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何者かになりたい

「何者かになりたい」

俺はこの感情にケリをつけなければならない。いや、ケリというかケジメだ。

なぜなら、すでに問題は解決に向かっていて、だからこそ「自分は何者かになりたいという感情を捨てきれていない」ということに気づくことができたからだ。

これを書くことで、俺が何者でもない「俺自身」として生きていけるように、ケジメとしたい。



なぜ何者かになりたいと思うのか?

俺の中で結論は出ている。

「さみしいから」だ。

すごく単純で、本当にしょうもない結論である。救いようがない。

さみしいがために何者かになろうとして必死にそれだけに意識を向けてきた。


実際の武蔵のことは知らないけど、バガボンドの武蔵は、母に拒絶され、父には殺意を向けられ、ほとんど友達がおらず、父にかけられた強い呪い「天下無双」を目指していく。

武蔵が天下無双を目指したのは、父に呪いをかけられたからであり、さみしかったからだ。



バガボンドを読んでしばらくして、俺はそれに気づいた。きっと俺も同じだ。ただ、さみしかった。

みんなと同じようにうまくやれなかった。色んなことができなかった。それは普段のコミュニケーションだったりする。俺は失恋によって絶望して、生きていくための前提を失った。俺は自分が無条件に愛されて、何も努力しなくてもなんとなく全てがうまくいくと思っていたから、特別な存在になろうとした。

特別な存在になれば、無条件にみんながちやほやしてくれて、俺は幸せになれる。たぶん、無意識にそう思っていたのだと思う。

ちなみに、僕はひねくれているし他人に興味を向けられるのがあまり得意ではないので、実際にそういう機会があると僕が相手を拒絶してしまうことがおおい。なので、いま思うと矛盾だらけでわらえてくる。



日常生活を過ごせなくなる弊害

「いまこの瞬間にすごくならなくてはならない」そういう焦りが強かった。

俺はいろんなことをあきらめたつもりだったけど、あきらめられていなかったことに気づく経験をしてきた。

反出生主義的な考えや、動物愛護・ヴィーガン的な考え、いろんな問題を完璧にクリアした理想の世界がないと俺は生きていきたくなかった。

だけど、この世界はいつまでたっても完璧にならず、俺も何者にもなれないままだった。だから、ずっと苦しかった。

しかしそんな日常に疲れ果てて、俺はただぼんやりとするようになった。すべてを忘れようとしてきた。それらを忘れることで「俺はちゃんとあきらめている」と錯覚させようとしてきたのかもしれない。

でも、そんなことは起こっていない。俺は何もあきらめられていなかった。

あきらめとは、絶望して、感情的になって、何も変わらない世界をそのまま愛せそうと思った時に訪れるものだ。たぶんそうだ。


ちゃんと絶望できず、俺の中で腐っていった「何者かになりたい」という想い。俺はその想いに気づくことなく、「これをやればすごくなれるんじゃないか」というものを追っていった。

その結果、日常生活がまともにできないままになってしまった。時間をムダにしないように焦るからだ。しかし、部屋はゴミだらけ、人間関係もうまくやれない、そして最近では仕事もできなくなり、そもそもすごくなるためにしようとしていたことはなにも続かない。

そりゃあ焦りに加えて慣れていないことを無理矢理やっているのだから続くわけがない。それに俺は気づくことができなかった。

だから、俺は日常生活がまともに送れなくなっていた。



まだ何者かになりたいか?

最近はそういうことを感じた覚えがまったくないので、そんなになりたいと思っていないような気はする。

でも、これはずっとこれまで俺の中にとどまりつづけてきた呪いなので、きっと消えることはない。きっと、ゆるやかに小さくしていくことしかできない。

仮に何者かになっても、きっとさみしいままなので、また別の何者かになろうとしていくだけだろうと思う。他人からカリスマ的に見られる体験を何度かしたが、俺はまったくうれしくなかった。

だからきっと、俺が世界で一番すごい何者かになっても、俺は幸せになれない。人気者になっても、何かすごい技能を手に入れても、何も良くならない。


なぜ何者にならなくてよくなったのか

これはこれまで書いたことを読んでいる人ならすぐにわかるだろうと思う。

さみしくなくなったからだ。

友達と定期的に交流するようになった。俺のことを支援してくれる謎の個人が何人かあらわれた。俺の文章を読んで勇気をもらえると言ってくれる人が増えた。

俺は友達がたくさんできた。だから、さみしくなくなった。

さみしくないので、日常のこと、目の前のことをやろうという気持ちが生まれてきた。

それで「俺はまだ何者かになりたかったのか」と気づくことができた。



これからどうしていくのか

俺はこの世界の一部として、社会の一部として、他人の人生の一部として生きていく。ただそれだけだ。

何も磨かないわけではない。何もしないわけではない。

俺は他人を幸せにすることで自分が幸せになりたい。それが生きていくための唯一の道なんじゃないかと思っている。

他人の役に立ちたい。でも、他人の役に立つためには、まず俺に余裕がなければならない。

なので俺はもっと金を稼ぎたいし、時間に余裕があるようになりたいし、知識や経験をたくさん蓄えて他人に渡せるようになりたいし、友達と楽しく生きていきたい。


俺は何者でもなくていい。ただの俺でいい。

最強の個ではなく、世界をよりよくして保っていく一部になりたい。


天下無双とは、すべての頂点になることでもなく、特別にすごくなることでもなく、敵がいなくなることだ。つまり、みんなと仲良くすることだ。

俺はみんなと溶けあえるようになりたい。

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