NHKニュースクリップ(2023年6/25号)
今週もまたNHKを巡ってかなりおかしな動きがありました。今後のNHKの未来を占う上で重要なことも多いので、職員やNHKを取材されている方々はチェックしておいてください。
Web業務は「補完的位置付け」建前を貫くための異常な放送
NHKのWeb業務の肥大化については、特に新聞各社が予々懸念を示してきています。とりわけ問題視されているのが「政治マガジン」です。
週刊誌の中吊り広告をパクったような品の無いデザインと、読みづらい日本語が嫌で、私は中身をチェックする目的以外で読んだことはありませんが、
付き合いのある新聞記者からは、何度となく「『政治マガジン』などのWeb特集を無料で出されたら商売あがったりだ」という声を聞いてきました。
なぜ、この「政治マガジン」が、特に問題なっているのか?
その理由は、NHKの公式サイトにも記述されています。
鍵になるのは、この「放送を補完」という部分です。要は、Web配信はあくまで「補完」でしかないということです。私もWeb配信やSNS展開に携わったことがありますが、例えば番組を告知するとか、放送の内容を補足的に補うものと限定されてきました。instagramやLINEなどは、番組中での告知さえ原則できなかったんですよ。
それが「政治マガジン」はどうか?Webオンリーのコンテンツもそこそこありますよね。「補完じゃないでしょ?」という事なのです。
直近の会長会見で否定されてはいますが、際限無く肥大して放送の「補完」を超えてしまっているのは民業圧迫の観点からも問題だというわけです。
「補完」と主張するための後付けのVTRが放送された
で、ここから本題です。今回、私が指摘したいのが、この記事をめぐるNHK内でのきな臭い動きです。
19日にニュースウオッチ9で、この記事をそのまま読み上げたような奇妙なVTRが放送されたのです。時間は21:31ごろからですので、録画が残っている方はチェックしてみてください。
V尺は10分程度もあったでしょうか。ニュース番組の中に入れるVTRとしては異様に長尺でした。その上、作りも、プロが見たら異常性は明らかです。VTRはほぼオールコメント。当事者の証言めいたものは入りますが、全て昼の民放ワイドショーみたいなアテレコです。首相のON(喋り)がわずかにあるだけで、コメントとONのバランスが崩壊しています。また、BGMは数箇所入りますが、同じものの使い回しでした。
あくまで、寄せられた情報に基づく私の「見立て」ですが、これは明らかに「政治マガジン」への批判を回避するために、後からその場しのぎのために作られたVTRです。「放送を補完する形で『政治マガジン』を作っている」と主張するために視聴者不在のVTRを作ったと見られるのです。
今後も、恐らく、テキストコンテンツを強引に映像化したようなイメージカットとアテレコだらけのVTRが作られると思います。しかし、TVは映像があって初めて成立するものです。そんなバカなことは止めて、総合テレビの放送にまずはリソースを全投下すべきでしょう。
林専務理事の答弁は報道機関にあるまじきもの
BSプラス配信の9億円不正に関連して、記者会見で信じられない発言がありました。
朝日新聞の当該報道より引用します。
稲葉会長の記者会見を受けての答弁ですが、とんでもない話です。私も職員時代に散々暗唱させられた放送法の趣旨にはこうあります。
放送の健全な発達を図る上で、BSプラスをめぐる不正の裏にどんな動きがあったのかを明らかにすることは欠かせません。林は明らかに、あの不正に対して噛んでいるか、動きを察知した時点で止めるべき立場でした。何なら、3人組と同じく秘書室送りにされても良かった人物です。
林に質問した記者の方は非常に鋭かったと思います。「重ねて拒んだ」と書いた朝日新聞の方の問題意識も適切です。
前田の時代には、上層部が説明の付かない不正を秘密裏に主導していました。今になって「改革の検証」が行われた結果として、次々にその不正が明らかになってきていますが、仮にも報道機関を名乗るのなら、自局で起きた不正に関して、責任者が公の場で語るのは当然のことです。
同じことを行政や企業などにもNHKは求めてきた訳ですから、林は自ら説明責任を果たすべきです。後輩たちも、きっと呆れていますよ?
