歩いていて楽しいダンジョンの作り方
ダンジョン、作るの得意ですか?
なんとな~くマップタイルを敷いてみたり。
なんとな~く分かれ道を作ったり。
なんとな~く行き止まりに宝箱を置いたり置かなかったり。
なんとな~く敵を配置してみたり。
なんとな~く謎解き要素を入れてみたり。
していませんか?
ダンジョンってそれっぽく作ることは簡単なんですよ。
ただ、そうして作られたダンジョンが面白いかどうかはまた別です。
ぶっちゃけ、
というのが現実じゃないですかね。なんとな~く作ったダンジョンが、なんとな~くつまらないダンジョンになっても、まぁ別に全然おかしな話じゃないわけです。
ただ、なんとな~く作っている人も、別になんとな~く作りたくて作っているというよりは、
っていうのがあってなんとな~く作っていると思うんですね。
なのでこの記事では、ダンジョンマップを『設計』するための基本的な考え方を書いていこうかなーと。なんとな~く思っております。
こう書くとなんか固いですけど、まぁ、その、ダンジョンを作るにあたって
って感じの話をしていきます。
あ、ちなみにこの記事では「シンボルエンカウントで~」とか、そういうシステムの話はするつもりはないです。マップタイルの並べ方とかそういう話もしません。敵の配置の仕方とかそういうのもしません。
どういった形式のマップをとるにしろ、共通して使える『根本的な考え方』の話をしていくつもりです。
◆楽しく退屈しないダンジョンって何だ?
◇プレイヤーにどう思って欲しい?
さて、まずは目標の確認からです。
楽しく退屈しないダンジョン、なんて言っても抽象的すぎてよく分かりません。分かったような気にはなれますけども。
まず、プレイヤーの感情や思考から考えていきましょう。
例えば、プレイしながら
って思えるようなダンジョンがあったらですよ。
これ、退屈なダンジョンとは決して言えないと思うんですよね。こんなこと言っている人って絶対にそのダンジョンを楽しんでいるじゃあないですか。
だったら、そう思ってもらえるように作るにはどうすればいいのかな?というのを逆算していくと、何を考えるべきか見えてきます。
では具体的に何を考えるのか?
……とまぁここから詳しい話に繋げたい所ですが、その前に逆パターンも考えておきましょう。こういう状態になったらダメだよねっていうアンチパターンを把握しておいた方が、理解も深まります。
◇逆に、退屈なダンジョンってどんなの?
『退屈』だとちょっと扱いづらいので、言葉を足しましょうか。
『退屈で飽きやすいダンジョン』ですかね。
私がざっと思いつくのはこういうの。
コレを言い換えると、
ですかね。
やれって言われたことをやるだけ。変わり映えも無ければ、頑張ってプレイしても無駄な事が多い。そして頑張ろうとしても邪魔ばっかりされてやろうとしたことができない。そういうダンジョン。TAIKUTU。
面白い物を作るなら、不必要なつまらない要素はできるだけ排除していった方がいいです。無駄な減点が減るので。
それを踏まえた上で、次の話をば。
◆「届かない所にある宝箱」がなぜ有効なのか
さて、では楽しくて退屈しないダンジョンを作るために具体的にどうすればいいのか。よく言われる強力な手法があるので、まずはそれをベースに考えていきましょうか。
◇「届かない所にある宝箱」とは?
