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People Powered コミュニティ立ち上げ期にやること

第三章から第六章まで。ここではコミュニティを作るための重要なステップについて細かく解説されています。

「価値」をきちんと掴んで示す

すばらしいコミュニティを造るための第1ルールについて説明しよう。見込みメンバーたちの成功と価値を最優先しよう。これがうまくできれば、君のコミュニティは自然と成功していく。まずコミュニティメンバーにとっての価値を書きだそう。

P118

コミュニティで大事なのは、そこに参加する人たちがどんな価値を得られるのかです。価値があると感じなければ誰も来てくれません。こちらが何を提供するかではありません。いいものを作れば売れる、みたいな昭和の考え方はやめて、相手が何を価値として受け取れるかを考えます。よくある価値の例は以下のとおり。

1. 他の(すばらしい)人々に会う
2. メンバーの体験を豊かにする興味深いコンテンツ
3. ハイクオリティな学びとヘルプ
4. スキルアップ
5. メンタリングとコーチング
6. 専門知識とキャリアアップのための経験

P119

自分たちの大岩、ビッグロックスを作り上げよう

ビッグロックスと言っているのは、現実的かつ野心的な、実現可能だけど妥協のないゴールだそうです。そんなちょうどいいゴールが簡単に設定できたら苦労しないですけど。

できあがるビックロックスのフォーマットはこんな感じだ。
・目標を1行で表したもの:目標と、それがコミュニティや君の組織に提供できるおもな価値について1~2段落程度で説明したもの
・今後1年間のおもな取り組み:目標を達成するためにおこなう作業を箇条書きにしたもの
・KPI(KeyPerformanceIndicators 成績評価指標):目的達成ができているか評価する、測定可能な評価指標
・担当者:この目標をだれが達成するか

P128

目標を立てるのと同じくらい、KPIの設定も難しいです。特に本書では計測可能な指標であることを強調していますが、成果を計測可能な数値で置き換えるのは多くの危険を伴います。本来の目標を忘れて数値目標にばかりとらわれてしまうのはよくあること。

会社の価値観と同じように、コミュニティの価値観も毎週確認し続けるものだ。それが自分の働き方や成功を評価するしくみと直結していなければならない。自分がやることが、コミュニティの価値を作るのに役立つか? そうでなければ、変えなければならない。この価値を常に前面に出しておけば、他のすべてのものがきちんと収まる。

P135

本来の目標を忘れないように、毎週確認し続けようとか言っていますが、そもそもみなさん、会社の価値観を毎週確認していますか???

KPIの設定について

KPIを計測可能なものとして設定しようと言いましたが、実際にやろうとするとそんな便利な数値はなかなか見つかりません。

ありがちなのがこういう目標だ。
・Webサイトを改善しよう
・今年は顧客を拡大する
・顧客の導入をスピードアップする
・販売プロセスをより効果的にする
こういうあいまいで主観的な目標はリスクだ。すべてがうまくいっているならいいが、厳しい結果になりそうな見通しになると、みんなが「改善」「拡大」「スピードアップ」「効果的」といった言葉にこだわって、自分はそういう意味だとは全然思っていなかった、と言い出す。弁解、言い逃れ、言い訳だ。
あいまいなものは、ないのとおなじ

P196

厳しいですね。一応筆者も、例として代表的な数値目標をいくつか示してくれています。

コミュニティのほとんどに見られる7つの主要な側面を紹介しよう
1. 成長性:何人がコミュニティに参加しているか? その成長性はどう変化しているか?
2. リテンション:コミュニティに参加してくれた人の中で、残って参加し続けてくれている人は何人?
3. メンバー同士のエンゲージメント:人々はどのくらい共同作業をしているのか? お互いに交流していっしょに活動しているだろうか?
4. 企業とコミュニティのエンゲージメント:会社のスタッフはコミュニティとうまく関係を築いているか?
5. 成果:コミュニティは目的のオーディエンス・ペルソナに対してきちんと成果を挙げているか? たとえば支援者ペルソナは質問に答えられているか、開発者はコードを開発しているか、コンテンツ制作者はコンテンツを制作しているか。コミュニティは会社のキャンペーンや活動に価値を提供しているか?
6. 出席率:対面イベントやオンラインウェビナー、キャンペーンなどの取り組みへの出席率がどのぐらいか?
7. 効率性:新規参加、コラボレーションに至るプロセス、問題を解決するまでなどのプロセスが、どのぐらい効率的か?

