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【のーがたのーと】直方商店街だからこそ続けられた青果店/「八百一青果」香川末潢さん

明治町商店街の一角には色とりどりの野菜や果物、綺麗な花が整然と並べられ、道ゆく人の目を惹きます。

店主の香川末潢さんが運営する、八百一青果です。

新鮮な野菜が店先に並ぶ八百一青果

お店(やおいち青果)の名前は香川さんが市場で使用する競り帽の「やまいち」に由来しているのだそう。今回のインタビューでは、店主の香川さんのことについて詳しくお聞きしました。


青果店一筋、香川さんのこれまで

香川さんは古賀市出身で、もともと博多の会社に勤務されていました。

熱心に説明してくださった香川さん

ー 会社員をなさってて、そこから八百屋さんに? ー

「俺の先輩で、たまたま知り合った人がこういう業界をしよったらしいんよ。で、一緒にせんね〜っていう話から始まってから、それからずっとたい。それがきっかけたいね。」

ー 最初から香川さんお一人で全部やってたんですか? ー

「最初は箱崎(福岡市東区)で先輩とやっとったね。次の店舗の古賀から独立したね。古賀行って香椎行って、それから六本松。最終的にはここ、5店舗目となる商店街で10年間やっとるね。」

ー へ〜!さまざまな場所を転々とされていたんですね!直方商店街に出店したのも比較的最近なのも意外でした。どうして場所を移っていったのでしょうか? ー

「2箇所は立ち退きがあったんよ。道路拡張によってね。それから又貸しもあったね。それはもう出ざるを得なかったね。仕方がない。」

ー それは大変でしたね...。それでも最終的に直方商店街に導かれるようにして、香川さんがお店を構えるようになったということは何かご縁があったのかもしれませんね! ー


大変な青果店の商売

ー 青果店さんって普段のお仕事でも大変なことは多いと思います。特に仕入れは朝早いイメージがありますが、どちらまで行かれてるんですか? ー

「野菜は浮羽から仕入れているんよね。浮羽の野菜。1時間40分かかるとたい。朝3時半とか4時とかから毎日たい。」

ー 浮羽まで毎日ですか!?朝も早いですね...。 ー

「そうよ。ほんと商売って大変よ。浮き沈みあるしね。1日1日も違うしね。あんたちょっと一回20キロ(のダンボール)抱えてみてよ。」

ー(学生が苦しそうに持ち上げる)重いです...。普段の苦労が伺えます。ー

野菜がぎっしり詰まったダンボール

「それを毎日やけんね。それと、直近ではコロナの時もお客さんはやっぱ減ったし、厳しかったよ。 品物は揃えんといかんしね。品物を揃えたらそれだけロスが出るけど、それでも店の前に商品を広げて努力したんよ。やっぱお客さんの笑顔とか見てるとね、また明日も頑張ろうっちゅう気持ちが出て、それでもうずーっとね。ずるずるでやってきたんよね。」

苦労することも多い青果店の仕事ですが、その仕事を続けられる原動力には素敵な想いがありました。


直方商店街との出会い

「それでも、六本松で14〜5年やってた時にちょっと体壊したんよ。」と語る香川さん。それから青果店を少しばかり休業されたそうです。それから直方商店街に出店する決断をした経緯について伺ってみました。

ー 先ほどちょっとお店をやめてたっておっしゃってましたけど、そんなことがあったんですね。そこからどうして、今までやってきた福岡の方から遠い直方商店街に出店することになったのでしょうか? ー

「兄弟が飯塚の方に引っ越してね、その流れで商店街の方に行ったら五日市やったんよ。偶然にね。うわー何ここ!って。わんさか人がおって。普段は人はいないよって言われた時に嘘やろ!って。次の日来てみたら案の定やった。うわー遠くまで見えるばい!って笑。それでも歴史ある商店街やし、やろうかな〜って。せっかくなら地域に馴染んでやれんかな〜って。それで始めたんよ。」

