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ゴジラ(1954)を見た

見たのは3週間ぐらい前のことですがなんとなく書いておこうと思った。

また、すずめの戸締まりに関するネタバレがあります。


ゴジラ(1954)の感想はとてもバランスがいい映画だと思った。
怪獣パニックものとしての特技シーンはもちろんのこと、三角関係の成り行きとその結末という人間ドラマパート、ポリティカルフィクションとしての部分(国会での論争シーンなど)そしてあの戦争の語り継ぎ方。

怪獣パニックものとしての素晴らしさは特に言うまでもないと思う、あの時代あの映像が映画館に流れただけで人々を驚かせることができたと思う。

次に三角関係とその成り行き。
基本人間ドラマパートは海の男の尾形と博士の娘の恭子さん、そして芹沢博士の三人で進む(恭子さんの父親の山根博士も出てくるけど)
元々、芹沢博士と恭子さんは許嫁だったらしいのだが、恭子さんと尾形は実は恋人同士という設定。
なんやかんやありつつ、ゴジラをも倒せる兵器オキシジンデストロイヤーを開発してしまった芹沢博士は尾形と恭子さんの間柄を知ることとなり、身を引き、最後はゴジラとともにオキシジンデストロイヤーを二度と使わせないようにするために自ら死ぬことを決意した芹沢は友人の尾形に幸せになれと言い残して散っていく。

なんて悲しいドラマなんだと思うし、そういう男女パートにほとんど時間を使っていないのでテンポも良い。人間ドラマに過剰に時間を使う怪獣ドラマはゴミです。ゴジラ キングオブモンスターズのことなんですけどね。

ポリティカルフィクションとしての面もわずかだがよい、ゴジラの存在を秘匿しようとする男性政治家と事実はきちんと国民に開示すべきだとする女性の(おそらく)議員たちという描写など戦後の女性の政治参加を肯定しているようでとても良いシーンだと思った。

最後に戦争の語り継ぎ方。
昔読んだウルトラマンの本で外から攻め込んでくる怪獣たちは第二次大戦中子供だった世代にとってのB-29のようなものだった..みたいな記述があった気がするのですが、それと同様にゴジラもまた、首都に来襲して防衛軍の武器ではまったく叶わずに東京を焼け野原にして去って行く。

おそらく戦時中、子供だった世代にとってB-29は理不尽の象徴だったのかもしれない。

劇中ではほんのわずかに戦争のことが語られるが、あまり暗いものではなく、せっかくの長崎の原爆を生き延びたのにゴジラに殺されたらたまらないと語る女性や、ゴジラに襲われる街中で「おっとうのところに行くのよ」と子どもたちを抱きしめる(おそらく)戦争未亡人と思われる女性の台詞だ。

すずめの戸締まりでは、あの災害が恐ろしく直接的に語られている。(特にあの震災で母親を亡くした主人公のすずめの3.11の日記が黒く塗りつぶされている描写など、見るだけで心が痛くなる)

緊急地震速報の描写なども生々しい。

これをどう評価するかは難しい。
難しいと思うけど、厄災をきちんと伝えるという説教くささと同時にエンタメとしての魅力(ゴジラで言えば特技、すずめの戸締まりで言えば、椅子の滑稽なアクションや苦労人の芹沢(偶然ながらこちらにも芹沢という名前のキャラが登場する)のコミカルな描写などがしっかりと詰まっていていいと思った。

訴えたいことや伝えたいメッセージ、表現などがあるにしても、まずはエンタメとしてきちんとお客さんに見てもらえる、そして何度でも見たくなるものとして成立していることが作品として大事なのかなと思ったりした。
そして、メッセージの解析はあくまでもエンタメとしての魅力の次にやってくるものなのかなとおもったりした。