量のエラーを引き起こしていて、給与の支払いにさえ支障を来たしているというのです。

では、その前田の功とは何なのか?改めて、退任時に彼が吐いた捨て台詞全文(NHK内部限り)を読んでみました。すると、次のようなことを述べていました。

実際に、いろんな改革をやりました。

最初のうちは、僕は就任時にはですね。「組織がうまくいっている、うまくいっている組織はいじらない方がいい」と申し上げました。しかし、これだけ肥大化して矛盾の塊になっているのをこのまま放置していたら、多分もっと矛盾が拡大するしかない、それで本当にいいのかと。

働き方改革を直前まで行っていたんですが、働き方は本当に改革したのか?と、「中身は本当に改革したのか?」と、そこをイロハのイのところから本当にそうなのか?というのは、ずっと問い続けました。

その過程でですね 現場の皆さんが、ものすごく努力していただきまして、いろんな番組作るわけですから、作り方についてこれでいいのかと、要するに、「職人技になってないな」と、工程表がちゃんとできているのか?と、チームワークはうまくとれているのか?とか、誰かに偏ってるんじゃないの?と、仕事のやり方をトータルで見ている人が誰かいるのかいないのか?と、一般企業で言ったら「見える化をする」という形で、いろんなデータも作っていただきましたし、何がおかしいのかって、わかるようになりました。そういう意味で番組は作り方も変わってきたと思います。

営業の改革も行いました。営業は営業で一つの大きな総局になっておりまして、受信料問題、これ、非常に難しい役割でありますが、この受信料はよく、「80%の方は払っている。この受信料を100%にする、これが公平だ」という非常に難しい課題にチャレンジするんですが、費用対効果がめちゃくちゃになっている。誰もそれの実態を見ず目をつぶったままでいいのか?と、本当にこれでいいのかとこれだけクレームが出ていても、このままやるのか?と、受信料の徴収達成だけで、徹底的にやるというそれが目的でいいのか?と本当にそうなのかと営業の方にとっては大変きついことだったと思いますけども、大きな方向を変えました。

後は、グループの経営改革につきましても、グループの経営、これはグループ会社ができた時の経緯がありますので、あそこはどうしても ОBが、そこの役員になるとかですね。そういうまさに年功序列で本当にグループ経営改革ができるのか?と。

この縦割り年功序列のこの組織風土そのものが、やはりNHKの創造性とかクリエーター集団のそのマイナスを生み出しているのではないかと、NHKが時代についていけなくなった根本原因がここではないかと。

前田退任挨拶より筆者抜粋

働き方改革の結果どうなったか?働かないことが美徳になって、特に土日祝日の緊急報道が出なくなりました。その一方、責任感が強い一部の人に業務が集中して、過労死や過労で健康を害したケースが私が知るだけでも3例あります。

番組改革はどうなったか?ジョブカンの導入と共に進められた工程表作成・工数把握の取り組みは完全に失敗しました。気になる方は旧制作局で作られた資料を読んでみてください。しかも、番組の質は低下し、NW9のような問題に加えて、放送事故や事故寸前のインシデントも増え続けています。地方局に至っては、明らかに見るに耐えないレベルの放送も多数出ています。

営業改革はどうなったか?受信料収入は大幅減少。むしろチューナーレステレビなどが台頭する結果となりました。数年のうちに受信料収入は6000億円を切ると推定されていますが、これでは、今の肥大化したNHKは間違いなく回りません。

他にも、前田時代に、前田改革に起因して生まれた不正やNHKの生産性低下の事例は数限り無いのですが、いずれも誰がどう責任を取って再生させるのか、未だその筋道は見えていません。

当の前田は、退任挨拶の最後にこう述べました。

私は、NHKの未来はあんまり心配してませんね。ま、十分やっていける組織だと思っています。

前田退任挨拶の最後から抜粋

終始他人事で、みずほで犯した失敗をまたNHKでも繰り返しただけだった前田。

唯一、BS配信にかかる9億円の不正予算の件だけは形ばかり裁くことができましたが、何も考えずにYesと述べてブレーキを掛けられなかった職員全員の責任も大です。その責任を感じながら、日々の放送業務に励んで、成果を出して欲しいと思いますね。

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