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業界インタビュー5 ガス業界の仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第5弾。今回はガスです。インフラ系のお話でした。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!

ガスの歴史

戦後、1950年ごろ、ガスはLPボンベからの量り売りだった。今でいう灯油みたいな感じで、ガス会社が各家庭にガスを売って、キッチンとかで使っていた。最初はそれでも良かったけど、経済成長とともに家庭が裕福になり、ガスを扱う家庭が増えていくにつれ、ガス爆発事故も急増したらしい。

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経済産業省のまとめたガス事故件数推移を見ると、1960~1970年代にガス事故がどんどん増えていることが分かる。これは良くない。ガス爆発は死亡事故につながりやすいし、火事は周辺にも広がって被害はどんどん拡大する。そこで、安全弁などの保安機能がついたガスメーターが開発されるようになった。

この安全なガスメーターが普及するにつれてガス爆発事故は減少し、1990年代になると100%全ての家庭で安全にガスが使われるようになった。最近でもガス事故は発生しているが、昔のような爆発事故はほぼ起きないので死亡者はほぼ0人を保っている。

近年の事故

最近はガスコンロも優秀で、空焚き防止とか油の温度感知とかで、事故になる前にガスを止めて私たちを守ってくれる。本当にありがたい。事故が起きたとしても、ガスが出ない!とか安全側にふれたトラブルになるように設計されている。

でも、あまりにも安全になりすぎて、ガスの危険性についてみんな意識しなくなった、頓着しなくなってしまった。ガス業界の人たちはとても頑張って縁の下で支えてくれているけれど、あんまり社会の役に立っている実感がわかないらしい。それは申し訳ないね。

今回は、そんなガス業界の安全性に関するお仕事の話です。導入が長くなりましたが、ここまでが今回書きたい内容の7割くらい占めていて、この先はどんどんマニアックになるだけなのでご注意ください。

ガスメーターの寿命

ガスメーターというのは、都市ガスの場合、家の外側についてて、たまに検針の人が来てメーターを見て使用料金とか書かれた検針結果の紙をポストに入れてくれるやつです。

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これは法律で10年おきに交換することが義務付けられています。それはつまり屋外の吹きさらし環境で10年きっちり動作することが求められている、ということでもあります。かなり厳しい環境での長期動作保証が必要で、なかなか大変なもののようです。

スマホであれば2年くらい動けばいい、白物家電だって屋内で5~7年動けば十分でしょうから、屋外10年というのはかなり厳しいです。これよりも厳しいのは自動車くらいだそうです。確かに自動車は屋外で10年くらい使うし、めっちゃ動くし、命に直結するから厳しそうなのは納得。

で、私は10年なんて長持ちだなぁ、そんなに商品寿命が長いとビジネスしづらそうだなぁ、と思ってたんですが、そうでもないらしい。何せ国内には4000万世帯くらいあって、その全てのガスメーターを10年で交換するとなると、年間400万世帯、1日1万世帯は交換しないといけない。日本国内だけでも8秒につき1世帯がガスメーターを交換している計算になります。母集団が大きいとスケール感がすごい。これがインフラ系の強さ。

ガスメーターのトラブル

ガスメーターの壊れ方にはいくつかあって、一つはガスが流れっぱなしになってしまうこと。これは一番あってはならない壊れ方。もう一つは、ガスが流れなくなってしまうこと。安全弁とかが閉まったまま動かなくなって、修理するまでガスが使えなくなってしまう。こっちのパターンはときどきあって、特に業務用のガスが出なくなると大きなクレームになってしまう。

次に、流量が正しく計測できなくなること。メーターとしての役割を果たさなくなるので、お金を正しく請求できない。まぁ課金されないで済むなら家主的にはラッキーな壊れ方。

他にも、最近のガスメーターは無線通信機能などを搭載していて、検針結果を遠隔管理できたりするらしいですが、そういう保安と関係ない機能は、まぁ壊れても何とかなるかな、って感じだったりするようです。

