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ショート小説「空白」

中学,高校と私は独りぼっちだった.

学校に行き,授業を受けて帰る.毎日これの繰り返し.

授業で先生に指名されること以外には言葉を発しない.

もちろん友達は1人もいない.

修学旅行,文化祭,体育祭.誰かと協力してやらなければいけないことはすべて避けてきた.

卒業式の日.みんなで集合写真を撮っていたが,私はそこにはいない.

私には必要ないこと.そう思い込ませた.

大学生になり,1人だけ友達ができた.

その子は私と正反対な性格で,友達も多く人気者だ.

私にとっては唯一の友達だが,彼女にとってはたくさんいる中の1人である.

彼女は中学,高校と今変わらず人気者だったそうだ.

うらやましい?そんなことはない.そう思い込んだ.

私には何もない.中学,高校と嫌なことは避けてきた私には.

空白の6年間.私は何をしていたのだろう.

何も思い出せない.

いや,思い出したくないだけだ.

私は空を見上げ,ふとつぶやいた.

「だいじょうぶ.今からでも遅くない」

そして,ゆっくりと歩き始めた.

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