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観察力を磨く 名画読解

最近は何冊かの本を並行して読んでいて、なんだか中途半端な感じになっていますが、こちらは「観察力を磨く 名画読解」という本。とにかくしっかり観察する力をつけようね、というお話。

まだ第一部「観察」の半分くらいしか読んでいませんが、すごく考えさせられる内容だなぁと思います。そのせいで、読むのに(というか、名画を観察するのに)めっちゃ時間がかかっている。

観察力とは

私たちは日常的な風景をほとんど認識することなく、なんとなく過ごしています。毎日の通勤経路とかも、毎日見ているようで、実際のところほとんど見ていません。脳が景色を認識して処理するに至らないことがほとんどです。だからふと取り壊されている建物を見ても、はて、今までそこになんのお店が存在していたか思い出せなかったりしいます。

美術館に行っても、そこに飾られている名画をまじまじと見る人は少ないです。一人が一つの絵に費やす時間は15秒くらいだといいます。まぁ確かに15秒も見れば、ああ人が座っているな、レストランの絵だな、みたいに認識して満足してしまいます。

この本が求めている観察力というのは、もっと一つ一つの事象をつぶさに観察することで、多くの情報を引き出せるようになるでしょう、ということ。それは何も名画観賞に限ったことではなく、お医者さんが患者さんを観察するとき、営業マンがお客さんを観察するとき、先生が生徒を観察するとき、あらゆる場面でその観察力は活きてくるはずです。

実際、警察官に名画観賞の講義を受けてもらった後、その警察官たちの街での犯罪検挙率が向上したなど、観察力の向上が多面的に効果をもたらすことが証明されているとか。

ふだんの生活で使うもの(たとえば腕時計や、ハンドバッグ、水筒など)で訓練するのも効果的だ。構造が適度に複雑なものを選んで、一分間、集中して観察する。観察が終わったら、それを見えないところへしまって、特徴をぜんぶ書きだすのである。形、色、素材、ロゴ、寸法など、とにかくできるだけ詳しく書く。それからモデルにしたものをとりだして、さっきよりも長い時間、観察する。さっきの三倍(さっきが一分間なら今度は三分間)観察して、最初は気づけなかったことに気づけるかどうか試してみよう。毎日、品を替えてこの訓練をすると、一週間後には集中力と記憶力が目に見えてあがっているはずだ。

P68

こういう訓練をするといいらしい。ひと作業、せいぜい5分くらいだ、毎日やったって大したことないでしょう。でも私たちは、そんな訓練をやろうとは思いませんし、実際にやらないでしょう。私もやってません。観察力って大事なんだなぁ、と思うだけで、何も観察しない。だから私たちは凡庸なままなんです。

アートを観察する意味

人間の行動を観察するのが最終目的となりますが、いくら人間の行動を観察して推測しても、それが正解だったかどうかを確かめる方法がありません。その点、アートには正解が存在するのがメリットだそうです。

アートには答えがある。描かれているのが誰(または何)で、いつの時代の、どこで起きた出来事で、どうしてそういうポーズをしているのかがわかっている。美術史家のデイヴィット・ジョズリットが述べたとおり、アートとは〝途方もない量の経験と情報の蓄積〟なのだ。私たちの観察力、分析力、コミュニケーション力を鍛えるのに必要なすべてを備えている。

P33

だから本書では数々のアート作品が紹介され、それをじっくりと観察するように指示されます。そのため読むのにすごく時間がかかっています。でも面白いです。

ここで功を急いで焦ってはいけません。ゆっくり時間をかけて考えることが重要です。

ペースを落とせというのは何も動作を遅くするという意味ではない。見たものを意識に浸みこませる時間をとれという意味だ。細部や、パターンや、関係性をつかむには時間がかかる。急いで片づけようとすると、細かなニュアンスや新しい情報をとりこぼすかもしれない。

P43

まず自分の目で見る
    ↓  
既存の情報や意見を参考にする
    ↓  
もう一度、自分の目で見る
基本は二度見ること。一度目は外部の情報なしに、二度目は外部の情報をとりいれたうえで、改めて見る。

P100

こうやって、ゆっくり時間をかけて一つのものを観察する習慣をつけること、そうやって観察力を鍛えていきたいと思います。

見ているものが違うことに気づく

同年代で、白人で、育った家の経済状況が似ていて、ひとつ屋根の下に住む夫婦であってもこれほどちがうのだから、そうでない人々──たとえば社長と従業員、被告側弁護人と検察官、共和党員と民主党員、教師と生徒、医師と患者、ベビーシッターと子どもの見方は、どれほど隔たっていることか。

P81

多くの人は、自分が見て感じるのと同じような感想を周りの人も抱くだろう、と推測しますが、実際にはそんなことありません。細かくみていけばみていくほど、そこには多彩な違いがあることに気づきます。

でも、ざっと15秒くらい眺めて満足していると、そうした違いに気付くことなく、ざっくりとした認識で止まってしまうのです。

観察力の低下は、洞察力の低下につながり、理解を妨げ、関心を薄れさせ、満足度や幸福度を下げることにもつながっていきます。私は今一度、じっくり観察するという習慣を取り入れていこうと思います。

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