その強力な手法とは
です。
マップ内にすんごい豪華な宝箱が見えるんだけど、川に阻まれて通れない。なんとか迂回して辿り着く道を探さないと……みたいなのですね。宝箱配置の基本的なテクニックです。
これの素晴らしい所は、
という所でしょうか。
これがあることでワクワクしながらダンジョンを進めるわけですが、なぜそうなるのか、これから解説をしていきます。
◇「行きたい!」と思えるのが大事
さて、唐突にですが、旅行で京都の清水寺に行くとしましょうか。
えぇ、まぁ、この質問の仕方だと間違いなくAさんなんですけども。
自分が興味をもっている所に行くのと、何の興味もない所に行かされるのでは、やはり「行きたい!」と思える場所に行った方が楽しいです。
さて、当たり前な話のこの質問、少しだけ状況を変えましょうか。
どうですかね。これだと、Aさんの方が楽しめる!とは断言できなくなってくるんじゃないでしょうか。旅行の目的はAさんの方が楽しめるけど、向かっている途中はBさんの方が楽しめるかもしれない。
さて急に旅行の話をしましたが。
ダンジョンにおけるゲームデザインとして重要なのは、上記の「自由に食べ歩きしていいよ」のように道中を楽しませる工夫です。
ダンジョン設計というのはシナリオ上の目的(上記の例でいうと清水寺に行くという目的)のために存在しているわけではありません。その目的地に行くまでの道のりを楽しませるために存在します。
食べ歩きが大好きなBさんにとっては「美味しそうな食べ物があるお店」は興味の対象であり、「行きたい!」と思える場所となります。
では「ゲームのプレイヤーが共通して興味がある物は何か?」というと、最も手っ取り早いのが宝箱です。
強い装備とかアイテムとか置いてあって役に立ち、手に入ると嬉しいもの。宝箱が嫌いなプレイヤーなんぞほぼいません。
なので例え同じ道であっても、宝箱を目指している時と、ただ漫然とダンジョンを探索している時では、その道を通る時のワクワク感が違うのです。
これが、「届かない所にある宝箱」が有効な理由の1つです。
あと自発的に「行きたい!」と思えるような場所を目指しながらダンジョンを探索するので、アンチパターンとして挙げていた
を潰すこともできますね。
◇『刺激』として継続的に機能する
人間というのはね。獣なんですよ。刺激に飢えた獣。あぁ恐ろしい。
彼らを満足させねば我々は食べられてしまいます。具体的に言うとBadレビューで「つまらない。クソゲー」とか書かれます。あぁ、恐ろしい!
茶番はともかくとして、何にもない同じような道をずっと歩かされるとやっぱり飽きてきちゃいます。感情の動きで平坦だと作業感が増し、没入感が生まれない。逆にダンジョンの所々で心が動くからこそ、遊んでいて楽しいし没入感が生まれる。
宝箱自体がちょっとした刺激となったりもしますが、前の項でふれたように「行きたい!」と思える場所を目指す形になると、より継続的に興味を引っ張ることができます。
だと刺激もすぐに終わっちゃいますが、
ならそれなりに時間も稼げる。
これによって、アンチパターンである
を潰すことができます。
というか、潰すための道具として使うことができるって感じですかね。
プレイヤーが飽きる前に、あの手この手でプレイヤーが興味を惹かれるような物を提示していくのが大事です。
◇『期待』がプレイの原動力となる
「あそこに行ってみたい!」と思えるのは、そこに期待があるからです。
「いい物が手に入りそうかな?」「面白そうなイベントが発生するかな?」という期待があるからこそ、もっと遊びたいと思ってもらえます。
逆に、「どうせこのまま進んでも何もないよ」「面白いイベントなんか起きないだろうな」って思われているなら、そんなゲームは遊んでてもつまらないしそもそも遊んでもらえません。
ではこの期待を生み出すにはどうすればいいのか?って話になりますが、これは過去の経験が生み出します。例えば
みたいな形ですね。
これは、恐らく想像されているよりもシビアな話です。
という学習があるのなら、
という学習も当然あります。 例えば分かれ道があってもその先は何もない行き止まりばかりであれば、「ダンジョン内を探索しても無駄だな」という形で諦めの方が先立つようになるでしょうし。そんなダンジョンを探索していても面白くないわけですよ。※心理学の用語だと「学習性無力感」っていったりしますね。 期待を生み出すのと同時に、その期待を裏切らないようにするのも大事です。
