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満ち潮とバイオリン



近くの浜に来ている。家から歩いて5分とかからない。姉2、弟と一緒に。
わたしと姉は、砂浜に座って海を眺めていたが、弟はいつの間にか泳ぎ始めていた。Tシャツだけ脱ぎ捨ててある。他にも島っちゅ数人が思いのままの姿で泳いでいた。誰も水着なんてものはつけていない。
まぁ泳いでもいいけど潮水でぬるぬるするしなぁ、、、でも家に帰ってすぐに浴びればいいだけか、、とか思いながら見ている。姉も同じ気持ちのようだ。

だんだんと潮が満ちてきて、日も暮れ始めた。
海面に弟たちの黒い影が浮かぶ。
誰かが手を上げて誰かを呼んでいる。とても気持ち良さそうだ。
くーーー泳ぐかーーーーー!
そんな気持ちになって海に入っていった。最初は少し冷たい。でもすぐに慣れる。太陽は沈みかけ、三角の黒い波が揺れる。顔もよく見えないのだが、わたしの友人も何人かいた。おー久しぶり!!この後ノンカタするか!と意気投合する。

そろそろあがろう、と姉が促すので、帰ることになった。
海から出ると身体が重く感じる。早く帰ってシャワーせんと。
友人たちとは、それぞれ一度家に帰ってから集まろう、という話になった。

ふと、公民館のすぐ横に立っている大木が傾いているのが見えた。かなり高い木。もう葉を付けず、幹と枝だけの名も知らない茶色い木なのだが、じーっと見ていると、いや、傾いているというよりも、ほぼ横倒しじゃないか?
は、あれって大丈夫?
薄暗いので良く見えないが、大木の先の方は近くのマンションに倒れ、上階の方は崩れかけている。
なんかすごいことになっとる、、、、
とりあえず早く家に帰ろう、、、と急いで家に向かおうとしたら、後ろから友人に呼び止められた。幼馴染のTだった。
Nは来られないと思うがわかってやってくれ、Nの母親は厳しいから、ほらNには夫がいるだろう?
そういう内容だった。
へぇーNは結婚していたのかーと驚いたが、わかった、とだけ伝えた。夫と母親か、、、大変そうだな、、、、


帰ると、家は床が水浸しになっていて色々なものが散乱していた。満ち潮?さっきの大木もそのせいなのか?こんな状態なのに弟はシャワーを浴び始めている。
1階にあるトイレが使えない状態だったので2階のトイレへ行った。便座の上には姉のバイオリンが置かれていて、なんでこんなところに、と思いながらネックの部分を持ち上げると、
ホロリ、
と、折れてしまった。
わわわ、、焦ったが、折れてしまったものは仕方がない。新しく買い換えなくては、と、姉に謝りに行った。
折れたバイオリンを見た姉はシュンとした顔をして、「うん、この部分ね、ものすごく脆いのよ、でもそこが貴重な品だったわけ、、、」

ごめん、、、、、わたしが乱暴に持ち上げたからだと思う、本当にごめん、、、

姉3が「新しいやつを買えば大丈夫だって!」とわたしを慰めてくれたが、姉2はいつまでも悲しそうな顔をしていて、そんな姉を見て、わたしの方もますます悲しくなる。




07/22/2024

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