デンマークはフレデリック国王もビジネスパーソン?

1月14日の突然のマルグレーテ女王からの交代劇で、フレデリック(フレゼリク)10世王が誕生したが、早速、1月31日、王としてポーランドを訪問するという外交デビューが飾られた。通常は新国王の初の外国訪問は、王妃を伴っての近隣国への訪問とされているが、今回は2週間での高速の交代であったため、発表前に決まっていた王太子時代の予定をこなすということで、一単独でのポーランド訪問となった。
訪問の一つの大きな目的としてはポーランドとデンマークの軍事協力関係の強化であり、ラース・ルケ・ラスムセン外相、トロエルス・ルン・ポウルセン国防相、ラース・アーガード気候エネルギー・供給大臣、ヤコブ・イェンセン食料・農業水産大臣が同行した。

そして、もう一つの目的がビジネス関係の強化である。
今回の訪問で、エネルギーや農業部門でのデンマーク企業38社に利益をもたらすことが期待されているとDRでは報じられた。フレデリックは、環境に優しく持続可能でエネルギー効率の高いソリューションの提供に熱心に取り組んでおり、そうしたデンマーク企業の後押しをしている。
今回も、洋上風力タービンの設置を行うヴェスタス社の2026年完成予定の洋上工場を訪問したり、風力エネルギーに関するカンファレンスに出席するなど、2泊3日という短い訪問の中で精力的に活動した。
デンマークは市場が小さいため(人口が600万人に満たない)、企業は海外への事業展開や営業活動が必須であり、その売上げの8-9割が海外でのものと言われている。

フレデリック国王は王太子時代にしばしば来日しているが、ビジネスの視点が常に入っている。
1997年 デンマーク産業貿易振興のため、主要企業団を引率し来日。
2011年6月に東日本大震災のお見舞いと支援のために来日した際も、外務省の報告に「再生可能エネルギーと復興に関するセミナーに出席し,企業を視察」とある。
2015年にも来日しているが、このときはグリーンランド・プロモーションをテーマに来日し、グリーンランドの文化や海産物等の物産、資源や観光等を日本に紹介し、グリーンランド自治政府主催の行事が開催され、食料・農業・水産大臣と共にグリーンランド自治政府首相キム・キールセン氏が同行していた。
2017年にはデンマーク―日本外交関係樹立150周年を記念して、秋にフレデリック皇太子夫妻が来日したが、このときも55社のビジネス代表団として泰道していた。

ビジネス代表団を伴っての海外訪問は、かなり大掛かりで大集団となる。そうしたプロモーションの費用はどうなっているかというと、今回のポーランド訪問時、グルンドフォス、ダンフォス、ノボ ノルディスク、オルステッドなどで構成されていたデンマーク企業は、外務省からの助成金も受取っているものの、旅行費用の少なくとも半分を自ら負担している。さらに、当然ながらビジネスとしてポーランド企業との合意や契約について保証されているわけではない。
だとしても、王室と企業が一体となって、デンマークの製品やサービスを積極的に営業に行く姿は、なかなかの意気込みである。

デンマークの首都コペンハーゲンの意味は「商人の港」だが、小国であるデンマークがどんどん海外へと進出するのは、デンマーク産業界を守り、高い給与水準と雇用の継続を守るために、必須である。
そして、王室メンバーももちろんデンマークを構成する一員として、外交と共にデンマーク産業の営業が求められているのである。

現在のデンマーク王室の支持は8割と人気が高いが、気さくな人柄のフレデリック王自らがこうしたビジネスパーソンとしての役割を積極的に果たすがゆえ、デンマークに有意義だと、合理的なデンマーク人にもその存在が受入れらているのだろう。平等な社会を謳うデンマークで王室が馴染むのは、こういう観点からだと考えると、なかなか面白いなと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?