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ただそこにある不穏「Rusty Lake」: ゲームレビュー

私がドはまりしているポイント&クリックゲー、オランダ発・Rusty Lakeスタジオのゲームを紹介する。要約すると、「めちゃめちゃ有機物を使って謎解きする癒しダークホラーファンタジー脱出ゲーム」だ。

まずは、こちらのトレーラー映像を見てほしい。

公式サイトは英語だが、現在は全作品が日本語ローカライズされており、スマホでもPCでも、大半の作品は無料で気軽にプレイできるSteamやアプリストア(Android/ Apple)からダウンロードしてほしい。

私のおすすめプレイスタイルは「強めのお酒をちびちびしながらじっくり」だが、「なんで?」「どして?」とツッコミ(困惑)どころも多く実況・配信映えもする作品だ。一人のプレイを複数人で眺めて、知恵を絞るのもおすすめ。

私は日本語版がないころからプレイをしていて、YoutubeやSNSを見ても日本語圏プレイヤーが少ないことにやきもきしていた。

頼むからみんな、やってくれ。

どんなゲーム?

脱出ゲームでは定番の、引き出しを開く動作なんかのひとつひとつに、静かな驚きとシュールさが添えられている。そのため、このゲームをネタバレせずにおすすめするのは非常に難しい。

以下、極力ネタバレを避けて魅力を紹介する。

不穏な癒しゲー

ジャンルで言うとダークホラー・ファンタジー系の謎解き脱出ゲーム。脱出ゲームの「あるある」を踏襲しながらも、解けてスッキリ!という類のものではない。ゲームのプレイ中も、クリア後も、ただただ不穏がそこにいる

それでもクリア時には、ふと視線を上げたときに空の青さに気づくような、不思議な爽快感がある。空気中に不穏はただよっているのだけれども、不穏で窒息するほどの閉塞感はない。雨で気温が下がった曇り空の夏の午後を散歩しているような、穏やかな癒しゲーだ(と、私は思っている)。

素敵Barの雰囲気

同社の作品の一部には、多少のホラー・びっくり要素もあるのだが、プレイ中の大半は、静かなバーで流れていそうな、ゆったりとしたBGMが流れている。時折あるSEも、ゲームの雰囲気を崩さない。

躍動する有機物

Rusty Lakeの特色は、なんといっても鍵となる有機物の多さ。普通脱出ゲームというのは、謎に落ちているドライバーだったり、バールのようなものだったりを使って脱出を目指すのだが、Rusty Lakeは違う。何が出てくるか、楽しみにプレイしてほしい。

謎多きストーリー

2022年8月現在で全15作品(Rusty Lakeスタジオのメンバーらが新設した姉妹スタジオ・新レーベルSecond Mazeの同一世界観の作品を含む)。制作順を問わず、どの作品からプレイしても、単独でも楽しめる

しかしすべての作品を通じて、根底を流れる一本の物語がある。物語は難解で、プレイヤーの少ない日本語圏でさえ考察班がいるほどだ。最新作までプレイしても、まだ全容は明らかになっていない。