まぁこのサイクル自体は1つのダンジョンで考えるというよりも、ゲーム全体で考えるところではあります。後々のゲームプレイ中の期待感にも関わってくるので、できるだけ序盤で強めに学習させておいた方が良いとか。
とはいえ、ダンジョンを作っている時にも考えておかないとゲーム全体のサイクルは作れません。
というのは意識した方がいいんじゃないかと思います。
そして「届かない所にある宝箱」なんかは、立ち位置としては「期待を抱かせるための便利な手法」として機能します。宝箱という存在自体、色んなゲームで「良いものが手に入るもの」として存在しているのでプレイ前から学習はされているので、最初から『期待』を作れる非常に便利なアイテムです。
また実際に宝箱を開けた時に『学習』が起きるので、どれくらい良い物が手に入るかで次への期待値も変わってきます。
ただここで注意して欲しいのは、
ってことですかね。
例えば、
という場合は同じ報酬でも、コストの低い①は許されてもコストの高い②は「ふざけんなよテメー」という感想に変わったりします。
……少し話が表題から脱線してきた気がするのでまとめ直すと、
って感じですね。
そして『期待』を生み出すべく報酬の配置とかをしていくと、自然とアンチパターンの
も潰せるわけです。
なお、この辺の話は行動分析学の話を基に話していて、その理論的な所はこっちの記事で書いているので興味ある方はどうぞー。
◇宝箱じゃなくてもいい
さて、これまで色々と説明してきましたが。
重要なのは「届かない所に宝箱を配置する」という小手先のテクニックではなく、その中に内包される
というエッセンスです。それが達成できるのであれば必ずしも宝箱である必要はありません。
じゃあ宝箱以外には何が使えるの?という話になりますが、そういった話も含め、次の話に移りましょうか。
◆ビジュアルで『感情と想像力』を煽る
先に言っておくと、ここでいうビジュアルは「超美麗な映像を作れ!」とかそういう話ではないです。美人は3日で飽きると言いますが、超美麗な映像も30分あれば慣れちゃいますし。あぁ、でも本当に美人が3日で飽きるかは検証したことがないので、ぜひ美人は私の所に来て検証させてもらえると……えへへ
これは、超美麗な映像自体を否定しているわけではないです。そういうのはあるに越したことは無い。ただ、どんな映像のクオリティだろうとゲームデザインとして大事なことは別にある、と言う話ですね。
◇ゲームデザインとしてのビジュアル
じゃあ、大事なことって何よ?と言うと。雰囲気作りです。
より正確に言うと、
ことです。
「プレイヤーに刺激を与え感情が動くような雰囲気」と言われてもピンとこないかもしれませんが……
あからさまな例を出すと、例えば森のダンジョンを歩いていた時に
急にこういうエリアが出てきたら「お?」ってなるわけですよ。
そして
とまぁこれから起きることに対して想像力が刺激されたりもするわけです。
「何かありそうだぞ?何が起きるんだ?」と想像している時点で感情が動いていますし、実際にそこで何かを起こすことで更に感情が動きます。
制作側はプレイヤーの想像通りの事を起こしてもいいでしょうし、たまにプレイヤーの想像を裏切る別のことを起こしてもいいでしょう。
とにかくこうした刺激があり感情が動けば、楽しく退屈もしません。
そして楽しい体験をすれば次の新しいダンジョンとかに対してもワクワク感が生まれ、「もっと色んなダンジョンに行きたい」というのにも繋がってくるわけです。そのサイクルが作れていれば、それはもう「面白いゲーム」になるんじゃないでしょうか。
アンチパターンに一本道のダンジョンを挙げていましたが、この設計がしっかりできていると一本道のダンジョンでも楽しい物にできるんじゃないですかね。
ビジュアルのクオリティを上げるのはゲームデザインの仕事ではありませんが、どこにどんなビジュアルを配置してプレイヤーの感情を刺激し、そこで実際に何を起こすのかを考えるのはゲームデザインの仕事だと思っています。
◇いかにして「何かありそうだぞ?」と思わせるのか?
