見出し画像

ショート小説「ジャスティスマン」

「助けてー,ジャスティスマーン」

誰かが私に助けを求めている.

「行かなくては」

会社を抜け出し,ヒーロースーツに着替え現場に向かう.

現場に着くと,1人の女性が怪人に捕まっていた.

「ジャスティスマンが来てくれた」

「彼が来てくれたからもう安心できるね」

周りからはこんな声が聞こえる.

「その人を離しなさい.抵抗しなければ命だけは助けてやる」

いつもと同じように怪人に問いかける.

「げはは,ジャスティスマンか.なんでお前の言うことなんか聞かなきゃいけないんだよ」

これもいつもと同じ.

「そうか.残念だな」

私は足元に落ちている石ころを拾い,空高く投げた.

怪人と周囲の人間は石ころに気を取られた.

「今だ」

怪人の隙をついて人質を救出した.

「ジャスティスマン.助けていただいてありがとうございます」

「お礼はいいさ.無事で何よりだよ」

怪人は人質を奪われたことに驚いた様子でいた.

「へー.今の間に助けたのか.思ったよりやるんだなジャスティスマン」

「それはどうも」

「しかし,それはどうするのかな?」

怪人が指さした先に人質になっていた女性がいた.

「どういうことだ?」

「おまえが来る前にそいつに爆弾を付けておいたんだよ.何かあった時のための保険としてな」

「なに!?」

周囲がざわつきはじめる.

「まあ頑張ってくれたまえよ.ジャスティスマン」

そう言い残して,怪人は去っていった.

「落ち着いてください.今はまだ大丈夫ですから,落ち着いてこの場から離れてください」

周囲の人が離れたのを確認してから,人質の女性に近づいた.

「どこに爆弾が付けられているかわかりますか?」

「い,いえ.付けられている感覚もないのでわからないです」

非常に困った.

この女性,よく見るとものすごいタイプだ.

「そ,そうですか.ではどこにあるか探るために体に触れても大丈夫ですか?」

「は,はい.大丈夫です」

「では,失礼します」

ふにゅ ふにゅ ふにゅ

どこを触っても柔らかい感触がする.

ふにゅ ふにゅ ふにゅ

「なかなか見つからないですね…///」

ふにゅ ふにゅ ふにゅ

「あ,あの,ちゃんと探してますか?」

「はい.探してますよ」

怪しまれないようにイケてる声で返事をした.

ふにゅ ふにゅ ふにゅ

その後10分位全身をくまなく探したが爆弾は見当たらなかった.

「もしかしたら爆弾ついてないかもしれないですね.怪人が嘘をついた可能性があります」

「そ,そうですか///それならよかったです///」

「大丈夫だとは思いますが,もし不安があればここに連絡をください」

彼女にヒーロー名刺を渡した.

「では,お気をつけてお帰りください」

女性とも別れを告げ,会社に向かった.

歩いていると空から1枚の紙が落ちてきた.

拾ってみるとこう書いたあった.

「ジャスティスマン.公衆の場で女性にわいせつな行為をしていた.女性は嫌がるもジャスティスマンに助けられたため強く言えず,そのまま流されて行為を受け止めていた」

「なんだこれ」

空を見ると,さっきの怪人がこの紙を町中にばらまいていた.

「あのくそ怪人.さっき見逃さないで倒しておけばよかった」

拾った紙を破り捨て,道中に落ちている紙も拾いながら会社に戻った.

会社に戻ると,ジャスティスマンの話題で持ちきりで,頭が痛くなったので早退をした.

テレビをつけてもジャスティスマンの話題ばかり.

「俺は何も悪いことはやっていないはずだ.むしろ良いことをやっていたはずだ.人助けもして,怪人も倒して,世の中に平和をもたらしていたはずだ」

なんで俺がこんな目に合わないといけないんだ.

なんで俺が………

ドクン 

「うっ」

ドクン

「苦しい」

ドクン

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

バタン

翌朝目が覚めると気分がよかった.

「昨日はひどい目にあったけど,今日は気分がいいな」

身支度を整え,会社に行く前に荷物を整理していると,ヒーロースーツの色が変わっていることに気が付いた.

「黄色から黒に変わっている…」

それを認識したとたん彼はまた苦しみだした.

ドクン

「う,また」

ドクン

「苦しい」

ドクン

「」

バタン

10分ほどで目が覚めた.

体を見るとなぜか,黒いヒーロースーツを着ていた.

脱ごうとしても脱げない.それにさっきから幻聴が聞こえる.

「このままでいいのか?世の中の平和のために戦い守っていた人が,お前を見下している.それでいいのか?」

「うっ」

「我慢することはない.今まで溜まっていたものをすべて解放し,世の中にお前の存在を知らしめるのだ」

「そうだ.このままいてももう戻れない.我慢することはないんだ」

チャキーン

「うおぉぉぉぉぉぉぉ」




ドカーン ドカーン

「怪人がまた現れました」

「助けてージャスティスマン」

シュタ

「ジャスティスマン!?」

「俺はインジャスティスマンだ.世の中の平和を乱すために生まれたヒーローだ」

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?