「お・も・て・無・し」にならないために

ネガティブな記事です。

ブログは本来ポジティブなものであるべきで、そういう意味では今回のようなネガティブな記事はよくないんですが、でも、たとえば「戦争反対」がそうであるように、ネガティブなこと/悪いことについてのネガティブは実はポジティブである、という原則にのっとり書いてみます。

今、外国から日本に入国する人(日本人・外国人問わず)は、ほとんどの場合、
1.日本入国時にPCR検査を受け、
2.その結果が陰性である必要があり、かつ
3.2週間の自主隔離が求められます。

僕、最初は読み間違えかと思ったんですが、どうやらこれ本当のようで、PCR検査が陰性でも2週間自主隔離しないといけないようです。

PCR検査が陰性なのだとしたら、その隔離は一体何を防止するためのものなのか?とか、
検査結果が陰性でも隔離が必要なら、じゃあその検査は何を調べるためのものなの?というツッコミがすぐに思い付きますが、それはちょっと脇に置いておきます。

ーーー

このルール、世界のほとんどの地域からの入国者が対象です。
例えば、あいうえお順でかなり上位に来る(関係無いか)アイスランドから日本に入国する人にもあてはまります。

みなさん、アイスランドにおけるコロナの状況、今どんな感じかご存じですか?知らないですよね(笑)。
先日、ヒマだったのでちょっと調べてみたんですが、アイスランドでは、コロナが始まって以来の累計の国内感染者数が11人でした。
一日の、ではなく、今までの累計の、全感染者数が11人です。 ま、人口少ないんですけどね(笑)。

ちょうどその同時期、我らが日本では「東京だけで + 一日だけで → 300人」の感染者を出していました。

ーーー

「PCR検査の結果が陰性でも2週間自主隔離」というルールがあるため、今どきアイスランドから日本に来るアイスランド人はゼロでしょうが、仮にそういう奇特な人がいたとして、その人、果たしてどう思うでしょうか。

首都だけで一日に300人の感染者を出している国が、
コロナ始まって以来の累計感染者数がたった11人のアイスランドに対し、
「入国時にPCR検査を受けろ。そして、結果が陰性でも二週間自主隔離しろ」って、、、

お前が言うな(笑)

と思うでしょう、きっと。
ことばは悪いですが、「どのツラさげて・・・」と言いますか、何を言ってるの?という感じがするでしょう。

ーーー

2週間の自主隔離。
日本に家や実家のある一時帰国者(海外に住む日本人)であればなんとか対応出来るかもしれませんが、外国人のビジネス旅行者や観光客は到底太刀打ち出来ません。つまり、このルールを課すことは、実質的に「日本に来るな」と言っているのと一緒なんです。
この前まであんなに歓迎ムードだったのに。

ーーー

ここで、ちょっと冷静に考えてみます。
今、こういう時期・状況の中、日本ははたして積極的に外国人を受け入れるべきなのか。
確かにそうではないかもしれません。
それどころではない、と言えば確かにそうです。

でも、ここがコロナの恐いところだと思うんですが、「それどころではない」という括りで括っちゃうと、人生の/世の中のほとんどがそれにあてはまっちゃうんですよね。

家で食事できるのに、外食する必要ある?
その旅行、どうしても行く必要ある?
美術館に行く必要ある?絵を観るのって本当に必要?
ブルーノート東京でJazz聴く必要ある?ストリーミングで十分じゃない?
会社行く必要ある?家で働けばいいじゃん。
学校行く必要ある?遠隔ラーニングでいいじゃん。
そのバッグ、本当に必要?今持ってるやつをもう少し長く使えない?
友達と会って、楽しく会話したりお酒を飲んだり必要ある?一人で過ごすか、あるいはWeb飲みすればいいじゃん。
コロナで自分自身の将来が不安なのに、難病の子供たちの家族とか、交通遺児を支援する必要ある?

