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業界インタビュー3 家事代行サービスの仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第3弾。今回は家事代行サービスの話でした。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!

家事代行サービスって何?

今回お話を聞いたのは「主婦がやる日常的な家事を、あなたの代わりにやります」というサービス。炊事、掃除、洗濯など、まさに家事代行。高圧洗浄機で排水溝をきれいにしたり、エアコンの内部を洗浄したり、といった専門的なサービスではない。ベビーシッターとも違うので赤ちゃんの子守とかもしない。換気扇の掃除とかは、年末の大掃除レベルならやってくれるけど、専門業者の使う専用薬剤とかはないので、その辺は使い分けが大事。

料理の場合は、カレーを食べたい、焼きそばがいい、などの要望があったり、冷蔵庫の中身を使って今日と明日のごはんを作って、とかだったり、食材の買い出しから頼まれることもあるそうです。3時間で15品作って、と言われてみっちり作り上げたこともあるとか。

掃除の場合は、掃除機がけ、ぞうきんがけ、カーテンレールサッシから始まり、トイレ、お風呂、洗面所、床、窓、壁の巾木の部分まで、なんでもやります。時間の限り掃除します。

料金は時間制で、3時間で1万円くらい、という相場らしいです。

客層は?

20~30代の若い家庭から80代の高齢者までいろいろ。やはり65歳以上が多いらしい。80代になると身体が自由に動かないので、介護と家事代行サービスを併用している人も多いとか。

コロナでお客さんは増えたらしい。富裕層がリモートワークするようになって、家にいる時間が増えたから家事がまわらなくなってサービスを利用するケースが増えている様子。若い人の場合、お子さんの子育てで手いっぱいになって、家事まで手が回らなくなった、というケースも。

とにかく、生活費とは別にこうしたサービスにお金を払う余裕のある家庭なので、基本的にどこも富裕層の豪邸らしい。部屋の数も多いから掃除も大変。それをきっちり全部掃除するのが仕事なんだとか。

もちろん時間内に終わりそうにないときは、時間延長を打診したり、次の掃除のときに回したり、ある程度妥協してもらったりする。時間制のサービスだから、どれだけ頑張るかは本人次第な気もするけれど、そこは日本人なのでできる限りきれいにしてあげたいらしく、めいいっぱい頑張って要望に応えていくらしい。

どんな人が働いているの?

働いてる人はほとんどが主婦。30~60歳で、家でも家事をやっている人が、もうちょっと研修を受けて仕事に行く。ほとんどがパートさんだけど、みんな長く働いていて、10年以上続けている人もけっこういる。長い人はエネルギッシュなおばちゃん、おばあちゃんが多いとか。

お客さんもほとんどが固定客なので、週1回とか、週3回とか、自分の担当するところに定期的に通う形になる。時間帯や場所がお客さんの都合で決まるので、長時間働いて稼ぐのが難しい。自分の空き時間とお客さんの要望がうまくフィットするとは限らないので、がんばっても1日3時間、週15時間くらいのパートタイム労働になり、時間の余っている主婦の小銭稼ぎみたいな感じになりやすいのかもしれない。

一番大変なことは何か?

仕事内容は家事全般となっているけど、実質はお客様の心のケアがメインになっている。お客様の話を聞く、我がままをきく、機嫌をとる、要望をくみとる、その上で作業をする。このケアが十分できていないと、毎日同じ料理を作っていても「今日は全然ダメだ」と全否定されたりする。お客様の理解が得られないと担当を変えられてしまい、時給がなくなる。

ご主人と奥様の要望違って、事前に聞いていた内容と違うことを現場で言われたりする。お客様は我がままなので、それをひたすら解決する。毎日が修羅場。

若い人は、サービスをお願いしている、という感覚なので、仕事をするとありがとうと言ってくれる対等な立場が多いが、団塊の世代やそれ以上の場合は人を使うのが当たり前なので、雇用主と雇われの上下関係がしっかりしている。まさにドラマに出てくる家政婦のような感じ。

