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血液型占いはなぜTVから消えたか

2000年代は「血液型番組」が乱立していた


最近あまり聞かないが、血液型占いって今でも健在なんだろうか。
「A型・几帳面、B型・自己中、O型・大雑把、AB型・変わり者」みたいなやつ。
私の子ども時代は、当然のように「うちらA型とO型だから相性良いんだよね~」とか「あいつB型だからめっちゃわがままだよな~!」などの決め付けが飛び交っていた。

00年代までは、血液型診断はテレビでもさかんに取り上げられていた気がする。
テレビ朝日の番組で、同じ血液型のタレントを集め、チームで『クレヨンしんちゃん』の巨大な塗り絵をさせ、それぞれ作業方法や仕上がりにどんな違いが出るか?みたいな実験をやっていたのを覚えている。
O型チームの絵の具の塗り方があまりにも雑すぎて、「いくらなんでもこれはわざとでしょ」と呆れながら観ていたものだ。

調べてみると、『決定!血液型ランキング~芸能人100人血液型大実験&大激論SP~』という番組だった。放送は2004年。

この番組に限らず、当時、血液型による性格診断の番組は数多くあった。血液型特集2時間スペシャル、各血液型への不満を話し合うトーク番組、なんてのも、週に何度も放送されていた記憶がある。

血液型差別の助長


それらの番組で顕著だったのは「B型いじめ」とも取れる演出である。
この当時、テレビ番組で喧伝されていたB型像はひどいものだった。B型の特徴とされる「自己中」な面を強調するため、ヤラセと思われる場面も多々見受けられた。

作る側は「B型を悪にした方が番組が盛り上がるから」という安易な考えだったのだろうが、視聴者への影響はあまりに大きかった。
日常生活において、B型の人が「自分勝手で協調性がない」などの決め付け発言に不快な思いをしたり、ひどい例では、「B型であることを理由にバイトの面接に落ちた」という話も見られた。

他の血液型に関しても、ステレオタイプに当てはめるような取り上げられ方をされることが多く、あまりに偏った番組内容への非難の声が上がった。

この年の12月には、「差別を助長する」ということで、放送倫理・番組向上機構(BPO)から、血液型診断をテレビで扱うことを自粛するよう勧告が入る。

「血液型を扱う番組」に対する要望(2004年12月8日)

というわけで、2004年を境に、「血液型番組」はテレビから消える運命を辿ったようである。

そういえば、朝のワイドショーで定番だった「今日の血液型占い」もいつの間にか見なくなったので、おそらくこの勧告を受け、各番組フェードアウトしたのだろう。


ここでひとつ疑問が湧く。「あれ?割と最近、NEWSがホストみたいな格好で血液型の曲歌ってなかった?」と。
血液型占いをモチーフとしたNEWSの『恋のABO』は、2010年発売。「YOU達、何型?」で始まるこの曲は、血液型別の性格や相性診断が歌詞に盛り込まれている。
BPOのホームページ内を検索した限り、この曲に対する意見は見つからなかった。
歌詞が「運命(占い)を信じるのもいいけど、結局フィーリングじゃな~い?」みたいなノリなので、差別を助長するとは判断されず、看過されたのかもしれない。


日本人が「血液型占い」を信じるのはなぜか


これほどまでに「血液型番組」が多かった理由、さらに「日本人はなぜここまで血液型占いが好きなのか」を考えてみる。

まず、日本人は比較的、各血液型の割合がバラけていることが大きいのではないか。
中南米など、国民のほぼ100%がO型という国もあるらしいので、こういう土地では血液型診断は流行しようもない。
バラけているからこそ、血液型による性質の違いに敏感になるのではないか。

もう一つの理由は、対人ストレスを抱きやすい国民性にあると思っている。
人間関係でモヤモヤした場面に遭遇した時に、自分を納得させるために、「あの人は△型だから私と相性が悪いのだ」「×型だからだらしないんだ」と血液型のせいにすれば、一時溜飲を下げることが出来る。
テレビ番組で、やたら各血液型のネガティブな面を強調していたのも、納得の材料にするためだと考えれば合点がいく。

かく言う私も、姑との間でモヤモヤする場面があったときに「お義母さんは○○型だから仕方ない」と思うことで気持ちを落ち着ける、なんてことはあった。
血液型のせいにすれば、「悪いのはその人ではなく、持って生まれた性質なんだ」と考えることが出来て、その人自身を憎まずに済むのだ。

もちろん、本人に直接「あなたは△型だから××なんだね」と決め付けるようなことを言うのは“ブラッドハラスメント”に当たるので、血液型占いを面白がるのは自由だが、内心に留めておくべきだろう。

近い未来、「血液型占い」は廃れる可能性がある


そもそも、「人はなぜ自分の血液型を知っているのか?」という所までさかのぼると、かつては「輸血をしなければならなくなったとき、血液型がわからないと困るから」という理由で、出生と同時に子どもの血液型を調べることが多かったから、らしい。
現在は、輸血の必要があればその場で調べるので、あらかじめ自分の血液型を知っておく必要はないという。
さらに、一歳未満の検査は精度が低いという理由で、出生時の血液型検査は行われない傾向にある。

そういえば私も、我が子の血液型を知らない。特に調べる機会が無いまま小学生になったが、今のところ、特に困ったことはない。

これからの世の中、自分の血液型を知らない人の方が多くなっていくのだろう。それに伴い、血液型占いが完全に廃れる日も近いかもしれない。

第一、嘉門達夫の歌にもあるように、「人間の性格がたった4種類に分類される訳ない」のだし、血液型で占うなんて、よく考えてみれば馬鹿げた話である。


――などと考えている一方、「お笑いコンビにはA型とB型の組み合わせが多い」とか「ジャニーズの『Aぇ!group』には、グループ名に反してA型が一人も居ない」などというトリビアを聞くと、「やっぱり血液型の話って面白いかも~」と思ってしまうのである。


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