いや、そう言われるとそうなんですけどね。。。。。全部、言ってみれば不要不急です。
でも、それが人生なんじゃないかな、と思うのが一つと、あと、「それどころではない」ということであらゆることを切り捨てていくと、結局経済が止まります。

だから、「今はそれどころではない」というのは確かに一理あるんだけれども、それを言い続けていると大変なことになる、とても危険なことばだと思います。

今回の記事のテーマである「外国からの入国者」という切り口に話を戻すと、
・日本に多くの外国人に来てもらい、日本の良さを知ってもらう (これ、ちょっと前まで日本の国策でした)
・外国人に国内で旅行・飲食・ショッピングをしてもらい、経済を浮揚してもらう (これ、コロナ時代の今こそ求められてることでは)
というプラスの効果とのバランスで考えるべきだと思うんです。

じゃあ、リスクとメリットをバランス良く勘案した「いいルール」とはどういうものか。
例えばですけど、
コロナ患者が続出している国・地域からの入国者はガチガチに制限(っていうか、禁止)する一方、
日本よりもはるかに安全で、コロナの封じ込めに成功している国・地域からのビジネス客・観光客は柔軟に受け入れる、
とか、そういうことです。考えてみれば当たり前のことです。

ーーー

じゃあ仮にこの「PCR陰性でも二週間自主隔離」というルールが緩和されて、↑に書いたような、より現実的・リーズナブル・まともなルールに代わったとして、はたしてそれで外国人がバンバン来るようになるかというと、それはならないでしょう。ルールがゆるゆるでも、今あまり日本には来ないでしょう。でも「じゃあいいじゃん、今のルールのままで」っていうことではないんです。

姿勢の問題だと思うんですよ。日本は、外国人の受け入れについてどう考えているのか、という。
ちょっと前は「おもてなし」とか言って大盛り上がりだった。
その後、確かにコロナによって状況は変わった。でも、もし日本が本当におもてなしの精神に基づいて外国人を歓迎する、そういう国なのであれば、つまりあれがオリンピックを招致するためのいっときのウソではなかったのであれば、、、だとしたら、その精神は今も変わっていないはずですよね。
状況の変化に応じた微修正はもちろん必要だけれども、根底にある考え方は不変で然るべき。
で、ある国の「外国人受入についての考え方」が一番如実に出ちゃうのが、出入国に関するルールにおいて、です。

だから、外国からの人の受け入れについてのルールを策定する際は、「今はそれどころではない」なんて言ってないで、そしてその結果外国人が来る/来ないに関係無く、ちゃんと考えられた、おもてなしの精神に基づくマトモなルールを設定するべきなんです。

ーーー

ちょっと視点を変えて、一体なんでこんなことになるのか。なんでこんなおかしなルールが存在するのか、について考えてみます。

恐らくですが、法務省(?)だか厚生労働省(?)だか入国管理局(?)だかが、「とにかく絶対に叩かれない/怒られないようにしよう」ということで、ガッチガチに厳しくしたという、それだけの話なのではないかと推測します。アイスランドからの入国者って、都内を歩き回っている日本人と比べ、どの程度危険なんだっけ?という、本来やらないといけない精査は完全にすっとばしたんだろうと思います。おもてなしの国なのに(笑)。

つまり、今の時期にもしどこかの国からの入国者がクラスター(?)を生じさせ、それを受けて世間様やメディアに「なんでそんなヤツを入国させたんだ!」と叩かれたら困るので、とにかくリスクをゼロにするため、およそおもてなしとはかけなはれたルールになっているんだと思います。

ーーー

このブログ記事で何度か「おもてなし」を引き合いに出しています。あ、タイトルもそれをもじったものになっていますね。
これは、決して「おもてなし」を揶揄したいのではなく、むしろその逆。おもてなしの精神で外国人や外国の文化を受け入れ、日本の良さを見せつけてやってほしいから、だからこそ繰り返し引き合いに出しています。


ある国が
・真におもてなしを重視する素晴らしい国なのか、
・何らかの狙いがあって、口先だけで「お・も・て・な・し」と言っているのか、
は、その国が外国人の自国への入国にどのようなルールを課しているか、を見れば一目瞭然です。

早く、いまの
「アイスランド人であっても、そしてPCR検査が陰性でも、公共交通機関を使わず自力で隔離場所にたどり着き、そして二週間そこで隔離せよ」
という理不尽かつ思考停止なルールが是正され、おもてなしの国である日本らしい、バランスの取れたルールに置き換わることを期待します。