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「宗教の起源」~同期性と帰属意識

前回は第4章の紹介をしましたが、今回は第6章から宗教と脳内物質、エンドルフィンの関係を見ていきます。

脳科学と宗教

宗教に欠かせない「神秘体験」はどうして起こるのか。それを脳科学の面から解析しています。

トランス状態をもたらす反響回路に視床下部が関与しているという事実だ。視床下部は、脳内にエンドルフィンを分泌する領域の一つ。トランスに入る瞬間に一気に押しよせる、静まりかえった無の感覚は、モルヒネ様物質であるエンドルフィンの急激な増加がもたらしていると思われる。

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エンドルフィンは脳の疼痛抑制系の一部なので、痛みを誘発するとエンドルフィンが分泌される。エンドルフィンが非常に出やすいのは、突然起こる激しい痛みよりも、ジョギングや踊りのようにリズミカルな持続的で弱い痛みである。苦痛が軽めで、とくに礼拝に関係する儀式の多くはリズミカルな動きをともなうため、エンドルフィンを分泌しやすいはずだ。

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音楽と踊りでトランスに達する、というのは合理的な神秘体験なんですね。

同期性(一緒に行動すること)

ただ一人で踊って疲れるより、誰かと一緒に踊って疲れた方が、その効果は高まります。一緒に同期した人との協調性が高まります。さらに、その一緒の行動が高負荷であるほど、その効果も高まります。つらい体験を共にした仲間の絆は深まるんですね。

速く歩く(高覚醒)集団と、ゆっくり歩く(低覚醒)集団を設定し、行進を終えたあと、各集団に協力課題をやってもらう。すると速足で歩いた高覚醒集団は、ゆっくり歩いた低覚醒集団よりも密に集まり、課題を効率的にこなした。

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読書サークルでも、一緒に課題図書を読みましょう、というのは同期性のある行動ですが、一瞬で読み終わってしまう人と、何日もかかって読む人では、歩調が合わず、協調性が高まらないかもしれませんね。どれくらい一緒に頑張れるか、やはり同じレベルの人との方が親近感がわきやすいのは事実なのでしょう。

帰属意識と信仰

同期性のほかにもう一つ大事なのが帰属意識です。ただ行動が同期しているだけではダメなんです。毎日7:27に挨拶するという行動は非常に同期性が高いですが、そこに帰属するもの、信じるべきものがないと、そこに群れは形成されないのです。

協調性の高さにつながったのは、同期性と帰属意識の二つがそろったときだけだった。活動の頻度や継続時間は、協調性の程度に影響していない。ここでも宗教的な目的の存在が、同期的な儀式の効果を押し上げていた。

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本書でも、サンデー・アセンブリーという宗教色を持たない趣味の集まりみたいな事例が紹介されています。この集団も定期的に集まって、みんなで歌を歌ったり一緒にご飯を食べたりしています。同期性はあるので、そこそこ仲良くはなりますが、宗教的なつながりに比べると成功とはいえないレベルだとのこと。

やはり、神秘体験を通して、何か超自然的な、霊的世界への信仰があるかどうかで、一体感の高まり方は段違いに強くなるようです。

あなたの神秘体験は?

これまで、コミュニティ作りとして同期性を高めるみたいなことはいろいろ検討してきた気がしますが、神秘体験を通した帰属意識、なんて考えたこともなかったです。そもそも、神秘体験なんてあったっけ?

神秘っていうとちょっと大げさに感じますが、部活で一緒に頑張った仲間と大会を勝ち抜いたときとか、そういう高揚感も神秘体験の一種と言えるんですかね?

つまりだよ。インターネット上のゆるい繋がりから生まれたコミュニティってのは、基本的にそんな苦痛で大変な努力を要するハードな活動なんてしないじゃないですか。だからエンドルフィンも出ないし、神秘体験にも至らないわけですよ。ぬるま湯で出会った仲間とは宗教が作れないんですよ。

だからサウナ。お手軽に身体の限界を迎えられる。サウナ仲間は宗教ですね。あれ、たぶんサウナ室でじっとしてるだけだから同期性が弱いんだけど、もっとサウナのなかでリズミカルに踊れば、完全に宗教だよ。

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