映画作品のひとつひとつは昔からずっと繋がっているひとつの“何か”なんだ【バビロン】♯083
『ラ ラ ランド』『セッション』のデイミアン・チャゼル監督の新作です。
【ストーリー】
映画制作を夢見るメキシコ人のマニーは、
夜に開かれるパーティーの為に仕事をしている。
毎晩開かれる豪華なパーティー。
その主役はサイレント映画界のスーパースターのジャックだ。
ジャックの周りにはたくさんの取り巻きがやってくる。
そこにいた女優志望のネリーは特別な輝きで周囲を魅了。
マニーもネリーの魅力に取り憑かれる。
【解説というか、レビューというか】
映画が生まれてまもないサイレント映画時代の黎明期。
狂乱する映画の黒歴史を、グラマラスにコメディ化。
1920年代、この頃の映画は全て音声のない
サイレント映画だった。
ハリウッドはまだ荒野の地。
倫理的な規制がない無法地帯にいる映画人達の生活は、道徳が乱れ獣のように本能に従って生きていた。
贅沢の限りを尽くしたエンターテイメント界のキングオブキング、サイレント映画。
たが、黄金期はそう長くは続かなかった。
時代は急速にトーキー映画へと移行。
トーキー映画、それは音声付きの映画のことだ。
製作陣たちは録音技術に悩んだ。
役者は見た目のイメージと声のギャップに悩まされ、経験のない声の演技を求められるようになった。
トーキー映画に対応できなかった役者たちは
仕事が激減。
そういう役者たちは映画の生贄となってしまう。
実際の映画の歴史に沿って、
花火のように儚くちっていく映画人たちを描いている作品です。
面白いかどうかは置いておいて笑
映画が誕生してから110年以上が経った今、
映画に携わる人達は、みんなその歴史の一部分である
っていうテーマがもんの凄くいいのです。
映画制作を夢みている主人公のマニー(ディエゴ・カルバ)は
“長く、ずっと続くものの一部になりたい”
言います。
長く、ずっと続くもの、つまり
映画作品のひとつひとつは単体ではなくて、
100年以上前からずっと繋がっている
ひとつの何かなんだ
と、マニーを通してこの作品は言っている思います。
その何かとはなんなのか。
それはマニーが恋する相手、
ネリー(マーゴット・ロビー)になぞられるようです。
ネリーはマニーにとって手の届かないスター。
映画に心酔するものは、報われない“恋”をずっと
しているようなもの。
その恋に溺れた映画人は、自分の人生を犠牲に
映画に身を捧げてしまうのです。
ネリーは映画の化身のような人。
彼女に恋焦がれても、掴む事はできない。
強く求めるほど、どこか遠くへ離れいく。
ただ、その恋をたどった跡は、
映像としてずっと歴史の一部として残っていくのです。
映画に恋して繋げていく人の
ほんのつかの間の盛大なパーティ。
マニーとともに、映画への想いが湧き上がるクライマックスは涙ものです。
映画というひとつの枠の中で、
身も心も焼き尽くしてしまった人たち。
その歴史を詰め込んだ3時間。
この大きなテーマに辿り着いた時、
やっとこの映画がパヤパヤした映画じゃないことに 気が付きます。
【シネマメモ】
今回も昔の映画作品のオマージュが散りばめられた
作風。これってあの映画のあのシーンだよねって
思わせる、映画ファンには楽しみがいっぱい。
ゲ○噴射シーンは間違いなく『スタンドバイミー』笑
それにしても、
ジャズオーケストラが素晴らしくて
内容より音楽が勝っちゃったって感じ。
デイミアン(監督)のジャズに対する気持ちは
計り知れない。
✳︎合わせてみたい映画
マーゴット・ロビー演じるサイレント映画女優。
クララ・ボウという実在した人をモデルにしているそう。
クララ・ボウの作品はAmazonプライム・ビデオで
観られます。
『つばさ』
こちらの作品は、第1回アカデミー賞作品賞となった
作品。是非ご覧ください。
その他、
『モダンタイムス』
フェリーニの『8 1/2』
『ニューシネマパラダイス』
『アーティスト』
おすすめです。
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