NHK報道局のハリー・ポッターフィーバーと退任理事
ここ最近、NHKでは「ハリー・ポッター」関連の放送が相次いでいます。
この程度の内覧会のヒマネタくらいならまだしも、このレベルになると、もはや単なるプロモーションでしかないでしょう。
このハリー・ポッター関連のニュースが多数放送されたのは、原報道局長が「民放でもやっているから、やれ」と号令を掛けたからだそうです。
その号令を受けて、報道局からは提案が多数上がってきて、今この世相においてリソースがハリー・ポッターに割かれました。
ここから先は、特に根拠があるわけではなく、ベテランの職員から寄せられた推測です。しかし、「李下に冠を正さず」はNHKの大原則です。疑われるようなことをやってはいけない、と新人時代から厳しく指導されてきます。その観点からの指摘です。
ワーナーとの関係は本当に適切か?
ハリー・ポッターといえば、ワーナーブラザーズですよね。実は、このワーナーに「天下り?」した役員がいます。
この木田氏については「演出力が無いCPだったが、先輩上司が苦心して人気脚本家を籠絡してブッキングした『毛利元就』のヒットで出世街道に乗った。名古屋局長時代に恐らくJR東海とのコネで理事に昇格。その後、ワーナー顧問に転じた後もNHKとの関係が続いていると見られる」という指摘が退職者から寄せられました。(※初稿の記述に裏付けが曖昧な部分があったので、理事就任の経緯をカットしました)
このようにNHK出身者が「天下り」しているような企業のプロモーションに近い放送がNHKでなされることは、好ましくないことだと私は思います。
放送が歪められていないか?改めて検証する必要があるでしょう。
「ワグネルの乱」を巡る緊急対応のお粗末さ
最後は、ロシア情勢を巡るNHKの対応についてです。
ワグネルの反乱において、NHKはわずかに報じたのみで緊急特番等を放送しなかったのです。日本に隣接する核保有国であり、安全保障上の脅威でもあるロシアの事変に対してNHKは実質ノータッチでした。
ヨーロッパ各国だけでなく、モスクワにもウラジオストクにもNHKの支局があって記者も配置されています。さらに、ウクライナとロシアの戦争を巡っては、さすがに初動で遅れをとったNHKも日本や各国とのネットワークも構築できたものと見られます。
それならば、リモートで繋いで、提携している海外の放送局の映像を貰いながらリレー形式で話を聞くような放送を出すようなことはやるべきだったと私は思いました。
働き方改革が行き過ぎた結果として、土曜の深夜は報道現場では管理職さえまともに稼働しなくなっていると聞きますが、これほどの一大事において放送が出ないのなら、海外支局の維持のために莫大な受信料を使う意味などほとんど皆無でしょう。
さすがに、クロ現での巻き返しを図るようですが、NHKは「速報性」と「網羅性」を両立させることを求められる放送局です。
ただでさえ求心力が落ちている今、むしろ海外の方から「日本のNHKの報道が良い」と評価されるような放送を出せれば汚名を返上することもできたはずです。その機会をみすみす逃した点でも、今回の件はかなりの痛手でしょう。
ウクライナで戦争が始まった時、安全を理由に現地スタッフを真っ先に退避させたことから民放にも新聞にもNHKは遅れを取りました。同じことを、今度はロシアでまた繰り返したと言えます。
ウクライナの件も、去年の夏頃には「素晴らしい独自報道をNHKは出している」ことに局内的にはすり替えられていましたが、世間はしっかり見ています。緊急報道こそが生命線だということくらいは、改めて肝に銘じて欲しいものです。
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