ウォロフ語文法:現在形②
前回紹介したのは、ウォロフ語の「現在形」的表現でした。改めて付け加えておくと、前回のものは「完了形」のかたちで表現されるものです。それと対になる「未完了形」について、今回は説明していきたいと思います。
「未完了」とはどういうことかというと、動作や状況が現時点では完了していないことを意味します。誰それに会いに行こうとしている(まだ会っていない)状況や、何かを探している(まだ見つかっていない)という現在の状態のことです。おおまかなニュアンスは例文を見てご理解いただければと思います。
未完了を表す表現は、-y または di という標識によって示されます。単純に「イ」または「ディ」という音がついているかいないかだけの違いですが、表現される状況は異なります。この標識がつく場所は活用によっても、文の構造によっても微妙に変化するので、その特徴を以下で説明していきます。
前回のdafa活用、mu ngi活用、la活用を例にして見てみましょう。
dafa活用未完了形
いまから行う動作について、動詞を強調する文です。主語の人称の違いによって以下のように活用が変化します。二人称複数のみ、di という変化があることに注意しましょう。
例:Damay lekk ceeb jën(ダマイ レック チェブジェン):私は(これから)チェブジェンを食べます。
例:Dangay seeti Usmaan(ダンガイ セーティ ウスマン):あなたはウスマンに会いに行きます。
繰り返しになりますが、完了形のdafa活用との違いは、動作が完了しているか否かです。未完了であれば、いまその時点から動作が行われるという認識になります。実は未完了形でよく使われる動詞と、完了形でよく使われる動詞というのも微妙な区別がありますが、ややこしいのでここではスキップします。
また、未完了標識 -y は、目的代名詞とくっつくという文法規則があります。
例:Dama koy lekk(ダマ コイ レック):私は(これから)それを食べる
※目的代名詞は、ma(私に)、la(あなたに)、ko(彼/彼女に、それに)、ñu(私たちに)、leen(あなたたちに、彼/女らに、それらに)となります。
Mu ngi活用未完了形
「〜しつつある状態」や現在進行形で行われている動作や状態を指し、主語が強調されています。いま行っている動作の途中にあり、まだ完了していない場合に用いられます。
この活用でも未完了標識が目的代名詞の位置で変化します。
例:Maa ngiy seetaan tele(マンギィ セーターン テレ):私はテレビを観ています(観終わっていない)
例:Mu ngiy wuut caabi ji(ムンギィ ウートゥ チャービ ジ):彼は鍵を探しています(まだ見つかっていない)
同様の内容で、目的代名詞を使った場合。
例:Maa ngi koy seetaan tele(マンギ コイ セーターン テレ):私はそれを観ています
例:Mu ngi koy wuut(ムンギ コイ ウートゥ):彼はそれを探しています
la活用未完了形
目的語や補語を強調する文章の未完了形で、これも同様に動作や状態が完了していないことを意味します。活用形は以下の通りです。
例:Caabi ji laay wuut(チャービ ジ ライ ウートゥ):探しているのは鍵です(まだ見つかっていない)
例:Suba lanuy gisante(スバ ラヌイ ギサンテ):明日私たちは会います(まだ会っていない)
ここまで未完了標識(-y / di)について説明してきました。完了と未完了はウォロフ語表現の中でかなり頻出するものなので、その微妙な違いを覚えておきましょう。
単語表
caabi(j):鍵
ceeb(b):米
gisante:会う(字義通りに言えば、「お互いに見る」の意味)
jën(w):魚
lekk:食べる
seetaan:見る(英語のwatch)
seeti:会う(英語のsee)
suba:朝、明日
tele:テレビ
wuut:探す
(文責:池邉智基)
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