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問いのデザイン

今の時代、答えを出す能力はみんな身についたけど、そもそも何を解けばいいのか、問題を見つける方が難しくて、どうやって問いを立てていけばいいかについて考えた本です。

問いのデザインは大きく「課題のデザイン」と「プロセスのデザイン」の2つに分けられるそうです。

第一に、「問題の本質を捉え、解くべき課題を定める」段階です。企業、学校、地域における問題は、当事者たちにとって、本当に解くべき課題として、正しく定義されているとは限りません。問題の本質を問い直し、課題を定義し直すことが、問いのデザインの第一歩です。いわば「課題のデザイン」としての問いのデザインです。
第二に、「問いを投げかけ、創造的対話を促進する」段階です。解くべき課題をデザインしたら、どのような道順を辿って課題に迫っていくのか、効果的なワークショップの流れを計画します。その上で、ファシリテーターとして当事者たちにいくつもの問いを投げかけながら、創造的対話を促し、課題解決のプロセスをファシリテートしていきます。いわば「プロセスのデザイン」としての問いのデザインです。

P9

どうして問いが大事なのか

第一章では問いの重要性について説明しています。

私たちは生きていく中でどんどん「認識」や「関係性」が固定化していきます。偏ったものの見方をして、新しい発想ができなくなる、新しいものが受け入れられなくなる、どんどん保守的になります。そのせいでいろいろな問題が発生していると考えられます。

どうすれば固定化した認識や関係性を崩すことができるかというと、「問い」なのです。

問いから生まれるコミュニケーションには、主に「討論」「議論」「対話」「雑談」の4種類があります。なかでも、固定化された「認識」と「関係性」に揺さぶりをかけてくれるのは、「対話」です。

P31

問いを通して対話することが本書の目的になります。

問いとは何か

「問い」の定義
人々が創造的対話を通して認識と関係性を編み直すための媒体

P51
質問と発問の比較整理

一般に「問い」と呼ばれるものを、本書では細かく3つに分類しています。この狭義の「問い」がとても大事なのです。

学校教育で行われる問いは、先生から生徒への発問と、生徒から先生への質問で構成されています。学校では狭義の問いが問われることはほとんどありません。道徳の授業だって先生が答えを用意している発問になっていることがほとんどです。だから私たちは、この狭義の問いに慣れていなくて、訓練する必要があるのです。

何を問えばいいのか ~ 課題のデザイン

問う側も問われる側も答えを知らない問いが大事だ、といいましたが、どんな問いでも歓迎なわけではありません。やっぱり愚問もあります。問うても対話が深まらない問いもあります。答えが分からないのに、良い問いを投げかけるにはどうしたらいいのでしょうか。

ここで出てくるのが本書の前半パート「課題のデザイン」です。

「問題」の定義
何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまくいかない状況のこと
「課題」の定義
関係者の間で「解決すべきだ」と前向きに合意された問題のこと

P60, 71

「問い」は対話を深めるために行いますが、深めるためにはやっぱり目標みたいなのが必要です。良い「問い」を出すには、みんなが同じ目標をもっている方がいいです。

そこで、関係者の間で前向きに合意された、解決すべき課題というものが設定できれば、その課題に関する問いは良い問いになります。じゃあ、その課題をどうやって設定しようか、というのが課題のデザインです。

おそらく誰もが、何かしらの解決できない「問題」を抱えていると思います。この「問題」は、自分にとっては重要なことですが、他人にとっても同じように重要とは限りません。人によって優先度が違ったり、気にするポイントが違ったりします。みんなの問題をすり合わせて、一つの共通の目標=課題に落とし込むのは大変です。

そこで、みんなの問題の中から共通課題を設定するために、問いを立てて対話をしていこう、というのが最初のステップになります。

これは暗に、「共通の課題を設定するという行為は、全人類が絶対に抱えている解決すべき問題であり、疑う余地のない共通の課題だ」と言っていますね。まあ、そういう前提なので、ここは受け入れましょう。

よくある課題設定の失敗例

課題設定の罠
(1)自分本位
(2)自己目的化
(3)ネガティブ・他責
(4)優等生
(5)壮大

P72

目標の阻害要因
①そもそも対話の機会がない
②当事者の固定観念が強固である
③意見が分かれ合意が形成できない
④目標が自分ごとになっていない
⑤知識や創造性が不足している

P118

この辺はTipsとしてメモ程度に残しておきます。詳しくは本書をご確認ください。対策は以下のとおり。

目標を精緻化する三つのポイント
(1)期間によって、短期目標・中期目標・長期目標にブレイクダウンする
(2)優先順位をつけて、段階的に整理したり、複雑な目標を分割する
(3)目標の性質によって、成果目標・プロセス目標・ビジョンの3種類に整理する

P103

リフレーミングのテクニック
①利他的に考える
②大義を問い直す
③前向きに捉える
④規範外にはみだす
⑤小さく分割する
⑥動詞に言い換える
⑦言葉を定義する
⑧主体を変える
⑨時間尺度を変える
⑩第三の道を探る

P125

実践してみよう ~ T君の事例

問いのデザインは、たぶん読んで分かったつもりになっても意味がなくて、きちんと実践して実感するのが大事だと思うのです。そこで、身近な問題を例として、課題のデザインをやってみたいと思います。

T君は妻と子供がいる社会人です。アイドルが大好きで、気付いたら多くのお金をアイドルに注ぎ込んでいて家族の不評を買っています。本人も貯金が底をついて困っています。私には直接関係ないですが、なんとかこの状況を改善してあげたいなぁと思っています。

考えられる問題は?

・このままでは家族が不仲になること
・お金が足りなくて日常生活に支障をきたすこと
・アイドルにつぎ込むお金が足りないこと
・アイドル以上にのめりこむ趣味がないこと
・お金の管理が苦手なこと

いろんな切り口が考えられます。他にも問題にすべきポイントがあるかもしれません。対話を通して、この中のどれが最も解決すべき課題なのかを合意していく、そのプロセスこそが「課題のデザイン」かなぁと思います。

ということで、今度T君と対話をしたら、続きを報告しようと思います!

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