隧道
いつからこの長い道のりを歩いて来たのか
記憶を辿ってみる。
出発点は何処だったか、
きっかけは何だったか、
遠い記憶の向こう側に
チカチカした赤黒い始まりが蠢いているような
微かにそんなものを背にして
途方もなく歩いていたような、
出口が見える訳でもなく
近づく訳でもなく
ただ終わりのない空洞が続く
ずっと同じ場所にいるようだ。
そんな途方もない道中だった気がした
それが当たり前になりかけていた頃、
見えないはずの向こう側から
心地良い風が吹いた。
*
盲目の私に春風が出口を教えてくれたようだった
孤独な道のりでも
風を送ってくれる誰がいる
もう少し、あと少し
*
2021.1.28.
DANPEN
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