さて、じゃあどうすれば「何かありそうだぞ?」と思わせるような物を作れるのか?どう配置していけばいいのか?という話になるわけですが。
ここで重要なのは『メリハリ』です。『差別化』とか『コントラスト』とか『ギャップ』とか言ってもいいですね。
例えば、綺麗なお花畑を配置するとしましょうか。以下の3パターン。
この中で、「何かありそうだぞ?」と思わせられるのは③→①→②の順番ですかね。それぞれ解説すると
って感じです。「何があるのか?」こと自体はそこまで重要ではなくて、まったく同じものでも「周りとどう差別化されているのか?」というのが重要で、強く差別化されているほど刺激も強くなります。
ただし注意点として、③レベルのを無暗に乱発すると全体の雰囲気がよく分からなくなりますし、1つ1つのインパクトは弱くなっていきます。服飾における「ベースカラー」と「アクセントカラー」のような関係で、「普通の場所」があるからこそ「雰囲気の違う場所」が映えるのです。
なのでペース配分や配置の仕方が大事になってきます。飽きてくる前に刺激は与えた方がいいけど、強い刺激だらけなのがいいわけではない。
普通の道は①レベルの刺激をたまに与えながら、強めのアクセントをつけたい時に③レベルのことをやる……とかになりますかね。
それと上記の例だと「進んだ先に何があるか」でしたけど、「差をつける」という考え方自体は他の所にも色々と適用できます。
例えば同じ分かれ道でも
だと、ゲーム体験としては違う物になってきますね。
①のように分かれ道の情報が差別化されていないと「何となくどっちに進むか」でしかないですけど、②のように右の道が危険が雰囲気を出していると「今はHPが少ないから左の道に行こう」みたいに差別化された情報がプレイヤーの判断材料になってゲーム性が生まれます。
さて、ここまで「差別化するの大事だよ」って話をしてきましたが。
じゃあ実際の所、差別化に使える物って何があるんだろう?
って話を次でしていきます。
◇「何かありそうだぞ?」と思わせるための道具
アイディア次第で色々と出てきそうですが、ここではとりあえず基本的な所をおさえていこうかと思います。
私が思いつくのはざっと以下の4つ。
それぞれ簡単に説明してきますね。
①色 ----------------------
まず、わかりやすく一番手軽なのは色ですかね。
差別化できていないパターンとして、さっき
というのを挙げていましたが、これは
なら多少は差別化できます。
あとはまぁ調べたら開く隠し扉の壁の色を変えるとか、そういうのも王道的なパターンですかね。
②オブジェクト ----------------------
どんな物を配置するのか。
例えば森だったら、まぁベースとして花とか植物を賑やかしに置いたりはするとは思うんですが、そういうのとは別に印象深い物として
みたいのがあったら見た瞬間に「何かあるのかな?」とはなってきます。
さっき分かれ道の例に出していた「血痕」とかもここに入ります。
同系統の場所でも、配置するオブジェクトを工夫することでその場所の雰囲気を変え「何かありそう感」を出すことは十分に可能なので、上手く使いたい所です。
③キャラクター ----------------------
最も「何かイベントが起きそう」と思わせやすいのはキャラクターですかね。明らかに話しかけたらイベントが始まりそうなキャラクターがいたら、やっぱり行きたくなるものです。
あと話しかけたら情報が聞けるなり何かもらえるなり戦闘になるなり、起こせるイベントの種類も地味に多い。
無理に配置する必要はありませんが、うまく配置してプレイヤーの期待を煽れそうなら使ってみるといいかもしれません。
④敵シンボル ----------------------
まぁやっぱりバトルってゲームにおいては最重要コンテンツだったりはするので、その相手となる敵シンボルは「何かありそうだぞ?」と思わせるには十分な力を持っています。
ダンジョン内で明らかに強そうな敵シンボルが道を塞いでるとか。
そいつと戦って倒してみたい的な話もありますし、こういう強敵って倒した後に何かしらご褒美がもらえるパターンも多いので、その意味でも『期待』は煽れますね。
⑤エリア自体の雰囲気 ----------------------
例えば、神聖な雰囲気のある教会を思い浮かべてください。
白い壁面に木の床で明るい雰囲気の場所。その中を探索していて階段を降りたら、急に薄暗くて壁も床も鉄で作られている拷問室に来てしまったら……
みたいな。オブジェクトレベルの話ではなくて、そのエリア全体の素材をガラっと変えてしまうと、より強い差別化にはなります。
⑥BGM ----------------------
BGMはもちろんビジュアルの話とはちょっと違うんですが、雰囲気を作るのに重要なBGMは上手く使えば差別化に役立ちます。
例えば上にあげた教会と拷問室の例でいくなら、明るい場所は厳かなBGMが流れていたけど拷問室に入った瞬間にBGMを止めるとか。
ただ単純にBGMを変えるだけでもいいんですが、止めたり進むたびにフェードアウトさせていくだけでも「何かありそうだぞ?」と思わせることができますね。
◇『宝箱』は最善か?
