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8年間使わなかったソファ

貰い手も見つからないし捨てるのも忍びなくて、なんとなく引っ越すたびに惰性で新しい部屋に運び入れていた無印の体にフィットするソファをとうとう捨てた。8年使った。いや、正直使った記憶はほとんどない。購入当時、流行に流されて買ってはみたものの、ついぞ私の体にも心にもフィットすることはなく、8年もの間ただでさえ狭い私の部屋のまあまあでかいスペースをただ占領し続けていて、「邪魔なんだよなぁ」と思ってしまう度に多少の罪悪感が湧き精神衛生面にもうっすらと影を落としていた。
しかしやけにクタクタしているのでそれなりには使っていたのかもしれない。掃除機をかける時はぬいぐるみ達に「おまえたち、掃除が終わるまでちょっとそこの上に乗っかってなさい」とよく言ったものだし、スマホやリモコンを遠くから投げたい時なんかは「ぽすんっ」と柔らかい音を立てて衝撃を和らげてくれたので役に立った。

最寄りのコンビニで200円で買った粗大ゴミシールに日付と名前を書いてソファに貼り付け、えっちらおっちら集積所まで持って行くと、急に死体でも捨ててるような後ろめたい気分になって恐ろしくなり、「ごめんよ〜ごめんよ〜」と楳図かずお作画の顔になりながら部屋までの階段を駆け上った。
ゴミに出しといてなんだがソファの行く末について気になってしまい、Googleで「粗大ゴミ どうなる」という小学4年生みたいな検索の仕方をして上位に表示されたホームページを見てみると、『粗大ごみは、指定日に自宅の前に出しておくと、収集車が引き取りに来ます。その場で破砕できるものは破砕して車に積み、粗大ごみ処理施設に運ばれます。まだ使える家具や自転車などは、地域リサイクルセンターに引渡します。そこで、必要なら修理をして希望者が再利用できるようにします。』と書いてあった。

その場で破砕されたのか、どこかの誰かが再利用しているのかどっちなんだろう。
こういう時、真実なんて知る由もない時、考えても仕方がない時、私はどうするかというと、もちろん自分に都合のいいように考える。

子供の頃、飼っていたハムスターが脱走していなくなってしまったことがある。ゴールデンハムスターで、名前はチャッピーといった。脱走はよくあることで、チャッピーがゲージにいないことがわかると、テレビやエアコンの音が出る家電の電源を落として耳を澄ました。そうするといつもどこかでカサ…カサ…と音がして、音がする方を探すと見つけることができた。
だけどその日はどこからもチャッピーが動く音がしてこなくて、嫌な予感がして玄関の方へ行くとドアが開いたままになっていた。
それから1週間ほどして、チャッピーは死んだのか、どこかで生きているのかどっちなんだろうかと考えた。結局、チャッピーはきっと誰かに拾われて、今頃新しい飼い主からもらったひまわりの種をもひもひしてるに違いねえと思うことにした。

チャッピーは生きてるし、ソファは誰かに再利用されている。私の私による私のための都合のいい妄想。

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