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枡原徹尾と歩んだ12月

12月はサロン活動が加速して、健康ラジオの時代からゴミの市場化まで一気に話がすすんでいます。でも私はそんな流れを一切無視して、ほとんど枡原徹尾ばかり見ていました。

そもそも枡原徹尾とは何か?

枡原徹尾という架空の人物に関する設定を考えるゲームです。みんなで好きな設定を考えて、設定が矛盾したら負け、というシンプルなゲームです。

枡原徹尾は18歳、高校2年の男の子。
枡原徹尾の前歯は全て差し歯である。
枡原徹尾の家のトイレはボットンである。

こんな感じで、誰もが好き勝手に設定を追加していけます。最初のうちはみんな自由気ままに書くのですが、だんだん設定が増えてくると把握しきれなくなって、どこかで矛盾が生じてしまうのです。

枡原徹尾の家のトイレには死体が眠っている。
枡原徹尾は人を殺した事がない。
枡原徹尾は小林先生に3回告白した事がある。

設定を書くだけでは飽き足らず、徐々にストーリーが生まれてきます。だんだん枡原徹尾に愛着がわいて、矛盾を起こしてゲームが終わりになるのが惜しくなります。矛盾を恐れるがあまりに、矛盾しなさそうな関係ないことばかり書くようになります。

枡原徹尾の家のトイレを田中花は借りたことがあり、それ以来消息が不明である。
田中花には乳首が6個ある。
ファミチキしか食べない怪人、ファミチキタベタベルマンが毎日12:00に学校を襲いに来る。
路上にガムを吐き捨てると街中を警備しているガムロボットに銃で撃たれる。
小林先生はエリマキトカゲになりたい。

こうしたやり取りが進んでいくと、徐々に自分の好きな"推し設定"が生まれてきて、自分の"推し設定"でいかに世界を染めるか、という戦いが始まります。

①ゾンビ派
枡原徹尾は、ネクロフィリアである。
田中花は死んでも動き続ける。
田中花は雄牛に突進されて即死した。
②乳首派
田中花は一回死ぬ毎に乳首が2つ増える。
田中花の乳首が13コを超えると、誰かの願いが叶い、この世界の乳首がすべて消滅する。
枡原徹尾のケツにストローをさすと、田中花の乳首が出てくる。
UNICEFは乳首を通じて福祉を行う組織である。
③日常派
小林先生の彼氏は、今日スーパーで牛乳とストローを陳列した。
放課後、小林先生は手早く仕事を切り上げ、学校を出た。無性におなかが空いていたので、近くのファミマに向かった。
枡原徹尾は揚げたてのファミチキを持って公園にやってきた。
④ちゃぶ台返し派
突如、乳首全回収おじさんが現れ、あの世、この世、全時間軸の乳首を全て奪い消えていった。
枡原徹尾はナルコレプシー、枡原徹尾は大概変な異世界が舞台の夢を見ている。しかも、きまってその夢には田中花と小林先生が出てくるのだった。
時代は遡り、時は慶長6年。先の天下分け目の戦いで小兵ながら武功をあげた枡原徹助は1人厠へ向かっていた。

これは面白いのか?

これまで枡原徹尾は矛盾によって2回消滅し、タイムアップで1回強制終了し、現在4回目の設定で進んでいる。最初の1日はいろんな人が自由気ままに書き込むのでとても楽しいのだが、徐々にみんなの筆が重くなり、2~3人が細々と書き続けるだけになってしまう。ゲーム性を高めるなら、何時間か書き込まれなかったらダメとか、過去ログはゲームマスター以外見れないとか、何かしらの工夫がいると思う。

実際には多くの人が観戦モードとなり、2~3人が好き勝手書くのを楽しんで眺める、というスタイルになった。それはそれで面白いのかもしれない。書きたい欲の高い人がたくさん書いて、読む人は矛盾がないか粗探しをしながら物語を読み進める。私は1~3回目は読むだけで、4回目は積極的に書く側に回った。自分勝手に話を書いて、みんなの求める枡原徹尾から離れてしまっているのではないか、自分が出しゃばりすぎて興醒めではないか、という不安もあったが、まぁ歴史と伝統ある枡原徹尾ゲームだから少しくらいの粗相には目をつむってもらおう。

結果として、私にとってはとても楽しい創作の場であることが分かった。以前、阿吽さんにプロファイリングしてもらったときにも、ごちゃごちゃな設定をきれいに整理して一本の筋を通すのが好きだし楽しい、と言われていたので、この枡原徹尾のカオスは楽しかった。また、自分で前提のない状態で設定を作るのが極度に苦手で、創作活動も最初のプロット作りがものすごくハイコスト、という私の苦手部分をみんながカオスで用意してくれていたので、非常に私と相性のよいゲームであった。本当に楽しかった。

最終的に、私以外は誰も設定理解できてないんじゃないか、ってくらい複雑になってしまったし、それに嫌気がさしてちゃぶ台返し派が横行したのではないかという申し訳なさもある。しかし、ちゃぶ台返しされた設定もひっくるめて、私は全てを一つのストーリーに取り込んでいった。異なる世界線を移動し、物語の中の人物が書き手の状態を想像するメタ認識も駆使し、私はみんなが投げてくる無理難題のちゃぶ台返しを統合していった。だんだん私のストーリーを先回りして潰してくるようになったので、詳細は明かさずに布石だけを並べて、立ちはだかる設定に対抗して戦った。決して矛盾せず、筋を通し切るゲーム。めっちゃ楽しかった。

惜しむらくは、複雑で長すぎて、結局どんだけの人に読んでもらえたのか、もっと読んで欲しかったなぁ、と思わなくもないことでしょうか。リアルタイム性があるから面白かったのかもしれません。その場で作られているからこその面白さ。読み返したらどうなんでしょうね。まぁ、少しでも多くの人の心の中に枡原徹尾が巣食ってくれたら何よりです。

おまけ

枡原徹尾を制止する小林先生の絵(by ケイナ @otobokeinachan)

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