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「共創」で実現する持続・発展可能な社会

2/24(木) Industry-Up Day Spring 2022が行われました。そこで各セッションの内容を簡単に紹介していきます。まずは一番最初に行われたキーノート対談です。対談されたお二人の紹介については以下をご参照ください。

脱炭素社会を実現するために

脱炭素社会を実現するには、大きく三つのアプローチがあります。

規制の力

規制による脱炭素は強い実行力を伴うが、やりすぎると劇薬になってしまう。下手な規制は、世の中の資源配分を非効率化する要因にもなる。

資本市場の力

資本の力は、企業セクターを動かす大きな原動力となっている。資本は手段であり、資本投下により新たな解決策が登場しないと健全な脱炭素に繋がらない。

製品・サービスの力

生産物市場でイノベーションを起こし、生産物市場において脱炭素に寄与する製品・サービスを流通することで脱炭素を実現する。

この3つの中でも、特に製品・サービスの力に注目していました。大幅な脱炭素化を実現するために現状できることは「電源の低炭素化」×「需要の電化」しかないからです。

電源の低炭素化というのは、火力発電をやめて、太陽光発電などの再生可能エネルギーや原子力発電を使うということ。これは一般的にイメージされていることなので分かりやすいですね。

もう一つ、需要の電化というのは、自動車をガソリンから電気自動車に変えるように、ガス給湯をエコキュートにするように、今まで直接燃料を燃やしていたところを電気に置き換えるということ。

世の中で使われているエネルギーの7割が、実はこうした非電力に依存しているのが現実なのです。だから、いろんなものを電気で代替して、その電気を再生エネルギーに置き換えていく。この方針を愚直に実行することでCO2排出を7割は削減できるという試算結果もあるそうです。逆にいうと、他にそこまでCO2を削減できそうな方法は見つかっていません。

需要の電化を進めるために

では、どうやって需要の電化を進めていけばいいでしょう。エネルギー政策のアプローチが難しいのは、エネルギーが手段であって目的ではないことだそうです。

二酸化炭素を減らしたいのは分かるけど、だからって、現状、電気自動車とガソリン車を比べたら安くて便利なガソリン車を選ぶ人は多いです。お金がないのに高価な電気自動車は買えません。

結局、需要の電化を進めるというのは、社会を変革するということになります。何が大事かといえば、脱炭素を進めることで良いことが起こる、という顧客体験を提供できるかどうか。みんなが自主的に、電化した方がいいと思えるようにしないと、電化は進みません。

だから、新しいライフスタイルを提案するのです。たとえば、再生エネルギーと蓄電池の問題があります。太陽光発電などは雪が降ったら発電できないなど、天候に左右されます。安定して電力を得るためには蓄電池が必要だけれど、各家庭が大きな蓄電池を持つのはコスト高です。そこで、各家庭が所有する電気自動車を蓄電池として、普段は電気を貯めてもらい、電気が足りなくなったら自動車から電気を吐き出してもらう。そうやって電気自動車に役割を与えて社会の中に位置づけることができたら、エネルギーとモビリティの関係も変化するし、お互いの価値を相補的に高めることができるかもしれません。

もちろん、すぐにそんなことができるとは思いません。でも、問題点を見ないであるべき論を言うのもよくないし、問題点を並べて何もしないのも生産的ではない。一個一個問題を洗い出して、つぶしていく。ちゃんと問題と向き合っていく。そうやって少しずつ社会変革のために動き出す。やってみないと、何が足りないかも分からない。とにかく実証実験をするしかない。というお話でした。

全てのインフラを変えていく

今回のキーノートでは、新しい顧客体験の提案として「分散型ライフライン」の提案がありました。これは電力に限らず、水道、道路、ごみ処理などあらゆるライフラインを小さくしていこう、というものです。

従来のインフラは人口集積型で、たくさんの人口がいることを前提に作られていました。しかし人口減少による衰退している地域社会が今後も継続していくために、人口が少なくても成立するインフラを構築しよう、というものです。

