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コミュニティ・オブ・プラクティス

「実践コミュニティ」のお話。身近な例でいうと、最近流行のオンラインサロンですかね。どうすれば、実践コミュニティがうまく機能するようになるのか、について詳しく解説されていて、なるほどね~、といった内容でした。今日は本書の1~3章を紹介します。

実践コミュニティはなぜ重要なのか

実践コミュニティ(コミュニティ・オブ・プラクティス)とは、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団である。

P33

これは近年生まれた新しい概念ではなく、昔からいろいろな形で存在していました。会社のような目的が明確な組織ではなく、技術者たちが日々の悩みを相談する交流の場のようなもの。なんの目的でみんなが集まっているのか、その価値をなかなか明確には言い表せないけど、確実に役に立っているなぁと感じる、人々が自発的に集まって活動する場。それが実践コミュニティだそうです。

近年、企業は合理化を進めすぎて、こうした成果の見えにくいゆるい繋がりを無駄なものとして排除してしまったと思います。しかし、この実践コミュニティこそが、創造性を高め、新しい価値を生み出す、とても大事なものなのだと筆者は言います。

実践コミュニティの3つの基本要素

実践コミュニティは、次の三つの基本要素のユニークな組み合わせである。一連の問題を定義する知識の領域、この領域に関心を持つ人々のコミュニティ、そして彼らがこの領域内で効果的に仕事をするために生み出す共通の実践である。

P63

領域

領域は、メンバーの間に共通の基盤を作り、一体感を生み出す。領域を明確に定義すれば、コミュニティの目的と価値をメンバーやその他の関係者に確約し、コミュニティを正当化することができる。また領域はメンバーの貢献と参加を誘発し、学習を導き、行動に意味を与える。

P63

領域こそがコミュニティの存在理由である。人々を一つにまとめ、学習を導くのは領域なのだ。コミュニティのアイデンティティや客観的な重要性、そしてその成果がメンバーその他の関係者にとってどのような価値があるかは、領域によって決まる。この点から言えば、コミュニティのアイデンティティは、その領域の客観的な重要性に大きく依存する。

P67

コミュニティ

コミュニティへの加入は自発的でも強制的でもよいが、実際に関与する度合いを決めるのは個々人なのだ。その意味では、参加は自発的だと言える。参加を奨励することはできるが、活気に満ちたコミュニティの条件である個人の献身は、人為的に作り出したり強制したりできるものではない。
どんな実践コミュニティも、その成功は自発的なリーダーシップに依存するが、コミュニティが健全であれば、一人だけの指導力に頼ることはない。リーダーシップは分散し、コミュニティ全体に遍在するのである。

P74

実践

ある特定の領域で物事を行うための、社会的に定義された一連の方法、という意味がある。つまり、行動やコミュニケーション、問題解決、作業、説明責任などの基盤となる、共通の手法や基準である。このような共有資源には、たとえば事例、物語、理論、規則、枠組、模範、原則、ツール、専門家、論文、教訓、ベスト・プラクティス、経験則など、さまざまな種類の知識が含まれる。つまりコミュニティの暗黙知と形式知の両方が含まれるのである。それは専門的なツールやマニュアルのように形のある物体から、機械の動作音の微妙な変化によって特定の問題の発生を知るといった、目に見えにくい能力まで、多岐にわたる。

P77

これら3つの要素をもつものが、実践コミュニティだそうです。

実践コミュニティを作ろう

だが共通の関心があっても、実践コミュニティが生まれるとは限らない。たとえばあなたはフランス映画に興味があって、あるニュースグループの投稿を読むのが好きかもしれないが、このニュースグループのメンバーは、実践を生み出しているわけではない。領域をケアするということは、単に関心を持つということにとどまらない。その過程で共通の実践が必然的に生まれ、それがメンバーの行動や能力に直接影響を与えるのだ。しかしここでも、共通の実践があるだけでは実践コミュニティとは言えない。たとえば専門職協会は、実践を生み出すようなメンバー同士の結びつきを促す、専門分野に特化したサブグループを持つ場合でも、実践コミュニティとしてというよりは、むしろ陳情団体や広告塔として機能することが多い。

