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【のーがたのーと】100年の伝統を受け継いで時代を纏う直方名物/「まとや」


直方名物でありながら、地元の方もお祝い事の際に食べるという成金饅頭。
 
成金饅頭の誕生は、ある青年が豆の売買に失敗し、その豆であんを練り、饅頭を作ったことがきっかけです。そして、当時炭鉱の町として知られた直方で炭鉱労働者によく好まれたことから広まっていったそう。
成金饅頭という名前も、炭鉱で財を成した「成金さん」にちなんで付けられた名前という話があります。

どら焼きのように白あんをもちもちした生地ではさみ、優しい甘さでいくつ食べても飽きが来ない。そんな内外に愛される銘菓は長い間、人の思い出に根付いています。
そこで、商店街の中でひと際目を引く店構えをしている成金饅頭の「まとや」さんにインタビューに伺いました。


「まとや」とは


一風変わった外装をするお菓子屋「まとや」

「多くの人とシェアしやすいように小さめに焼き上げているので、観光客がお土産として買って帰ることが多いですね。地元の方も40代50代の主婦層を中心に来店する方も多いです。地元の方も美味しいと言ってリピートされる方もいらっしゃいます。」

直方市内にはいくつか成金饅頭を扱う店舗がありますが、ここ「まとや」の特徴はあえて“小さくする”ことなのだそう。

まとやは「菓舗 四宮」という100年以上続いた老舗菓子店を引き継ぐ形でオープンしました。オーナーの浅野雅晴さんの本職は実は建築士とデザイナー。福岡市を拠点に建築設計事業を手がける浅野藝術株式会社を営んでおり、「衣・食・住」すべてを手掛けたいと思いからこのお店の継承を決めたそうです。
かつては、菓子屋だと分かりにくい外観だったそうですが、一見するだけで品の良いお菓子屋だと分かり入りやすい外装へ改築。「菓舗四宮」から受け継いだ印象も大切に「温故知新」をテーマに設計デザインしたとのこと。

オーナーの成金饅頭に対するこだわり


自信を持てる成金饅頭に

「まとや」の成金饅頭は、小ぶりな見た目に反し、ずっしりとあんが入った成金饅頭は、さっぱりとした甘さで、何個でもぺろりと食べることが出来る美味しさです。

皮は薄めでしっとりしたしたざわり、あんはこしあんで、その優しい甘さはなつかしさを感じる味です。

そんな美味しい成金饅頭は、「まとや」誕生の際に、もともと菓舗四宮で販売されていた饅頭にさらに改良を加えられ生み出されました。

当初の成金饅頭を食べた浅野さんは、美味しいけれど「よくある地方の饅頭」という印象を受け、伝統を大切にしながら、味も含め変えるところは変えなければ、次世代に繋がらないという思いがあったそうです。

自分たちが自信を持って勧められる成金饅頭にするために、生地を機械焼きから手焼きに、原材料を国産や地元産にしたそう。

しかし、ここで新たな課題にも直面。先ほど、まとやの成金饅頭の特徴は小ぶりであると記しましたが、販売当初は「これだと成金饅頭じゃない」という声もあったそうです。ただ、段々と手軽で食べやすいサイズに魅了され、自宅用としても買う人が増えていったそう。

また、ほかにも若い人の口に合わせるため、和洋菓子のコンセプトでチーズどら焼きを開発。さらに福岡市中央区平尾にも別ブランドとして成金饅頭の皮を使用したどらやきを展開。このどら焼きは、通常のどら焼きよりぱさつきがなく、お腹が膨れないようになっています。若い世代の人にも食べてもらうため、こういった新たな商品の展開にも挑戦し、成金饅頭という主力ブランドは守りながら直方のお菓子屋としてのブランド力向上を目指しているのだそう。

歴史を「まとう」・まとや誕生の歴史


四宮の伝統を継承していく想い

まとやの前身、「菓舗四宮」は大正3年に成金饅頭の製造・販売を開始し、最盛期には数十店舗の展開をしていましたが、売り上げの減少から存続が難しいと感じた先代オーナーが後継者を募集。ここで名乗りを上げたのが、浅野さんだったのです。当時、食を手掛けるタイミングを模索していた浅野さんに成金饅頭事業の継承の話が伝わり、この文化を後世に伝えていきたいと手を挙げたそう。菓子業界ではなかったものの、浅野さんの成金饅頭を次世代に残していきたいという想いが伝わり継承することが決定。

しかし、ここで四宮の成金饅頭の商標が使えないことが発覚。浅野さんは新たな店名を、これまでの成金饅頭の歴史も、これからの時代も纏い、四宮の史実も繋げていきたいという想いから、「まとや」と命名しました。

これからの直方、商店街に求める姿

これからの直方の商店街がどういった方向に進んでいけばいいかについて、
「直方市に出店する店舗の一つとして商店街に人通りが増えることを望んでいます。新たな商品を作ったり、新しいことをしたりしたいという商店街の方々もいるから、そういった思いを持つ方々との交流は大事にしたい。」

そう語る「まとや」さんには、時代を纏い、伝統を守りながら新しいことに挑戦し、次の世代に残していきたいという成金饅頭への強い想いがありました。


店舗情報


「まとや」
住所:〒822-0027 福岡県直方市古町9-28(ふるまち商店街)
TEL:0949-25-0001
営業時間:10:00-16:00(無休)
定休日:なし
URL:まとやの成金饅頭 
SNS:インスタまとやの成金饅頭(@narikinmanju) • Instagram写真と動画


文・編集:辻慎太郎、前田若葉
取材  :黒岩建杜、江村友里、前田若葉 
撮影  :前田若葉

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