彼の地「だけなん」ビジネス情報   ~はじめに~

いきなりだが「だけなん情報」をご存じだろうか?
まずは、これを理解いただくことが、本書を読む上での私の言い逃れになるので説明させてもらう。
私は、サラリーマン時代に福岡県北九州市に2013年より4年ほど勤務し、間違いなくサラリーマン人生の絶頂期を迎えた。その北九州の方言で、「だから」を「だけ」、「なに?」を「なん?」と言う。つまり、「だけなん」とは「だからなに?」に当たる。ここから転じて、「だけなん情報」とは「どーでもいー情報」のことを言う。ただ、これはワカモノ言葉のようなので、オトナ社会、ましてもやビジネスシーンではほぼ聞かれない。
 つまり、本書は彼の地を知る上でのだけなん情報なので、本気でビジネスをしようと思う方は、きちんと裏を取ったり、調査をしなければならない。他方で、これが案外役に立つ場面も出てくるかもしれない。なぜなら彼の地でデータを取得するのは至難の業だからだ。


 彼の地との付き合いは20年前に遡る。
 海外駐在をしたいというだけで就職活動し(当時はそれで通用した良い時代)、入社した組織で、先進国に行けるとは思っていなかったものの、希望などもとより、想像だにしなかった彼の地赴任の命令。これでも大学時代は途上国各地を放浪し、かなり海外慣れし、好奇心も旺盛だった。それでも彼の地のことは1ミリ、いや1ミクロンとも考えたことがなかった。赴任命令が出た当時、沖縄勤務してまだ1年半だったので、「さ~、これから!」と気合入っていた矢先だったので、二重のガッカリ感が。

 前世紀の1999年の27歳での出来事。
 初めての海外勤務だったので、まあ仕方ないと思い、結局3年半駐在した。まだ20代で一人事務所をマネジメントすることや、当時50社程度しかいなかった日系企業の海千山千の社長・支店長と渡り合うことは非常に勉強になり、有意義であった。それでも、帰任する2002年8月16日のバンコク行きの飛行機は今でもよく覚えている。片道切符を持って離陸した瞬間に「ああ、もう2度と戻らなくても良いんだ~!」と感慨に耽り嬉しさと安堵で自然と涙が出た。


 15年経った2017年3月末。
 人事からの魔の電話。1週間ほど毎日のように電話が来ていたのを知っていたが、人事からの電話はロクな事はないと思い、運良く外出などで取れないことが多く、小倉の事務所に戻ると机の上にコールバックしてくださいのメモがずらり。居留守したりして全無視していたが、とうとう最後に捕まってしまった。
 最初の彼の地帰任から、様々な部署に異動し、異動するたびにいい加減、次はさすがに海外だろうと考えていた。そこに人事からの電話。
 「君の異動だけど海外だから」
 「どこでしょう?」と半分ワクワク、半分ドキドキ。
 「彼の地だよ」
 「はぁ~~???」。
 でも、待てよ。彼の地には所属組織の事務所で勤務するポストとJICA(国際協力機構)の専門家ポストというのがあった。後者だと、任期2年ポッキリ。しかもJICAは待遇がすこぶる良い。さらに、このポストは現地政府に入り込むから自分の組織、JICAの関与もいずれも薄いので自由に出来る。悪くないな。
 ということで、「どっちのポストですか?」
 「どっちってどういうこと?」と人事の不思議な質問。
 「いや、事務所かJICAさんか」
 そして、魔となった決定的な答え。
 「JICAのポストなくなったよ」。
 この瞬間にほぼ自分の今後の人生を決めたようなもんだが、サラリーマンとしてとりあえず2年は行こう、出稼ぎ気分で行こうと。


 ということで、本書はそんなモチベーションで期せずして2度目の彼の地駐在となった私の最後のご奉公の気持ちが籠った(?)奮闘記である。
 20年以上企業支援をしてきた組織で、企業目線で彼の地がどんな市場なのか、今後どうなって行くべきなのか、そして組織の人間としてどう立ち回ったか、などなどをツラツラと思いつくままに記していく。ただ、私は経済学、マーケティングなどまともに勉強したことがなく、自分の経験と多くの方々の知恵の上に乗っかってモノ申している。
 従って、本書をデータに基づくビジネス書・指南書と思ってめくるととちょっと微妙な気分になるであろう。あくまでも、極めて主観的な「だけなん情報」なのである。途中で枕にしていただいても構わない。ただ、枕には固いと思うようであれば彼の地でビジネスしていくのはちょっとシンドいかもしない。

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