故障の原因

これは耐候性試験をやったことある人なら定番ですが、やはり水が一番の敵ですね。水のせいで樹脂部分が劣化するし、金属基板も変質します。

また、メーターは電池で動いているそうなので、微弱とはいえ電気が流れています。水滴がつくと電圧がかかり、基板の金属がイオン化して負極側で成長してしまう。マイグレーションという現象らしく、これによって成長した金属が最終的に回路をショートさせてしまう、というのが一番典型的な故障の原因だそうです。

他にも、雷とか、電波とか、静電気とか、季節によっていろんなイベントがあるので、長期安定性というのは難しいです。やはり10年というタイムスケールだと、劣化の原因も壮大ですね。こうした故障が起こらないように、メーカーでは日々改良を繰り返しているようです。縁の下の知られざる努力過ぎて、全然知りませんでした。

大変なことは何か?

最近いろんな業界で問題になっていますが、半導体の入手が困難になっています。半導体工場火災などで供給が減ったことや、アメリカが中国に対して半導体輸出規制をして中国が半導体を買いだめしたせいで、オイルショックのトイレットペーパーみたいに世界中で半導体が足りなくなっています。

当然ガスメーターを作るにあたっても、いつもの半導体が手に入らなくなってしまいます。新しい部品を入手して対応するわけですが、長期安定性を保証するというのは簡単なことではありません。

それでも毎日1万個を交換していくわけですから、生産を遅らせるわけにもいきません。寿命が切れたガスメーターは危険ですからね。街を守るインフラの仕事は、目立たないのにめっちゃ責任は重くて、大変ですね。

以上、知られざるガス業界のお話でした。全然聞いたことのない世界で楽しかったです。さて、今回のおまけパートは、きっと皆さんの知らない最新ガスメーター事情!ガスメーターはここまで進化していたのか!ガスメーターの測定原理について徹底解説!マニアックすぎて誰もついてこれないよ!

おまけ:二つの計測方式

ガスの流量を測る方法は山ほどありますが、ガスメーターでよく使われている方式を2つ紹介します。

一つが膜式ガスメーターというもの。肺のように2つのガスを溜める袋があって、そのうちの片方にガスが入ります。ガスが溜まって膨らむ過程で、袋と連動したネジが回転し、一定量のガスが入ったところでバルブを切り替えます。すると反対側の袋にガスが入り、最初に溜まったガスが排出されます。このネジの回転量でガスの使用量を計測します。

これは昔から使われているタイプですが、一定量のガスが溜まるまで、ガスの流れを検出できません。ごく微量のガスが漏れている場合などは気付きにくいです。たとえば新築の家ではじめてガスを開通するとき、まずは家の中のガス栓を全て閉めてガスメーターの元栓だけを開きますが、そのとき本当に家の中が全て密閉されているか、実は微量の漏れが発生しているのではないか、というのが分かりにくいです。5分くらいじっと待って、それでも膜式メーターが動かなければ、まぁ大丈夫でしょう、みたいな判断をするしかありません。ちょっと不便で心配です。

そこで登場したのが超音波式ガスメーター。これはリアルタイムでガスの流れを計測できます。さすが超音波。

ガスが筒の中を左から右に流れるとして、超音波センサでガスの流れと同じ方向、流れに逆らう方向と超音波を一往復させます。そのとき超音波の速度はガスの流速の影響を受けるので、行きと帰りでかかる時間が微妙に異なります。その差からガスの流量を測定するそうです。より細かい流量の情報が分かり、微量のガス漏れだって瞬時に検出できます。

さらに最近はガスが何に使われているかまで区別できるようになってきたそうです。これはガスコンロ、これはガスファンヒーター、みたいな違いまで流量から分かるそうです。その結果、このガスファンヒーターを使う時だけガス料金を割り引きます、みたいなサービスも実施できるようになってきたとか。

サイズも膜式よりコンパクトで軽くなったので、技術の進化というのは縁の下の見えないところでも着実に私たちの生活を良くしてくれてるんですね。すごいです。

本当にありがとうございました。

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