見出し画像

実践コミュニティ・まとめ

コミュニティ・オブ・プラクティス読み終わりました。第8章~第10章を簡単にみていきます。基本的にはこれまでの話の繰り返し、具体例の紹介だったように思います。

実践コミュニティをどう評価するか

特に企業では、活動を評価することが重要ですが、こうしたあいまいなコミュニティの評価は難しいです。うまい方法はないのですが、とにかく成果で判断するのはダメなので、なるべく「物語」にしてその価値を訴えろ、と筆者は言います。

ナレッジ・システムを詳しく考察するための最高の方法は、物語(ストーリーテリング)である。物語は、コミュニティの活動、知識資源、そして業績成果の間のつながりを説明することができる。これらの複雑な因果関係を説明しつつも、理解する必要があるが記号化や一般化がしにくい暗黙の背景を組み入れることができるのは、物語だけだからだ。

P246

コミュニティを評価するうえでは、次のような質問も役に立つ。

□チームやビジネスユニットをサポートするような知識が効果的に生み出され、適用されているか。
□知識開発における優先事項は、事業戦略と整合性が取れているか。
□チームやビジネスユニットは、知識資源を最大限活用しているか。知識をとらえて統合する機会を、あらゆるユニットで十分実現しているか。

P259

こうした評価は、特に企業のなかで実践コミュニティを運用するときに重要な観点となる。しかし、実践コミュニティは決して会社内だけにとどまる存在ではなく、広く市民活動にまで浸透していく。

今後企業をベースとしたコミュニティ開発の経験が蓄積するにつれて、このような方法を企業以外に、そして企業のネットワークさえも超えて適用することが、容易になるはずだ。将来的には市民セクターのコミュニティが、企業や顧客を含め、市場を組織化するようになるかもしれない。それどころか、住宅、育児、健康、教育、芸術などの、人間社会にかかわる実践分野への関心を共有する市民を組織化するようになるかもしれないのだ。

P331

本書は2002年に書かれたものなので、まだまだインターネットコミュニティは発達していなかったが、今ではオンラインサロンのようなインターネットでの実践コミュニティが山ほどある。まさに上記に書かれていた通りの時代がやってきたと言えよう。

次に挙げるのは、特にコミュニティに役立つオンライン機能である。
□コミュニティの存在を主張し、領域や活動について説明するためのホームページ。
□オンライン・ディスカッションのための話し合いの場。
□研究報告書、ベスト・プラクティス、規格などの文書を集めたレポジトリー。
□知識ベースで調べ物をするための、優れた検索エンジン。
□メンバーが領域内で何を専門としているかという情報を載せた会員名簿(ディレクトリ)。
□リアルタイムの電子コラボレーションを行ったり、映像で遠隔会議の効果を高めたりするための共有空間。
□コミュニティ管理ツール。ほとんどがコーディネーター向けだが、コミュニティ全体で使われることもある。たとえばだれが積極的に参加しているか、どの文書がダウンロードされているか、どの程度のトラフィックがあるか、どの文書の更新が必要かなどを調べるツールなどがある。

P286

今となってはどの機能も当たり前な感じがするので、この著者の考えは正しかったんだなぁと感じられますね。

解説・まとめ

本文はこれでおしまいで、続いて解説です。日本人有識者が、本書の解説をしてくれているので、こっちの方が分かりやすい説もある。

実践コミュニティは、徒弟制度の観察により得られたコンセプトであった。同じ仕事を持つが、普段から一緒にいるわけではない職人たちが、緩やかなコミュニティをつくって相互に学び合い、持続的な関係のなかで成長していく。それが実践コミュニティの原点である。

P335

知識の本質が、個人の経験により内在化されたものであると考えると、知識には必ず文脈が存在することになる。すなわち知識を共有するということは、情報としての知識だけではなく、その文脈、いわゆる意味情報もセットで共有される必要がある。

P337

文脈がないと他所で応用ができない、という話もありましたね。だからこそ物語にして価値を評価する必要があるのでしょう。

「場」には自由がなければならない。自律的に、自己組織化された時空間であるべきなのである。しかし、個々人がバラバラで無秩序な状態からは意味は生まれない。明確な意図や方向性など規律を与える概念も併せ持つ必要がある。したがって、自由と規律という、相反する概念を総合した「場」でなければならない。

P338

コミュニティの領域が大事だ、という話でしょう。確かに、自由と規律が両方必要なのも分かります。自発的に頑張るようになる、そんな力が必要ですね。そんな場を作るために、以下の3種類の人がいるとよいそうです。

第一に、さまざまな文脈を共有する中から、新しいアイデアの芽を提出する、アイデア・ジェネレーターの役割がある。
第二に、アイデア・ジェネレーターに異なる視点と専門知を提供し、アイデアの芽を概念や仕様に守り育てていく、コーチの役割。
そして第三に、アイデアがある程度育った時点で、さらに一段高い視点から評価・翻訳し、組織内外に正当化させていくステーツマンとしてのアクティビストの役割が必要になる。

P340

身近なコミュニティはせいぜいジェネレーターがいるくらいで、コーチやアクティビストのような高い視野のひとはなかなかいないですね。そういうのがいないと、成長するのは難しいのかもしれません。

対立概念や矛盾という現実をそのまま受け入れ、これを許容する姿勢が求められるのである。それによって、はじめて新たな意味が生み出される。つまり、意味連鎖による対立概念や矛盾の弁証法的統合によって、より高いレベルの知識の創造が可能となるのである。

P343

最後の方は、本当に理想的なことが書いてありますが、高い国語力を持ち、心理的安全性の確保された仲間と、自発的に真剣に問題に取り組む、という状態にならないと実現しえない感じがして、なかなか崇高な目標だなぁと感じられます。

そんな感じで、最終的に行き着くところはどの本もだいたい同じですが、実践という切り口でコミュニティを考えるのはとても面白いと思いました。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?