なかそね
ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか』
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ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか』

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今回新しく読み始めた本は、ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか』です。私たちは常に平等にフラットにものごとを判断しようと思いますが、それでも無意識のうちにバイアスのかかったものの見方をしてしまうものです。

この筆者はアメリカの黒人女性のようで、特に人種に関するバイアスについて研究しているようです。日本にいると、日常的に他の人種と出会うことが少ないので人種差別はあまり身近に感じないですが、たぶんアメリカ以上に排他的で人種差別的なバイアスを抱えているんだろうな、と思います。

今回は「 I 私たちの目に映るもの」の内容を紹介します。

仲間を見分ける力

差別的な思考をする人は、倫理観が足りないなど、精神的な影響が強いのではないかと考えられますが、本書では、もっと根源的な脳科学的な側面から考察されています。

筆者の息子は、差別的な思想を与えないよう大切に育てられてきたにも関わらず、5歳のとき、飛行機に乗り合わせた黒人男性を見て「あの人、飛行機を襲わないといいね」と無邪気に語ったそうです。5歳まで白人社会の中で育つと、自然と、黒人男性が危険だというバイアスを獲得してしまうのだそうです。自分だって黒人の男の子なのに。

私たちは仲間の顔をしっかり見分けられるけれど、仲間ではない人の顔はなかなか覚えられません。黒人女性である筆者は、12歳のとき、白人の学校に転校して温かく迎え入れてもらえたけれど、白人の友達の顔が全く見分けられず、すごく困ったそうです。私も、アイドルグループの女性や、ジャニーズのイケメンたちがみんな同じ顔に見えて見分けられません。仲間だと思えないんだと思います。

仲間の顔であれば細かな違いを見分けようと意識が働きますが、仲間でなければ大雑把に「黒人」「アイドル」などと脳内でグルーピングして、それ以上注意を払わなくなってしまいます。その結果、「黒人は危険」「最近の若者はダメだ」など大雑把な認識しか持てなくなります。これがバイアスの元になります。

他人からどう見られているか

私たちが何を仲間と考えるか、何を重要と感じて興味を持って観察するか、当然自分の趣味嗜好は影響しますが、それ以上に他人の目が大きく影響するそうです。

他人からダメ人間のレッテルを貼られて、そのように接せられたら、自分でも知らず知らずのうちに自分のことをダメだと思ってしまいます。毒親が子供に向かって「あんたはバカね」と言ったら、子どもは自分がバカだという前提で行動するようになる、という話もあります。

我々はたいていの場合、見てから定義するのではなく、定義してから見る、のだそうです。客観的に物事を判断するのではなく、ステレオタイプに従って無意識のバイアスがかかったレンズを通してものごとを見るのです。それが一番、負荷が少なく世の中の事象を処理できるから。脳が楽をするためにそうしているんです。

そして、このステレオタイプは親から子へと受け継がれていきます。親は子どもに時間や愛情や資源を分け与えると同時に、頭の中で抱えているバイアスをも共有しているのです。言ってみれば、そうしたバイアスこそがブルデューの言う「ハビトゥス」なわけです。

バイアスは変えられる

産婦人科の看護師が赤ちゃんの顔を見分ける能力が高いように、その人の意識や環境に応じて、脳は変化します。実際に脳をMRIなどで観察すると、数年のうちに脳の形状が変化していることが分かったそうです。タクシー運転手なら空間を把握するための脳領域が拡大する、といった変化が見られたそうです。

だから、諦めてはいけません。大切なのは、私たちがバイアスを抱えて、歪んだレンズで世界を見ているのだということを認識すること。まずそこから始めていきましょう。

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