「届かない所にある宝箱」の項でも少し触れましたが、「宝箱」は非常に分かりやすく汎用性の高い優秀なオブジェクトです。
みんな宝箱を見るだけでワクワクしちゃう。
ただし、すべての状況で最善の方法かと言われるとそれはまた別です。
例えば宝箱ってめちゃくちゃデカいサイズとかにはあんまりできないじゃないですか。近くでハッキリ見える分にはいいんですが、遠くを見渡して「何かありそうだぞ?」と思わせるにはサイズ的に厳しいところはあります。
なので、プレイヤーに遠くを見て「何かありそうだぞ!行ってみよ!」って思わせたい時は、サイズのデカくできるオブジェクトを上手く使った方がいいです。
例えば明らかに周囲の木々よりもデカい大樹を用意して、そこに行ってみたら良い感じの宝箱があったとか。
あとは別に宝箱に入れなくても、大樹のふもとに直接剣がぶっ刺さってたらそれはそれで「強い武器が手に入りそう!」みたいな期待感が湧いてきますし。
ただ何の脈絡もなく何もない場所に豪華な宝箱を置くよりも、周囲の見た目も上手く使ったり別の物を使ってみると良い場合もあります。
ゼルダ(ブレスオブザワイルド)なんかはこの辺りにけっこう気を使ってましたかね。確か。
◇印象的なエリアを作るには
この記事にて旅行の例を出したりしましたが、ダンジョン設計も観光地を作る感覚かなと思ってます。
何の見どころもない観光地なんて言っても何も面白くないわけで。何の見どころもないダンジョンを歩いてもやっぱり面白くないと思うんですね。
これは絶景を作ろうぜとかではなく(絶景が作れるならそれに越したことはないんですが)、印象的なダンジョンには印象的なエリアがあるよねって話です。
なのでさっき例で挙げた「道具」を上手く使って印象に残るような場所を作っていくわけですが、印象付けるために何でもかんでも脈絡なく詰め込んでも、何が魅力の場所がなのかが良く分からなくなっちゃいます。
そこで重要なのが、1つのエリアで何を目立たせるのかを絞ることです。
ここは滝が印象的なエリアなんだとか、怪しい塔があるのが印象的なエリアなんだとか。背景は特に特徴ないけど印象的な敵シンボルがいるんだとか。
まぁ背景と敵シンボルは両方印象的であってもいいんですが、印象的な背景が2つ以上あるとごちゃって分かりにくくなってくるので、同系統のものは1つに絞った方が無難です。
ダンジョンを作る時にはなんとな~く配置をしていくよりも、各エリアで何を印象付けるのか明確にしてから配置をすると作りやすかったりしますよ。
◆実践:ダンジョン設計の例
さて、これまで楽しいダンジョンを作るために何を考えた方がいいのか解説してきました。
◇なぜアイディアが出ない?
ただ、ここで「よぉ〜し、作ってみるぞ!」と息巻いてみても、いざ作ろうとしたら「なんも思いつかん……」と手が止まってしまう事もあるかと思います。
なぜなのか?
