見出し画像

業界インタビュー7 電気・電子回路設計の仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第7弾。今回は電気・電子回路設計です。バリバリの理系ですね。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!

どんなお仕事なの?

今回は、特にパワーコンディショナーという、ソーラーパネルで発電した電気の電圧を調整して家庭内に供給したり、発電所に売ったりするための装置を開発している方でした。

画像1

ソーラーパネルで作られる電気は、だいたい260~400Vくらいの電圧だそうです。太陽の強さによって出力がバラついてしまうので、これを安定して家庭用の100V電源として使えるように電流・電圧を調整してくれるのがパワーコンディショナーです。

パワーコンディショナー

こんな感じにいろんな部品を配置するのが回路設計です。この中にあるスイッチング電源という機構が、電流や電圧を整えてくれるそうです。スイッチング電源は不安定な入力電圧をON/OFFすることで平均化・安定化させることができます。

スイッチング電源

ただ、単に電源をON/OFFするだけだとノイズが出て、安定した100Vの中に一瞬だけ300Vが混ざったりしてしまう。そういうノイズがもし電子機器の中に入ると故障の原因となってしまうので、そうしたノイズを除去するための部品を配置したりする必要がある。それが回路設計だ。

たとえば先ほどのパワーコンディショナーの写真で、上の方に大きな黒い丸が並んでいる場所がある。これは電解コンデンサというもので、一時的に電気を蓄えておくことができる部品だ。電圧を平均化するためには重要な部品だ。ただ、大きな電気を蓄えていると磁場が発生したりして、周辺の回路に影響を与える。だから、影響をうけやすい小さな部品はちょっと隔離して、間にバリケードを設置したりする必要がある。

何が進化しているの?

こういう回路基板は昔からあるような気がしますが、どのような技術的進歩があるのでしょうか。たとえばICチップなどの部品がどんどん高密度実装されるようになって、昔は抵抗とコイルとコンデンサを組み合わせて20個の部品で実装していた機能が、1個の部品で代替できるようになったりするそうです。

でも、その1個で以前と同等の安定性を担保できるのか、実はノイズを発生させやすいとか熱に弱いとか、いろいろ確認する必要があります。そういう信頼性試験がかなり重要だそうです。

他にも、電圧の変換効率が高い回路方式が発見されたりすると、それを導入できないか考える必要があります。先ほど紹介したスイッチング電源というのも新しい技術で、昔はもっと効率の悪いリニア電源というのもを使っていたとか。古き良き時代のファミリーコンピュータなどに使われていたACアダプタは大きくて重たくてすぐ熱くなる印象がありましたが、今のNintendo SwitchのACアダプタはすごく軽くコンパクトになっています。こういう進歩も回路設計の為せるわざなんですね。

一番大変なことは何か?

回路設計で大変なのは、決められたサイズの基板の中にすべての機能を収めること。大きな電流が流れる部分は配線も太くしておかないと熱くなってしまうとか、なるべく安い部品で済ませたいとか、いろんな制約がある中で安全でかつ製造しやすい回路をどうやって組むか。それはパズルを解くような難しさがあり、またとても楽しいところでもあるようです。

まるで街を設計しているようだ、と言っていました。電気の気持ちになって、どこに施設があってどのような道路が通っていれば暮らしやすいかを考えるのだそうです。

街づくりもゼロから自分で組み立てるわけではなく、先人たちが残してくれた回路図を切り貼りしながら作るそうです。でも、新しい技術を導入する部分は自分たちで一から考えないといけないので、何度も試行錯誤しながらボロボロの試作回路を作るそうです。

改善したい課題は何か?

技術者たちは、みんな技術力は高いけどコミュニケーションが下手。報連相がうまくない。雑談が全然ないので、情報交換不足に由来するミスが発生するし、なかなかミスに気付けない。

部品1個違う、パラメータ1つ違うだけでも致命的な故障になりうる。指示したはずなのに、きちんと相手が動いてくれなかった。よく聞いてみると、指示は伝わっていたけど話の前提で取り違えていて、結局全然違うことをしてしまった、といったこともある。生産の最終工程で製品検査はしているけど、それをすり抜けてしまうこともある。それでお客様からクレームが入ってしまう。

コミュニケーションが少ないので、みんな自分の狭い範囲の仕事しか把握していない。技術伝承も不十分で、回路設計のコツとかツボみたいなのも、本を読んでも分からないことをきちんと伝えていかないといけないのに、なかなか進んでいない。仕事が忙しくて、みんな不機嫌そうで、そういったコミュニケーションがしづらい環境にも問題を感じる、とのこと。

幸い営業さんとは仲が良くて、この案件は利益出ますかね、とか気軽に相談してくれる間柄らしいので、変な案件つかんできて大変な目に合う、というのは少ないらしい。やはりコミュニケーションは重要ですね。

今回は、回路設計について私が理解するのに時間がかかってしまったので、おまけパートはおやすみになります。ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?