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【書評・感想】華氏451度 レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫 訳

【あらすじ】

本を読むこと、所有することが禁じられた近未来。本を所有しているとファイアマンと呼ばれる人が本を焼きにやってくる。

テレビを中心に新しい科学技術に魅力され、人々の思考力が低下している世界。
その世界の中でファイアマンとして働く主人公モンターグは、1人の少女との出会いをきっかけに、この世界に疑問を抱くようになる。そしてモンターグは、禁止された本に何かあるのではないかと興味を持ち始める。

本の所有を禁じられた、近未来を描いたディストピア小説です。
表現が難しいところなどありましたが、続きが気になり一気に読むことができた本です。

ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

ちなみに華氏451度(摂氏233度)は紙が自然発火する温度です。

【著者紹介】レイ・ブラッドベリ

アメリカ合衆国の小説家、詩人。

代表作・・・華氏451度、火星年代記

【印象に残ったポイント】

”常に謙虚な心を忘れずに”

無知を隠せば、だれにも攻撃されず、なにも学ばぬままだ。(華氏451度、レイ・ブラッドベリ)

この言葉を見たときに、”先生だって、できないのはあたりまえだ。できないのをできないというのに不思議があるもんか”という夏目漱石の坊ちゃんの一節を思い出しました。

恥ずかしがらずに、分からないことは分からないと言える謙虚さが大事だと感じました。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ということわざの通り、恥ずかしがらずに分からないことは聞いたり、調べたりすることが大切なんだと思います。

"与える人になる"

祖父が亡くなったときに、ふいに気がついたんだ。ぼくはおじいちゃんのために泣いてるんじゃない。おじいちゃんがしてくれたことのために泣いているんだとね。(華氏451度、レイ・ブラッドベリ)

大切な人に見返りを求めずに感謝を行動で示していこうと思わせてくれた言葉でした。
仕事でもプライベートでも自分から能動的に行動していくことの大切さを感じました。(結構難しいですけど…)

【本全体の感想】


この本は、今の世の中にも当てはまると感じました。
科学技術が発展し便利な世の中になる一方で、何か大切なものが失われているのかもしれません。
人々からは思いやりの心が消え、相手が間違っていると思えば完膚なきまでに相手を叩く。当事者どうしで解決すれば済む話でも大きく取り上げることで、大問題に発展し、当事者は生き場所を失う。
人々への救いのない情報社会。
一度した誤ちや、病気などで本人の意志とは関係ない醜態がネットに晒され、獣のような欲望の笑いの対象となる。自分に関係ない人々に対して、諸手をあげて容赦なく鉄槌をくだす。明日は我が身とも知らずに。
科学技術の発展は、暮らしを豊かにする一方で、様々な弊害を生み出した。人本来の欲望をこれでもかというほど掻き立てた。そして、今後も欲望を掻き立てられるのだろう。
このような世界の中で、鳥が飛んでいる、木の匂いが心地よいなど自然の中に楽しみを見出すことの大切さを感じました。自然への関わりは、人を穏やかな気持ちにさせてくれるのかもしれません。
また、自ら学ぶことや考えることの大切さを感じました。

この本は、とても考えさせられますし、内容も面白いのでぜひ読んでみてください。


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