インフラに求められる品質水準は高いので、なかなか代替するのは難しいですが、それを実現するための要素技術はそろってきています。まずは、これを小さいスケールで成り立たせていくところから始める必要があります。

インフラ事業は何兆円という市場なので、その手前の数十億円規模で成立させるのは難しいのですが、そこでニーズを満たしていくことが大事です。そういった新しい価値検証をするために「リビングラボ」という地域での実証実験が欠かせません。

新しい時代のオープンイノベーション

こうした新しい価値を創造するのに、従来の企業中心のオープンイノベーションでは限界があります。産業を中心とした、社会課題を解決するために様々なステークホルダーが集まる「共創の場」のようなものが必要となります。

インフラなどの社会課題を解決するのは時間がかかるし、マネタイズも大変です。スタートアップに丸投げしてもうまく回りません。民間の収入が伸びない中で、コストのかからないサービスをリリースするというのは難しいのが現状です。だからコミュニティとしての支援が必要です。そのための新しい場作りが、今の時代には求められているのです。

ただ、企業側からすると「場」のようなふわふわしたものに投資できない、という意見も多いです。現状では、課題を解決したいという想いのある人のボランタリーに依存していることも多いです。そこをどうやってエコシステムに仕立て上げていくか。

どうして今「新産業」と呼んでいるかといえば、今まで経済価値がつかなくて産業にならなかった分野だからです。だからマネタイズが難しいのは当たり前で、産業構造の転換がないとうまくいかない。でも、そこを頑張って取り組んでいきたい、歯を食いしばってでも頑張りたい、とのことでした。

視聴者の意見

従来の「集まれど、何も起こらない」コンソーシアムから、どうしたら突破できるのか、とても興味深いです。大企業における新規事業の課題は「具体化」「事業化」だと思っています。お勉強だけならいくらでも人が集まってくるんですが、そこから先に進めない。SUNDREDの新産業共創プロセスでいうところの「勇者」が必要です。仲間がいっぱいいても、勇者がいないと冒険は始まらない。

社会課題に対して、どれだけビジネス側が「代替案」と「救済案」を注ぎ込めるか。一人ひとりの手と力がカタチになるやり方を敷くことが出来れば、という思いでカンファレンスを眺めています。

「具体化」「事業化」も大事な話ですが、その他にリーダーが「圧倒的当事者意識」を持ち続けることが大事です。かつ、周囲もいかに支えることが出来るかが重要なカギであると認識しています。

おそらく、日本にも1億人くらいいれば、勇者候補はいるんだと思うんですよね。でも、日本の普通のやり方だと、出てこない。どう出てきてもらうかを工夫する必要がある。そして、出てきた勇者をちゃんと育てる、支える仕組みも工夫が必要。そしてそのとき、勇者が掲げる旗印は「事業」ではなく「産業」ということなんですよね。

産業のタネになりえるだけの懐の深い旗印を掲げられるか。それが大風呂敷で終わらないための具体化、産業として育つために必要なエコシステム構想の具体化。やっぱり、ここがカギだとは思うんですよね。

登壇者からのメッセージ

今回のお話を聞いた皆さん一人ひとりが、我が事として仕掛けに取り組んでほしいです。皆さん、ここで情報を取って帰るだけではなく、何か新しいことをやるためにこの場に来たはずです。

日本人はまだまだお客様意識が強いです。「それで、何してくれるの?」といった学生時代のようなサービスを受ける側の意識が根強い。そこを、主体者側の意識に変えていきましょう。社会の中で生きる、社会人としてのマインドセット。

世の中、やる側に回ったもん勝ちです。目的をもって動かす。自分が主体となって動いた方が、見える景色がずっと鮮明になります。積極的に巻き込みに来てください。お互い巻き込み、巻き込まれながら、新産業を作っていきましょう。ぜひ、お願いします。

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