P197

他にもいろいろと細かくポイントが説明されていましたが、私の関心のフェーズがここまでたどり着いていないので省略します。

オーディエンスのペルソナを作ろう

人間はけっこう不合理な行動をしがちです。合理的なシステムを作っても、思った通りに人々が動かないことはよくあります。だから、コミュニティを利用する人たちの特徴を抽出することで、よりよいコミュニティ作りに反映していきましょう、というお話。

僕らのシステムは実際の人間がどう考えて行動するかについて、現実的な理解に基づくことが必要だ。これは社会学や心理学の学位がなくてもできる。この仕事は以下の3段階に分かれる。
1. 人間が不合理な行動をすることを理解する。なぜ人々がそんな行動をするのか、鍵となる行動パターンを自分たちに有利な形で活用するにはどうすればいいのか
2. オーディエンスのペルソナを描く。どのような人を自分たちのオーディエンスとするか決定し、彼らがどんなニーズや特徴を持つかを現実的に理解する。その理解を中心にコミュニティを形成できるようにする
3. 最後に、コミュニティ内の集団力学を理解することで、コミュニティメンバーと最大限に効率的にコミュニケーションできる
お手軽な話だが、この章に書いてあることはこれだけですべてだ。やってみよう!

P137

コミュニティの参加者は、その参加度合いによって大きく3つに分類されます。それぞれの参加者のゴールについても触れておきます。

カジュアル

カジュアルな参加者のゴールは、彼らが馴染んで落ち着くのを助けることだ。彼らと問題解決をして、自信を築こう。メンタリングとガイダンスを提供しよう。彼らが参加したり、他人を巻き込んだりするためのシンプルなやり方を見つけられるようにしよう。他のメンバーと知り合い、人間関係を築き、友情を育むのを助けよう。

レギュラー

レギュラーはコミュニティの屋台骨だ。満足感を与え続ければ、レギュラーは何年にも渡って価値ある参加とサービスを提供してくれる。ここで重要な目標は、彼らが情報を得て、装備を整え、あれこれめんどうな手続きなしに参加できるようにすることだ。多くの企業が、成長するにつれてコミュニティのワークフローに多くのチェック、抑制、承認を導入してしまうという問題を抱えている。これは注意深く監視しておかないと、メンバーたちをウンザリさせてしまう。

コア

VIP扱いしよう。彼らにふさわしい敬意を持って接しよう。個人的な関係を築き、誕生日にプレゼントを送ろう。相手のキャリアや幅広いさまざまな目標のために、できることをなんでもしてあげよう。ディナーに連れ出し、高価な酒をプレゼントし、常に相手にひたすら敬意を持って接しよう。コアメンバーを大切にする重要性はどれだけ強調しても足りないが、それよりもさらに重要なのは、彼らの専門知識と指導に本当に頼ることだ。彼らの言葉を聞き、彼らから学ぼう。

導入路を設計しよう

どのような経験を構築するにしても、最初の数歩、オンボーディングはスムーズにしよう。オンボーディングのプロセスはシンプルで、各ステップは論理的に次のステップにつながるべきだし、また手助けも大量に用意すべきだ。これができれば、新しいコミュニティメンバーがなにかよい手応えを得やすくなり、参加し続けてくれる自信が高まる。

P169
コミュニティ導入路モデル

せっかくコミュニティに参加してくれても、何をすればいいのかよく分からなかったら、そのコミュニティに価値を見出すことができません。きちんと最初の導入部分は設計しておくのが大事なようです。新入社員教育みたいなやつですね。

問い:そもそもの価値の掴み方とは?

結局のところ、一番あやふやなのは最初の価値提示になると思います。インターネットでグローバルにつながった今、自分の考えが世界で唯一無二なんてことはなくて、何を考えたって類似品や先行事例が出てくる世の中です。そんな中で何をもって自分たちの価値として提示できるのか。

それは一種の視野の狭さ、コミュニティの物理的限界が大事ではないかと思うのです。他にも類似品はあるけど、今ここにはないよね、といったタイプの、ある種のあきらめのようなもの。私よりすごいものはあるけれど、今ここでは私が代わりにやるよ、というのを、どれだけ自信をもって掲げられるか。

ある種のカリスマを持つ人とかは、そういった狭い視野からくる独断のようなもの、サイコパスっぽさが欠かせないような気がしていますが、実際のところどうなのでしょうか。

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