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People Powerd 遠くへ行きたければ、みんなで行け

最近、読みたい本が急に増えて、いろんな本が中途半端に止まっていますが、また新しい本を読み始めました。

これはコミュニティマネジメントの本です。この前読んだ「コミュニティ・オブ・プラクティス」と根っこは同じだと思いますが、本書は実践コミュニティを運用していくうえでの課題とか気を付けるポイントなどが解説されているようです。実践コミュニティの実践編ですね。

ということで、本書をただ読むのではなく、自分でも実践コミュニティを運用するとしたらどういうところでつまづきそうか、気になるポイントなどをまとめながら読んでいこうと思います。

とりあえず第一章だけ読んだので、その感想をまとめていきます。

本書におけるコミュニティとは

コミュニティは基本的には、共通の関心事によって結ばれた人々のグループだ。火曜日の夜にコーヒーショップで集まる地元の読書会のような小規模なものから、世界中に広がる何百万人ものユーザーからなるグローバルなコミュニティまで、さまざまな形態がある。オンラインでも、対面でも、あるいはその両方が混在しているものもある。メンバーや規約、管理がしっかりしているものもあれば、緩く場当たり的なものもある。

P45

コミュニティの成功事例はすべて、人びとがコミュニティの新参者として、何かを貢献するのに役立つものにアクセスすることから始まる。それはツールかもしれないし、二次創作の許可やガイダンスかもしれない。なにかの貢献とは、質問への解答やコンテンツの制作、知見の共有、ソフトウェアの生産など、数え切れないほど多様なやり方がある。コミュニティが成功するためには、シンプルでかんたんに利用できて直感的なアクセス方法が不可欠だ。それがその後のすべてについてのゲートウェイになる。

P48

この本をあなたが読んで、いっしょに成功するコミュニティ構築の各種要素を検討する中で、常にこの3つの要素に注目しよう。
1. 参加者が貢献しやすく、価値を生み出せるようにするにはどうすればいい?
2. 彼らがその貢献を何度も何度も繰り返し、ソーシャル・キャピタルを貯めるにはどうすればいい?
3. 「自分は歓迎されている」「コミュニティの一部だ」という帰属意識を、どう築いていけばいい?

P51

ここで議論されているコミュニティは、やはり「コミュニティ・オブ・プラクティス」のなかにあった「実践コミュニティ」とかなり近い概念だと思います。

コミュニティ・オブ・プラクティスでは、いろんな良い事例、悪い事例などを学びましたが、実際にどのようにコミュニティを立ち上げて運営していけばいいのか、そのノウハウ的なものはあまり書かれていませんでした。ということで実践編となる本書、とても楽しみです。

問い:大企業と実践コミュニティは両立するか

当時のソフトウェア開発はとても閉鎖的な世界だった。IBM、Apple、Microsoftなどの大企業がソフトウェアを生産し、そのソースコードをカーネル・サンダースでも嫉妬するほど慎重に秘密にしていた。みんながそういう世界を当たり前だと思っている中で、リチャード・ストールマンが「自分のプリンタに付属するソフトウェアを修正できない(なぜならソースコードが非公開だから)」ことに激怒して、「すべてのソフトウェアのソースコードは、人々が改善できるよう自由であるべきだ」と主張し始めた。

P37

ここからオープンソースのソフトウェア開発とかが始まった、という話につながっていきますが、ではオープンソースが世界を席巻したかというとそうではなく、今でもIBM、Apple、Microsoftなどは自社内でクローズドな開発をしながら世界に名だたるIT企業として君臨している気がします。

コミュニティがすごいのは確かですが、いろいろな代償もあります。プログラミングに関してはかなりオープン化が進んでいますが、たとえば製造業のモノづくりみたいな技術や特許が支配的な業界において、同じようなオープンコミュニティが本当に機能するのでしょうか。

製造業でもオープンイノベーションが大事だ、ということが最近では叫ばれています。しかし匠の技みたいなのが求められる業界では、プログラマーがIT土方と呼ばれるような世界とは違って、熟練の技術者が山ほどいるわけではありません。実践コミュニティを立ち上げるより、クローズドで開発を続けた方がいいのではないか、という気もしてきます。

実際に、多くの企業は自社の技術をなるべく秘匿したまま、うわべだけの交流をしてオープンイノベーションがうまく進まないことに苦慮しています。まあ囚人のジレンマみたいなものかもしれません。裏切りを心配するあまりに、両社が損をする選択を選ぶのが合理的になっているのかもしれません。

問い:採用人事はコミュニティマネージメントか

コミュニティ戦略は
・参加者を定義し = あらゆる参加者に効率的かつ効果的にサービスを提供する方法を理解し
・参加者の成功を支援するための適切なツールを提供し = 参加者をよりよくサポートし
・参加者からのフィードバックをまとめて製品を改善するための構造化された方法を提供し = 参加者のフラストレーションや離脱のリスクを減らす
ことができる。

P44

これは流動的なコミュニティにおいて、いかに人を定着させるか、という観点で書かれていますが、全く同じことが企業における採用活動にも当てはまる気がしました。

昔は終身雇用が強かったので、一度就職してしまえばあとは身内みたいな感じでしたが、今は転職がかなりしやすい時代なので、新卒採用したからといって社員が定着してくれるかは分かりません。新入社員に会社での働き甲斐を感じてもらうためには、大企業においても新入社員の役割などを明示する必要があります。

しかし大企業では「上意下達で指示された通りの行動をすればよい」という認識が根強く残っていて、少し自分の意にそぐわないからといって辞めていく新入社員がひどく軟弱な存在に見えてしまいます。

就活が買い手市場になり、学生に選んでもらう立場だ、新入社員に働いていただく立場だ、という時代の変化を認識するのは、大企業のおじさんたちにはとても難しいことだと思いました。。。

問い:意味は与えられるものか、湧き上がるものか

自分の仕事には意味が不可欠だ。とても成功しているコミュニティは明らかに、各メンバーの仕事とコミュニティ全体の広い使命との間に明確なつながりを持たせることができている。

P49

本書では、いかに仕事の大義や価値を設定して、コミュニティメンバーの意味を感じてもらうか、有意義に活動してもらうか、というポイントに注力しています。

一方、世の中の自己啓発本を読んでいくと、そもそも自分の働く目的とか人生の意味のようなものは、そうやって与えられた外的指標に依存するのではなく、もっと内から湧き上がってくるべきもののようにも思います。

もちろん意味を見出せない凡人からしてみれば、自分でも貢献できる大義を与えてくれるコミュニティはかけがえのない存在ですが、本当にそれでいいのでしょうか。まぁ、卵が先か鶏が先か、みたいな話ですけど、本来は自分の大義があって、それがコミュニティの大義と合致するから協業する、みたいなのが理想的だと思います。

やはり最近の人々は、世の中が豊かになりすぎて、自らの大義なんて掲げなくてもぼんやりと生きていけるから、昔の人に比べてぼんやりした存在になってしまっているのでしょうか。

なんてことを思ったり思わなかったりしました。

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