健康について

健康の定義

WHO憲章では、以下のように健康が定義されています。

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

つまり、肉体的、精神的、社会的という3つの健康が必要ということです。一般的に考えられている健康は、この中の「肉体的健康」だけで、残りの2つは一体なんなのでしょうか?

健康の三本柱

肉体的健康:病気ではない、怪我をしていないなど、一般的に考えられている「健康」
精神的健康:鬱ではない、ストレスが少ないなど???
社会的健康:社会的な地位がある、友達がたくさんいるなど???

精神的健康=認知

私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けています。これは、通常は適応的に行われているのですが、強いストレスを受けている時やうつ状態に陥っている時など、特別な状況下ではそうした認知に歪みが生じてきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が強まり、さらに認知の歪みが引き起こされるようになります。

正しい認知を持つことで、考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態を作ることが、精神的健康といえるのではないでしょうか。正しい認知を持つためには、まず自分の姿を鏡で見るように客観的に認識することが第一歩です。

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(※認知行動療法センターより)

社会的健康=群れ

人間は一人では生きていけないので群れを形成します。群れの人数によって関係性が変わってきますが、こうした様々な階層の群れに所属することで安定した生活ができるようになります。不適切な群れにいたり、群れの中で適切なポジションが得られないと、社会的に不健康になってしまいます。

最も近しい5人の集団が、悲しみを分かち合い、未来を共にして、精神を健全に保つ。
15人程度の小さな集団が社会的支援の基盤、いざというとき無条件で駆けつけてくれる人々。
50人程度の集団は、一緒に暮らして外敵から身を守り、互助的な関係を結ぶ人々。
150人がダンバー数と呼ばれ、顔と名前を把握できる限界と言われている。離れた場所に住む仲間と情報交換したり、リスク分散する共同体の仲間。
150人より外側は知り合い、顔見知り程度の人々で、環境上のリスクを分散する効果がある。

人間は一人では生きていけないので群れを形成する。群れの中で社会的毛づくろいをして絆を深めることでストレスを解消する。群れの中で仲間と適切な関係を築き、社会的毛づくろいができないと、社会的不健康になる。社会的毛づくろいとして行われることは、直接接触だけでなく、食事、笑い(会話)、音楽(踊り)、物語(宗教)などがある。

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現代人の健康

現代人の悩みを見てみると、ほとんどが精神的、社会的な不健康に由来すると思います。自分の認知が歪んでいて呪われている、自分に適さない群れに所属していて疲弊している、といったケースがとても多いです。

でも、よくよく見てみると、その背後で肉体的健康がおろそかになっているケースは非常に多いです。しっかりした睡眠をとる、一日三食きちんと食べる、適度な運動をする、といったことをきちんとできている人が、果たしてどれだけいるでしょうか。

認知や群れを矯正するのは大変です。それなりの負荷がかかります。まずは、その負荷に耐えられるだけの肉体的健康をしっかり確保することも重要ではないかと考えられます。

肉体的健康のために ~ 運動

厚生労働省『健康づくりのための身体活動基準2013』
身体活動に取り組むことは、メンタルヘルス不調の一次予防としても有効である。世界の全死亡数の9.4%は身体活動不足が原因で、その影響の大きさは肥満や喫煙に匹敵。身体活動に関する目標項目は「日常生活における歩数の増加」「運動習慣者の割合の増加」「住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体数の増加」の3点である。日常の身体活動量を少しでも増やすこと。例えば今より毎日10分長く歩くようにする。1日1時間以上の歩行が望ましい。運動習慣を持つようにすること。例えば30分以上の運動を週2日以上行う。

誰もが肉体的健康は大事と分かっているし、対策も知っているのに、おろそかにされがち。風邪を引かなければいい、怪我をしなければいい、という健康水準はとても低い。肉体的健康を損なうと、まず精神がやられる。メンタル不調の大きな要因の一つ。毎日続けられることが大事。一時的に頑張っても続かなければ意味がない。散歩が一番お手軽でよい。

肉体的健康のために ~ 睡眠

厚生労働省『健康づくりのための睡眠指針2014』より
良い睡眠で、からだもこころも健康に。適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を(6~8時間)。眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

睡眠ホルモンのメラトニンを生成するには14~16時間かかるので、朝食で睡眠ホルモンに必要な栄養素(タンパク質、ビタミン、ミネラル)をしっかり摂ることが重要。スッキリした目覚めのためには副腎から分泌される覚醒物質コルチゾールが重要。ストレス、睡眠不足、冷えによって副腎疲労が起こると、睡眠のパフォーマンスが落ちる。

平日と休日の睡眠時間帯がずれると、社会的ジェットラグという時差ボケになってしまう。年齢にもよるが、2時間以上ずれると抑うつが有意に高くなるとの報告がある。このずれを元に戻すには1~2週間かかる。毎日規則正しく同じ時間に寝起きするのが重要。

肉体的健康のために ~ 食事

厚生労働省『食生活指針(2016)』より
一番大切なことは「食事を楽しみましょう」。
1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。朝食をしっかりとる。朝食の欠食が増加しているが、肥満や高血圧などのリスクが高まる。夜食や間食はとりすぎない。飲酒もほどほどに。
主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。ごはんなどの穀類をしっかりと。タンパク質の摂取量も減少傾向にあり、しっかり摂りましょう。野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。カリウム、食物繊維、ビタミン、カルシウムをしっかり摂りましょう。食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。

朝食にタンパク質をしっかり取ることを最低限勧めたい。ヨーグルト、卵、納豆など。タバコ、カフェイン等の刺激物を控えるのも勧めたい。

参考文献


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