結局、お金持ちの富裕層が求めているものは、洗濯して買い物してご飯を作って話を聞いてくれる、昭和の嫁。ごく普通の日常を、大金払って手に入れようとしている。

でも、そこに価値を感じてちゃんとお金を払ってくれているだけ、団塊の世代でもマシな方だ、とのこと。確かにお金も払わずに、飲食店などで神様扱いを求めるお客様に比べれば、さすが富裕層といったところか。

そんな老害のケアは切り捨てて、若い人だけを相手に商売したら幸せになれるんじゃないか、とも思いますが。都心には若い人向けの専門の会社もあるけれど、やっぱり若い人は基本的に経済力がなく、年配の方へのサービスをしないと数をこなせないらしい。悲しいね。

改善したい課題は何か?

時給をあげてほしい(即答)。パートさんなので、お客様が支払っている料金と比べて、だいぶ中抜きされているようです。お疲れ様です。

あとは、家事代行ということなので、基本的にお客様の持っている道具を使って家事をするわけですが、あんまり道具が揃っていない場合も多い。

切れない包丁、剥けないピーラー、ふきんは一枚しかない、味噌がない、塩コショウが混ざったステーキ用のしかない、みたいな環境で料理をガンガン作るのは大変。掃除機も充電がすぐ切れる、クイックルワイパーのシートしかない(棒がない)、など家庭によっていろいろ。

会社から、お客様に備品の補充など要望は出すそうですが、お客様はそれで困っていない、これで家事代行してくれ、と言われることも多いとか。会社の方である程度の備品を支給して欲しいと言っていました。

そうですよね。リアリティのある課題すぎて、何も言えませんでした。そんな感じの家事代行サービスのお話でした。また自分の知らない世界が見えた気がします。

さて、実際のお客様はどんな豪邸に住んでいるのかをおまけパートで書いてみたいと思います。

おまけ:家事代行を頼む豪邸とは?

ちょっと庶民の私には縁がなさすぎてピンとこないですが、そんな裕福な豪邸ってどんな感じなんでしょうか。

特に大きな家で印象に残っているのは、5LLDDKKSSの豪邸だとか。部屋が多すぎてよく分かりませんが、それも全部掃除するらしい。二世帯住宅なのかな。

どんなご家庭でも、専用の書斎や仏間があるのは当然で、ALSOKのホームセキュリティもみんなつけてる。浄水器も専用のものを使っているご家庭が大半だとか。まぁ言われてみれば、まずはそういう設備まわりへの投資を最初にして、それでもまだ余裕があるから家事代行サービスを頼むわけだよな。

一軒家だけでなくマンションの場合もある。UR賃貸のお客様もいたらしい。UR賃貸って安いアパートって印象しかなかったけど、都心だと普通に家賃が20万円/月を超えるような高級物件もあるんですね。だからあんなにテレビCMできるのか。金あるんだな。

富裕層の方々は当然忙しいので、留守宅にお邪魔して仕事をすることも多いそうです。その場合、お客様の家の鍵をお預かりして、留守中に訪問するわけですよ。悪いことし放題じゃないですか。と思ったら、やっぱり豪邸なので監視カメラとかついてるし、警備はかなりしっかりしているらしい。

また、鍵を預けるからこそ、お客様はそれなりに信用のできる会社に依頼したいし、そういうお客様から仕事を取ってくるのが会社の役割でもあるから、料金は高くてたくさん中抜きされてしまうんですね。個人では、そもそもそんな富裕層からの案件を取ってこれないですからね。

地域的には、やはり都心、23区内などが多いですが、多摩地区などでも普通にいっぱい豪邸はあるようです。どんな場所にも昔ながらの地主さんとかいらっしゃいますからね。

でも、そういう庶民とはかけ離れた暮らしを垣間見られるのはいいですね。ほこりひとつない廊下をはいつくばって雑巾がけしている傍で奥様が新調したグランド・ピアノをひいてらっしゃるとか、食器洗いかごの下にブランドもののタオルを惜しげもなく敷くとか、そういうセレブな生活があなたの身近にもあるかもしれません。

ちょっと守秘義務が多くてあんまり書けませんでしたが、そんな感じです。ありがとうございました。

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