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「駅そば」を1万杯以上食べた男 「好きだから、つゆの最後の一滴まで残さない」

日本各地の駅構内やその周辺にある立ち食いそばの店「駅そば」。電車待ちのちょっとした時間に利用するという人も多いかもしれません。フリーライターの鈴木弘毅さん(44)は、そんな駅そばのプロです。これまでに約2900軒の店を訪問し、1万杯以上食べたといいます。その成果として、『全国駅そば名店100選』(洋泉社)などの「駅そば本」を何冊も書いています。なぜ、そこまでこだわりがあるのか。鈴木さんに駅そばの魅力について聞きました。(篠原諄也

※この記事は2018年6月6日、ひとりを楽しむメディア「DANRO」で公開されました。

年間500杯、食べても飽きない

そもそも「駅そば」の定義とは何なのでしょうか? 鈴木さんは「簡単にいえば、駅構内または駅から徒歩圏内(概ね5分以内)に存在している、そばを主力メニューとしているお店。安さと早さも重要なポイント」と説明します。

鈴木さんが食べるのは、年間に500杯程度。それでもまったく飽きることはないそうです。「本当に駅そばが好きなんですよ。もし仕事と割り切っていたら、1日20食でも食べられるかもしれませんね。味だけみて残せばいいですから。でも、僕は好きだから、つゆの最後の一滴まで残さないんですよ」

フィリピンの「富士そば」で食べる鈴木弘毅さん(鈴木さん提供)

駅そばの魅力は「早さ、安さ、そして個性」という鈴木さん。日本全国をまわると、それぞれの土地の地域性が出ていて面白いそうです。「たとえば、九州には『丸天』というトッピングがあります。最初『これはなんだ?』と思いました。魚の練り物を揚げたものですが、九州では定番なんです」

最近の駅そばの傾向はあるのでしょうか。長年ウォッチを続けている鈴木さんに聞いてみると「2つある」といいます。

「まず、お店がどんどん本格化していますね。昔は工場で茹でて、店では熱湯をくぐらせるだけの『茹でそば』がメインだったんですが、いまは店内で茹でる『生そば』が増えています」

もうひとつの傾向は?

「女性客が増えていますね。お店側も女性が入りやすいように工夫している。店内の雰囲気が明るくなり、綺麗になった。立ち食いではなく、椅子を増やす店も多いですね」

静岡県三島駅「桃中軒」の山菜そば。「甘めのつゆが食欲をそそる」(鈴木さん提供)
埼玉県所沢駅「狭山そば」のかき揚げ天ぷらそば。「熱狂的なファンが多い、沿線住民のソウルフード」(鈴木さん提供)

姫路の「駅そば」に衝撃を受けた

鈴木さんが駅そばに決定的にハマったのは、今から23年前。大学3年生のとき、阪神大震災のボランティアに参加しようと思って関西に行きました。そこで出会った駅そばが衝撃だったといいます。

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