P84

自然発生的なコミュニティの多くが、友人同士のネットワーク以上の存在に発展しないのは、十分な数の参加者を引きつけることができないからだ。意図的に作られたコミュニティの多くが、発足後間もなくバラバラになってしまうのは、コミュニティを維持できるだけの活力がないからだ。コミュニティはチームを始めとする他の構造と違って、活力のもととなる相互交流を自ら誘発しなければならない。

P92

ただの仲良し集団とか、趣味の集まりが、必ずしも実践コミュニティになるわけではないようです。いかに集団を実践に落とし込んでいくか、集まった人たちで何をやるか、が大事なんだと思います。

活気を引き起こすための設計は、構造や体系や役割を設計することに重点を置く、これまでの組織設計とは異なる。これまでの組織設計は、比較的固定的な組織目標を達成し、かつ組織の他の構成単位と適合することに焦点が当てられてきた。

P93

一.進化を前提とした設計を行う
二.内部と外部それぞれの視点を取り入れる
三.さまざまなレベルの参加を奨励する
四.公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
五.価値に焦点を当てる
六.親近感と刺激とを組み合わせる
七.コミュニティのリズムを生み出す

P95

こうしたポイントを抑えることが、実践コミュニティには重要らしいのですが、どの項目も、読めば読むほど、確かに、と思わせるものばかりです。いまのオンラインサロンがうまくいっている理由がここに凝縮しているなぁと感じました。

三.さまざまなレベルの参加を奨励する

コミュニティの大部分は「周辺メンバー」で、めったに参加しない。彼らは傍観者に徹し、コア、アクティブ・メンバーたちの交流を見守っている。自分の意見はコミュニティの役に立たない、または何の根拠もないと考えて周辺にとどまる者もいれば、積極的に貢献するための時間がない者もいる。一般的なミーティングやチームでは、このような中途半端な関与は奨励されていない。だがこうした周辺的な活動が、実践コミュニティでは重要な特質となっているのである。

P100

どのレベルの参加者もフルメンバー(正会員)のような気持ちになれるように、コミュニティの活動を設計することだ。成功するコミュニティは参加を強制するのではなく、傍観者のために「ベンチを作る」ことをしている。たとえばコミュニティ・ウェブサイトの非公開の会議室や、コミュニティのイベントや、一対一の会話を通じてセミ・プライベートな交流を図る機会を設けるなどして、周辺メンバーをつなぎとめておく。またアクティブ・メンバーには、ある程度の指導的役割を担わせる機会を作ってもよい。たとえば、時間的な拘束がそれほどない開発プロジェクトを指揮させるなど。成功するコミュニティは、メンバーをより積極的に参加させるために、コミュニティの中心にたき火を起こし、人々をそのぬくもりに引き寄せるのである。

P101

五.価値に焦点を当てる

コミュニティの価値は、結成当初は十分理解されないことが多い。また、コミュニティの一生の間に、しばしば価値の源泉が変わっていく。初期のコミュニティは、メンバーの当面の問題やニーズに焦点を当てることから価値を生み出すことが多い。そしてコミュニティが成長するにつれ、今度は簡単にアクセスできる系統的な知識体系を作り上げることが重要になる。コミュニティがもたらす価値をあらかじめ決めつけるのではなく、むしろさまざまなイベントや活動や人間関係を通じて潜在的な価値の発現を促し、それを収穫する新しい方法を見つけ出すようでなければならない。

P104

実際、価値をもたらすコミュニティを設計するために大切なことは、メンバーに価値をはっきりと言葉に表すよう絶えず働きかけることである。コミュニティが効果を発揮するまでには通常時間がかかるため、当初はこのようなディスカッションの目的は、価値に関するデータを収集することよりは、関心を呼び起こすことに置くべきである。

P105

六.親近感と刺激とを組み合わせる

活気にあふれたコミュニティは、おなじみのイベントと刺激的なイベントを組み合わせて、人脈を広げるために必要な人間関係を築き、また十分な刺激を生み出してメンバーの関心を引きつけている。定期的に行われる活動は、関係を構築するための交流を持続的にし、刺激的なイベントは、一緒に冒険しているという感覚をメンバーに与えるのだ。

P107

ちょっと今回は引用ばかりになってしまいましたが、もう、言いたいこと全部書いてあったんで、何も補足することがない感じでした。これはすごい本です。

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