ー そんな商店街との出会いがあったんですね。商店街の人と人との距離の近さは魅力的ですよね。 ー

「うん。いいよー、本当ね。やっと、今はみんな受け入れてくれているんよね。最初は第三者やけど、今はもうお客様も親戚みたいになってね。それが私にとって一番のいい話で、仕事も自然体でやってるんよね。」

ー 香川さんを見ていて、とても楽しく仕事をされてる印象を受けました! ー

「それも私個人よりやっぱお客さんの方がね、思ってくれてるのが嬉しいよね。それが何よりで、ここに来てお話するのが楽しみ、みたいなご年配の方も多いんよ。みんな誰かと話をするために来よるもんね。お客さん同士で久しぶりねとかって話してます。まあ、こういう繋がりっていうのも大事よね。」

地元の方と談笑しながら仕事されています

ー 人と人の繋がりを生んでる素敵な場所ですね。 ー

「こういう店っていうのはね、絶対に商店街に必要だと俺は思うよ。ただ漠然と買い物するんやったらね、スーパーでいいもんね。それに加えて、うちらの店はほぼ外と変わらないから、夏は暑いし冬は寒いしね。普通の店主やったら音を上げると思うよ。それでもここは非常に皆さんいい人ばっかりだから、ここで青果店を続けることができてよかったです。そうじゃなかったら、もう別に仕事してたかもわからんね。」

ー 直方商店街だからこそ、場所と人の魅力があって、香川さんは青果店を続ける決断ができたわけですね! ー

商店街を寂れさせてはいけない

商店街の魅力に惹かれた香川さんでしたが、そんな香川さんの現在の商店街に対する思いを伺ってみました。

ー 香川さんは商店街の現状についてどう思われてますか? ー

 「やっぱ商店街やけんね、大事にせんといかんとよ。私はよそから来たんだけどさ、寂れたらいかんと思っとるよ。例えば八百屋でもね、2軒あろうが3軒あろうが、集まれば集まるほどいいとよ。共存共栄してね。店舗がたくさんあって人間がどんどんここら辺に来れば、商店街全体を賄いきれる力があるよね。今の商店街みたいに空き家や空き店舗があるとさ、人は来ないやん。いかに店舗を安く貸し出してさ、空き店舗が少なくなることが活性化になるっちゃないかなと思うけどね。」

ー 最近五日市の体制が新しくなって、商店街も変わっていくのではないでしょうか? ー

「盛り上げようと思って、俺らも一生懸命やりよるっちゃけど、うまいこといかんよねー。五日市で来た人がさ、また来るねーって、言うったいね。せやけど、普段の商店街に来てほしい。そりゃ、五日市だけでも来てくれりゃいいけどさ。五日市とは別の日に来てほしいね。」

ー 五日市だけでなく、普段から賑わっていることが大切ですよね。最後に、香川さんが考える理想の商店街ってどのような商店街なんでしょうか? ー

「この前、久しぶりに来た人がね、なつかしいねーってきたばってん。でも、なんもないねーっていいよったっちゃんね。それじゃあいかんっちゃんね。地域の人が戻ってきた時に、なつかしいねー、こんだけ賑わっとんやねーって商店街に対して感じてもらうのが理想よね。」

今回のインタビューでは、香川さんのことを深掘りしていく中で、溢れ出る商店街への想いが強く印象に残りました。最初は直方商店街にとって第三者であった香川さんの、地域に馴染んで商売をしようとする姿勢が地元の人を惹きつけ、10年の時を経て徐々に愛される素敵なお店になりました。

温かい香川さんの人柄に包まれた八百一青果、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。


店舗情報

『八百一青果』
営業  :9:30~15:30
住所  :〒822-0027 福岡県直方市古町6−1
定休日 :日曜日
電話  :090-3665-1816


文・編集:日隈泰雅
取材  :日隈泰雅、⼭崎⼤智、椛島匡、辻尚大
撮影  :椛島匡

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