それは、あなたにセンスが無いからです。
……ではなく、考えるための情報が不足しているパターンが多いです。
人間、無から有を生み出すことはできません。そしてアイディアも無から生まれたりはしません。考えるための情報がなければどんなにウンウン唸って考えても出てこないのは当たり前です。
例えば、
とか言われてもふわっとしているのでアイディアは出にくいですが、これが
だったら、「色盲の人が使いやすいのはどういう物か?」という所から考えることができます。色だと見わけがつかないから、何か目立たせたり分かりやすくするなら色以外でも形とかで差別化したほうがいいのかなとか。
また、作ったものの出来に対して「これって色盲の人でも本当に使いやすくなってる?」みたいな明確な判断基準が持てたりもします。
何もないところからだとアイディアは出てこないので、こうした「テーマ」や「コンセプト」を持つと考えやすくなります。
◇ダンジョンの大まかな情報を決める
なのでまずは、そのダンジョン全体の大まかな情報を考えましょう。
考える項目としては、例えばこういうの。
①のロケーションは、森とか砂漠とかそういうのです。
シンプルにどういう舞台の場所なのかですね。ここは説明はいらないんじゃないかと思います。これによって必要な素材とか、使えそうなギミックとかが変わってきます。
②のコンセプトは、どんな特徴をもったダンジョンなのかです。
例えば「森」と一口に言っても、色んな森がありますよね。
例えば妖精の住む幻想的な森であれば迷いの森的なギミックが入ることもあるでしょうし、呪われた森なら全体の雰囲気は暗く厄介な毒の沼とかあるかもしれません。
どういう存在の場所なのか世界設定なんかがあったりするとまた考えやすくなったりはします。別に必須ではないですけども。
あとは敵の強さとか、どんな種類の敵を出すのかもここで決まってきますかね。
③の長さは、単純なそのダンジョンの規模です。
超広大なダンジョンにするならエリア数は100個くらい必要かもしれませんが、チュートリアルですぐ終わるダンジョンならエリア数は10個もいらないでしょう。それを決めます。
◇エリア設計をする
さて、ダンジョンの情報も固まってきたので、さっそく中身を作っていきましょう!
……とまぁ頑張ろうとしても、まだ難しいんじゃないかと思います。だってダンジョン内のエリア設計をまだやってないし。
これまで説明してきた通り、ダンジョンを作る時には「あそこ行ってみたい!」と思えるような仕掛けを随所にちりばめ、プレイヤーが飽きさせないように工夫することが重要です。そして
というのを考えるのがこのエリア設計となります。なんとな~くダンジョンを作っている人は、ダンジョンの大枠の設計はしても、このエリア設計をしていないんじゃないですかね。
さて、ではそのエリア設計をどうやってやるのか?
まぁ好きなように勝手にやってねっていうのが本音なんですが、それだとこの記事の意義がちょっと薄れちゃうので一例として少し書いときます。
まぁこの辺りはちょろっと書いても想像しにくいと思うので、適当なサンプルを作ってみましょうか。
◇設計サンプル
まずざっとダンジョンの大枠を決めちゃいましょう。
あとせっかくなので、道具の項で例として出したシンボルも使いましょうか。コレ。
あとはダンジョンの大まかな設定を考えます。
次にエリア分割ですが、まずはざっくり分けてみます。
基本は普通の森なので、森のエリアは広く。
ただし奥の方には設定どおり花畑を中心としたエリアに。
あと廃墟とか怪しげな像とか置きたいので、ダークな雰囲気のエリアも小さめに用意しておきます。
で、その上で具体的に各エリアをどうするのか考えていきます。
まず入り口用に小さなエリアを用意して……
あとせっかくなのでアレを試しましょう。届かない所にある宝箱。2つ目のエリアに川を用意して、その向こう側に宝箱を置きます。その宝箱をとるために3つ目のエリアに分かれ道を配置し、そのまた迂回中に通るエリアを4つ目のエリアとして配置します。こんな感じ。
これだとまだ各エリアがふんわりしすぎているので、もうちょい固めていきます。
最初の方は奇をてらわず、「普通の森」としての印象をつけることを優先しましょうか。
森2で届かない所にある宝箱があるのでプレイヤーの興味は引けていますし、上からのルートで宝箱がとれそうだ、と思わせることができれば森3の分かれ道にも判断要素があります。なので森1~3は無理に強い印象をつけなくても大丈夫。森としてのそれっぽい体裁が整えられていればOK。
ただ森4にはそろそろ印象に残るものが欲しいです。
