note杯 しゃべるピアノ
「するってえと何かい、おめえんとこのピアノは夜に鳴らすと人の声でしゃべるってのかい」
「そういう噂だけど、落研って変なしゃべり方するものなの?」
管弦楽部の友人から落語ネタにこの学校の七不思議の話をしていたら、とんだ掘り出し物が出てきた。
これは、やらねばならない。
「なに?本当にやってみるの?馬鹿?」
もう駄目なのだ。
思い浮かんでしまった。
やらざるを得ないのだ。
頭から離れないのだ。
まるで憑りつかれたかのように僕はその日学校に夜まで残った。
静けさに包まれた音楽室でピアノの前に座る。
観客も聴衆も、当然誰もいない。
人差し指で、思い切りその鍵盤を叩く。
『ドーーーーーー!』
音楽室に響き渡るその単音。
僕はおもむろに首をかしげると
「ど~~なってるの??」
と欲求を発散する。
夜のとばりも落ちたころ、一層静まり返る音楽室の中で、どこかで
「くすっ」 と声がした気がする。
それがピアノからなのか、はたまたバッハの肖像画か。
それはまた、別の話。
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