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045 低金利

 金利については、勘違いが甚だしい。失われた30年の間に、日本人はすっかり低金利に騙されてしまった。低金利と言ってもゼロとかマイナスだったので、全く以って言語道断と言うほかない。金利が上がる不安を駆り立てられてずるずる10年間を無駄にした。安倍マジックである。結果、国富は一部の大企業や資産家に蓄えられて、また海外の投資家に持ち出されてしまった。そのツケは多くの国民が負うことになったのである。
 弊害その1は、限界企業の温存である。自転車操業でもやっていけるので、新たな投資を考える必要はない。日本低迷の元凶である。以前記したことがあるが、金利は潜在成長率を反映している。政府や自治体も目先のことしか考えない習慣ができてしまった。借金を重ねても痛痒を感じないだけでなく、借金を正当化する理屈が跋扈している。
 一方、庶民にとってはどういうことだったのか。老後資金について考えると、預貯金の金利が5%だと、1000万円あれば毎年50万円の金利を得て、しかも元金は減らない。一方金利ゼロだと、毎年50万円使うと20年で老後資金は枯渇する。だから、みんな一所懸命蓄えようとする。弊害その2である。
 では、住宅ローンはどうであろうか。表面上は金利が安いほど良い物件を手にできるような気がする。そこに大きな落とし穴がある。住宅金利が7~8%くらいだったころに、サラリーマンが買えた住宅は3000万円で、ローンの返済総額は6~7000万円であった。住宅金利が1%以下になって買える住宅は5~6000万円と高騰したが、ローンの返済総額は6~7000万円で変わらない。どういうことか。収入がその間増えないのであれば、収入に対する返済額は変わらないということである。いったい誰が儲けたのか。それははっきりしている。不動産屋と土地持ちである。これが弊害その3。
 常に適正な金利というものが存在していて、それはマーケットが決めるのが資本主義自由経済である。日本のように、中央銀行が独立していない国は、資本主義であっても歪んだ計画経済である。金利の役割はマネーの移転である。これまで日本の取ってきた政策は、マネーを多くの貧者から吸い上げて、少数の富者へ移転してきた。最大の弊害である。確実に格差は拡大した。失われた30年の結末である。被害者ははっきりしているのに、声は上がってこない。

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