何にするかな~という話になりますが、森2で川を用意しているのでそれに関連付けたものを考えましょうか。でっかい滝と橋を用意して、あの川はここから流れているぞ、この橋を渡れば宝箱のところにいけそうだぞ、みたいのを作ります。
あとついでに、橋のところで通せんぼしている敵とか作ってもいいかもしれませんね。
なので上記の画像を書き直すとこんな感じになります。
さて、続きを作っていきましょう。
そろそろ廃墟とか花畑とか、普通の森以外のエリアを入れていきます。
廃墟はメインルート上に置いてもいいですが、探索感を出すのを考えると分かれ道の先にあってもいいかもしれません。
あとボス戦の手前のあたりで回復エリアが欲しいので、そっちも追加しておきますか。
それを踏まえると、ざっとこんな感じ。
ただ寄り道しないでまっすぐ行くと、印象の薄い所がずっと続くので、森5の所にはデッカイ大樹でも置いて印象をつけておきましょうか。大樹のあたりにイベントとか宝箱を置いてもOK。
あと分かれ道の上下でけっこう印象が変わるエリアに行くので、それを示唆して「どっちに行こうかな?」と思える要素も追加した方がいいかも。
廃墟には邪教の拠点だった設定を適当に考えたので、そこに怪しげな像とかおいてそれっぽくしましょう。
その像を調べると、このエリアのボスに対して有効な闇属性の武器とか状態異常系の武器とかが手に入る……とかすると、雰囲気を出しつつ探索の意義とかも作りやすいですかね。像の近くに宝箱でもいいですけど。
それと花畑は森にお花をいっぱい敷き詰めるだけでもいいんですが、せっかくなのでイベントの伏線としても使ってみましょうか。
「森の奥にある花畑には竜が棲んでいる」という設定にしてたので、イベントとして
としましょう。その伏線というか前振りとして、花畑の花を奥に進むごとにだんだんと血に染めていきます。
最初は普通の白い花畑なんだけど、進んでいくと段々赤くなっていく的な。
それを踏まえて書き直すとこう。
そして全体像としてはこんな感じになります。
なお各エリアの左上に数字を書いてますが、これはそのエリアで作れる印象の強さみたいなのを4段階評価(高いほど印象に残る)で書いてます。
これで構成を俯瞰しながら
みたいなことを考えたりするのに使います。
あとは実際のマップを作りながら微調整したり、作りながら思いつたアイディアを盛り込んでいったりしますが、とりあえずこの設計を基にダンジョンを作れば
にはなってくるんじゃないかな~とは思います。最終的なクオリティは人によるので保証はしませんが、少なくとも「なんとな~く」作るよりは各エリア作る時のアイディアは湧いてきやすいんじゃないですかね。
ダンジョンを作る練習をしてみたい人は、この設計を基に試しにRPGツクールとかで作ってみるのも面白いかも?
※なお、今回はあえて省いてますが、実際にはこれに
とかも細かく設定していったりはします。
ただ、それ以前にまず設計するべきところが見逃されがちな気がしてたので、今回の説明はそっちに寄せました。
◆まとめ
さて、今回の話はここまで。まとめます。
っと思ったけど、なんか面倒になったのでまとめません。各自、勝手に頭の中でまとめといてください。まぁ気が向いたら……
あとこれは私が無知なだけかもなんですが、こういうがっつりしたダンジョン設計の話ってあまり見ないなーと思ってます。ダンジョンって色んなゲームにあるのに。
本腰を入れて解説している参考書とかってあったりするんですかねぇ。表面的な話をなぞるのではなくて。
今回の記事も、そもそも何を考えてダンジョン設計をすればいいの?という根本的な部分に絞ってあるので、細かい設計部分の話についてはまだいろいろと深堀りできそうな気はしています。サンプル設計も報酬配置の話とかあまりしてないし。
ダンジョンってこれまでの多くのゲームで作られてきたので、誰かしら知見は持ってはいそう。誰か我こそはと思う人はいい感じに共有してくれたりしませんかね(チラッチラッ
◆宣伝
今回の記事と同じ系統の話として、こういう記事を書いてたりします。
この記事でもさらっと触れてた内容を深堀したのが今回の記事になりますかね。
あと、ダンジョン全体とかエリアに対してコンセプトを立てて……みたいな話をしましたが、『コンセプト』の立て方や考え方に関する記事も書いてますのでよろしければこちらもどうぞー。
それと今回の記事の内容を使って作られたゲームがございましてね。
えぇ、はい、私のゲームなんですけども。今回の記事の内容は主にこのゲームを作りながら考えていたことを言語化して書いてます。
主人公の執着によってルートとエンディングが変わる、ゲームブック風RPGです。興味ある方はチェックしてみてくださいな。
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