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伊予柑日記 サポート労働について

(※これは2020年10月のログです)

ケア労働の話

ケア労働というのは、家事、介護、子育てなどの労働です。一般的に女性の社会進出に伴い、こうした「価値が測りにくいが絶対に必要な仕事」としてのケア労働に課題認識がもたれてきました。男性はケア労働を女性に押しつけることで社会で活躍し、それがゆえに女性の社会進出が抑えられる構造が再生産されてしまうとか、そういうかんじです。

さて、難しいことは置いておいて、「ケア労働」というのはどんなコミュニティでも常に発生します。slackにおいてもそうですし、会社のなかでも上司の仕事というのは部下のメンタルケアだったりします。ケア労働の概念を拡張して「だれかが生産性を発揮するのに必要な、価値の計りにくい仕事全般」を「サポート労働」と呼ぶことにしましょう。この定義では鍼もサポート労働です。サポート労働というのは、誰かの健康のために必要です。

身の回りのサポート労働

通常の労働に加えて、「サポート労働」の価値をもうちょっと考えてみてみるのがいいんじゃないのか、とおもっています。たとえば「誰かの話を聞き、鏡になって呪いを解く」というのはサポート労働です。その人を健康にして、活躍しやすくなります。この価値は、今後もっと見いだされていくとおもいます。

たとえば、サッカーチームは歯医者を雇っているところがあるそうです。誰かとぶつかって歯を痛めたり、歯のかみ合わせが力に直結したりするからです。それ以外にも鍼灸師や、コーチなど、選手を活躍させるためのあらゆる専門家をサポート労働として雇用しています。かつて炭鉱においては「スカブラ」という職業が存在したそうです。

伊予柑が会社でやっているゲームプロジェクトでは「イラストやシナリオなどの納品物を受け取って一次チェックをして褒める専用のひと」を遠隔で雇用しています。この一次チェックはわりと高度な仕事で、ゲームやイラストなどの幅広い知識が必要です。クリエイターのメンタルケアも含まれています。「一線級で活躍できる実力はないが経験値が多くて全部70点取れるタイプ、しかも人格が安定していて本業が暇な人」にバイトとしておねがいしています。この人が居ないと、成果物チェックが全部伊予柑になってしまって死にます。

おそらく、サポート労働を単一の仕事にすると介護職のようにブラック化するでしょう。これで食えるかどうかはわからないのですが、オンラインで副業としてやるには、向いているひともいるのではないかなとおもいます。
・呪いを解く
・健康になる
・妖怪を保護する
といったサロン活動の延長線上にそういうのがあるなーとおもったのでした。

このサポート労働が、すごく重要なのに誰もそれを可視化できてなくて、価値が測定できていないのが問題だな、って話してました。作家に対しては編集者、アイドルに対してはマネージャー、企業経営者に対してコンサルタントなどがサポート労働になると思いますが、サポート労働者として統一の職業名がなくて(カウンセラー?はまだまだ限定的)、サポート労働が各職種のある特定のキーパーソンの仕事の一つに組み込まれています。そのキーパーソンは当然高給取りであり、非常に重要なポジションであることは確かなのに、それが表に出てきていない。これって、すごく、なんか、突っつきがいがありますよね、って話でした。

一種のサポート労働の究極系が漫画編集者。「何やる仕事?」というと「漫画を書く以外全部」という。

質疑

Q. 私はきっとキーパーソン的なサポート労働の適正があるが、これだけだとアウトプットとして弱いから、重要なポジションいくまでがなかなか難しい。

A. むしろ、そういうサポート労働に適した人をもっとサポート職に登用した方がいいのに、現在は、現業もバリバリできて編集長とかまで登れた人が、更に、サポート能力も高いことを要求される、という非常にレアな人材を求める形になっていて、だから100倍難しいんじゃないか、って話でした。アウトプット弱くてもサポート得意な、スカブラみたいな職業にちゃんと価値を付けれるようになると、いいんじゃないのかなぁ、って。

あとまあ「俺漫画かけないから漫画編集者やるわ」みたいなゴミが無限に現れるので、サポート労働の能力評価というクソムズイ課題がある。

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