捗る周回プレイ

脱出ゲームとは、普通一度プレイしたらそれで終わりだ。しかしRusty Lakeは、噛めば噛むほど味のでる、周回プレイも飽きさせない作品だ。

実際、周回プレイを促す実績解除の仕組みがある。ある作品で出てきたパスワードを他の作品で使うと・・・?といったサプライズ要素もある。

沼(池)へのいざない

ここからは、おすすめのプレイ順を紹介する。なお、公式サイトや各種アプリストア(日本語の紹介文あり)を見て、気になった順にやっても問題はない。

ゲーム中にイラストとして出てくる英文は、クリックすると日本語訳が表示されるので、英語にビビらずプレイしてほしい。

初めてプレイをするなら:Samsara Room

まず手を出すなら、Samsara Roomをおすすめする。Samsaraとはサンスクリット語で「輪廻」。

Rusty Lakeの前身となる、プロトタイプ的な作品で、無料ながらもボリューミー。これひとつで、Rusty Lakeの雰囲気をつかむことができる

同社の作品の中には、多少のホラー要素やびっくり要素が含まれるものもあるが、Samsara Roomにはほぼそれがなく、非常にお上品。お上品な不穏

特に「癒し」要素が強い作品となっている。気分を乱高下させるゲームに疲れたら、ぜひ。

雰囲気が気に入ったら:Rusty Lake Hotel

Samrsara Roomでゲームの雰囲気が気に入ったら、次はぜひRusty Lake Hotelをプレイしてほしい。こちらは有料だが、200円ほどだ。

ホテルに招待された5人(?)の動物たちに、プレイヤーはディナーを振る舞う準備をする。Rusty Lakeの物語のキーとなる人物も登場し、考察が深まる作品。シュールさと有機物の活躍がすごい

どっぷり世界観に浸るなら:Cube Escape Collection

上記を買う前にもう少し様子見をしたいか、物語をより深く知りたいなら、Cube Escape Collectionがおすすめ。本記事冒頭のトレーラー映像も、この作品のものだ。

スマホアプリ版は無料、Steam版は520円(2022年8月現在)となっている。スマホ版は大型の有料作品(といっても2-300円だが)に進む前の、短編集といったところか。

こちらは、Rusty Lakeが主に初期に発表したCube Escapeシリーズ9作品を、ひとつのゲームにまとめたものだ。9作品(「Cube Escape: ○○」というタイトルのもの)それぞれをアプリでダウンロードすることもできるが、追加要素もあるCollectionの方のダウンロードをおすすめする。

ただ、初期の作品は、ホラー・びっくり要素が少々強め。ここで苦手意識を持つ人もいるかもしれない。沼(池)にちゃんと引きずり込むなら、ホラーが苦手な人には先に挙げたHotelからの方がいいかも。

沼(池)にはまった後は

Rusty Lakeの魅力はアプリゲームだけにとどまらない。Rusty Lake 沼(池)は奥が深いぞ!

Rusty Lakeが運営するファン向けDiscordサーバーでは、Rusty Lake側から開発進捗やイベント出展情報が発信されるほか、ファンからはファンアートの投稿やプレイで詰まった際のヒントの出し合いなどが日夜行われている。主に英語のコミュニケーションであるものの、眺めているとより深くRusty Lakeを楽しむことができる。

また、Rusty Lakeスタジオ(およびSecond Maze)は、その新作The White Doorで、現実世界とゲーム内世界をリンクさせたARG(Alternate Reality Game)を開催したことがある。ゲーム内外の様々なヒントを駆使して、現実世界にあるアイテムを探すというものだ。

日本語圏プレイヤーが増えてきたこともあってか、ARGでは世界各国の都市とともに、日本もその舞台となった。上述したDiscordには日本語チャンネルもあるのだが、ARG時には盛り上がりを見せていた(私はROM専だが)。

さらに、Cube Escapeシリーズの最新作Paradoxでは、ショートフィルムとコミックも同時制作された。ショートフィルムは多少ネタバレも含まれるので、Rusty Lakeの過去作品をしっかりプレイした後に見るのがおすすめだが、マルチメディア展開されたことで、同作品がより味わい深いものとなった。

かわいい公式グッズもあるぞ。日本語公式Twitterもあるぞ。

新作をともに待とう

どうして私がRusty Lakeを必死に布教しているかというと、重大な理由がある。2022年秋に発表される予定の新作「The Past Within」は、なんと二人プレイ。ぼっちではプレイができないのだ。

上述のDiscordサーバーで相手を見つけることもできるだろうが、できたら顔の見える友人とプレイがしたい。Rusty Lakeのすべての伏線を踏まえたうえで、一緒に芯まで味わいつくしたい。感想を語り合いたい。

ということで、リアル友人(とネットの皆様)に布教しているのである。

みんな、やっちくりー

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